表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1・即、魔王現る。

いろいろと考えて書きましたが・・なにぶん初心者なもので、色々変な部分もありますが、頑張りますのでよろしくお願いします。

「ですから加藤さん、あなたは死んだのです。」

「は?」


真っ暗な空間に目の前にいる女と俺二人だけ。これだけ聞くと少しやましい気持ちになるか?いいやならん。何故なら絶賛今俺は混乱中だからだ。


ものの数分前、俺は一人晩飯を買いにコンビニへと向かった。俺の両親は早いうちに交通事故で亡くなり、俺はそのままじいちゃんとばあちゃんに引き取られた。しかし、そんな二人も俺が高校生になったと同時に亡くなってしまい、今はなんとかしがない団地で一人暮らしだ。


毎日の学校も別段楽しいこともなく、このまま俺は社畜になって死ぬまで働き続けるのだろうと思っていたのだが、そんな帰り道、不運にも俺は信号を無視した車に跳ねられてしまった。


そんで気がついたらここにいて、目の前にはこの女一人だけってわけだ。


「まぁ、死んだのには納得いったんだが・・ここはどこだ?」

「そうですね・・簡単に言うと、冥界と現界の境目のようなものです。いわゆる生と死の狭間ってヤツですかね。」

「ほーん。」

「なんですかその反応、失礼ですね。」

「いや、なんだか実感が湧かなくてな。それにどうにも居心地はいいんだが、なにかこう、常に誰かに見られてる感じがすると言うか・・」

「・・?そうでしょうか?」


どうやら視線を感じているのは俺だけらしい。


「いや、いいんだ。それで、俺はこれからどうなるんだ?」

「そうですね・・まぁ、普通であれば元いた世界に再び転生するのですが・・どうにも貴方はそれがうまくいかないようでして。」

「はぁ、そりゃまたどうして?」

「詳しいことはわからないんですよ・・なんででしょうね。」


こいつ、かなり適当な奴だな。それぐらい調べておいてくれよ。


「で、あなたをどうするかですが・・申し訳ないのですが、元いた世界とは別の世界に転生して欲しいんですよ。ていうかお願いします。」

「いや、それは別にいいんだが・・別の世界なんてものがあるのか。」

「はい。あなたの世界でいうRPGのような世界ですね。魔法が飛び交い剣と剣がぶつかり合う、そんな世界です。」

「おお!それは面白そうだな!」


実は俺、かなりのゲームオタクである。

メジャーなRPGは勿論、かなりマニアックなRPGだってほとんど網羅済みだ。いかんせんFPSなんかは全くできないが。

まぁともかく、俺はそういう世界が大好きである。特に王子や勇者が捕われし姫を助けるとか世界を救うなんていう王道なんか大好物だ。


「それで、今回は特例中の特例として、せめて別の世界に転生することになった貴方になにか特別な力を与えることにしました。」

「・・ん?」


特別な能力?それってまさか・・


「あなたには全ステータス+9999と伝説の装備一式と不死身の能力を授け」

「いらん。」

「・・え?」

「ん?聞こえなかったのか?いらんって言ったんだ。」

「ど、どうしてですか!?こんな能力を得られるなんて滅多にないんですよ!?」

「滅多にどころか最近めっちゃ多いだろ。無双だの無敵だの最強だの。俺はそういうの嫌なんだよ。」


いわゆる、異世界転生系である。

俺の元いた世界、もとい地球では、若者の間でとても流行っていたものがある。それが、異世界転生系の小説、または漫画である。


俺も最初は嬉しかったさ。俺が大好きなRPGの世界の小説がこんなにいっぱいあるってな。しかし蓋を開けてみると・・主人公が不死身だの、無敵だの、無双だの。最初のうちは俺も我慢して読んでいたが、湧き水のように溢れてくるその系統に俺はとても落胆し、一種のトラウマになっていた。


俺が大好きなのは王道、しかしみんなが好きなのは無双。みんなの話についていけず、俺はクラスから孤立してしまった。だから俺はそんな小説が嫌いだった。


別に作者が嫌いなわけじゃない。作品も嫌いなわけじゃない。ただ、俺の好きなものとは真逆のそれに、俺はいつからか嫌悪感を示すようになっていった。


「なら・・せめてS級魔法だけでも・・」

「いらん。」

「では貴族階級を・・」

「いらん。」

「一生遊んで暮らせるだけのお金を・・」

「いらん。」

「・・・」

「・・はぁ、なら、欲しいものがある。」

「!?なんでしょう!なんでも大丈夫ですよ!」


そして俺は木の剣と鍋の蓋を持ち、異世界へと降り立った。え?あの女になにをもらったかって?これだよこれ。木の剣と鍋の蓋。流石に素手では戦えないからな。


「この二つをくれって言った時のあいつの顔、妙に厳つい顔してたな・・そんなに俺に無双させたかったのか。変な奴だな。」


ガサガサ


「!?」


俺は突然動いた茂みに向かって剣を構える。RPGはかなりやりこんだからな。こういう動作はバッチリだ。


《キュイー!》

「これは・・スライムか?」


なんと茂みからスライムらしき生物が飛び出してきた。見た目は某クエストと少し似ているが、目と口が無く、頭の尖りもない、まん丸である。また、どこから鳴き声を発したかは不明である。


「そいっ。」

《キュー!》


俺がそいつに剣を振り下ろすと、呆気なくスライムは黒い灰になり消えていった。


《レベルが上がりました。》


「レベル・・?《ステータス》でいいのか?」


俺が言葉を口にすると、目の前に自分のレベルが表示された。どうやらよくある攻撃力などは見えないらしい。見えるのはスキルと魔法の欄と自分のレベル、そして状態異常の欄だ。今はスキルも魔法も状態異常もないからレベルしかないけどな。


「レベル2、か。なるほど、このレベル表示の横のゲージがマックスになると、レベルが上がるんだな。そしてこのゲージを溜めるにはモンスターを倒せばいいと。」


・・まんまRPGではないか。どうなってるんだこの世界。


「ということは、魔王でも倒せばいいのか?」

「呼んだ?」

「は?」


声がした方に剣を向けると、そこにはナイスボディな女が一人いた。しかし肌は青く、髪は赤い。魔族みたいな見た目だ。


「お前誰だ?」

「誰だとは酷いなぁ、私と君の仲じゃないか。それに、」


突然女が俺に向かって走り出した。咄嗟に剣を振り下ろすが当たらない。華麗にそいつは剣を避けたと思うと俺に急接近した。


「くっ・・」


俺は来るべき衝撃と痛みに耐えるため、目を閉じ歯を食いしばる。しかし、次に俺の感じた感触は、


フニュ


俺の胸に当たる、柔らかい感触だった。


「会いたかったよカトー!」

「・・はぁ!?やめろ!お前離せって!」

「嫌だー!もう離れないもん!」


・・ならば、


「ひゃ!?く、くすぐったいよカトー!あはははははは!!」

「ならいますぐ離せ!この変態女が!」

「へ、変態女!?酷いじゃないか!」

「あったばかりのやつに抱きつく女なんて大体変態だろ!」


柔らかい感触・・正直たまらん・・


「・・その様子だと、本当に覚えてないんだね・・」

「・・ん?」


先程までの様子と打って変わって、いきなり元気をなくした女。それと同時に俺の体からも離れていく。おい、もうちょっとそのままでもいいぞ、俺が許そう。


「・・お前誰だよ。」

「私はリオン・シルファ。《元》魔王だよ。」

「・・魔王?」


魔王、ねぇ。


「・・冗談はいいから。」

「ちょっと!?私本当に元魔王なんですけど!!」

「嘘つけ。さっきのお前の行動で丸分かりだわ。」

「うっ・・否定できない・・で、でも!本当なの!さっきはつい嬉しくて!」

「それに、なんで俺の名前知ってんだ?」

「え!じゃあ今回も同じ名前なんだね!うれしいなー!」


こいつ頭お花畑か?同じ言語のはずなのに会話ができん。

それからしばらく、嫌々ながらそいつの話を聞いた。嫌々だぞ、嫌々。


「それで・・お前は魔王だったが、今はその力のほとんどを失っており、俺は元々この世界の住人で、村人だったと。」

「そうそうそれでね!君がいきなり勇者に抜擢されてさー!私を倒しにきたんだよ!そこを私がこう!バッサリと!」


そういいながらリオンは手をバッサバッサと振っている。馬鹿か?


「だけど、君を殺したのは私じゃない。君は僕を庇って死んだんだ。」

「・・お前を庇う気にはならんが。」

「失礼しちゃうね!これでも元魔王なんだよ!」

「はいはい。それで続きは?」

「なんか馬鹿にされた気がする・・まぁいいけどさ。それで、君はいきなり現れた男から僕を守って、灰になって散って行った。そこで生まれて初めて怒りを覚えたね。なんで自分を倒しにきた奴が殺されて怒ったのかは私もよく覚えてないんだ。なんだか記憶が曖昧でさ。」

「ほーん。」

「・・君、本当に失礼だね。それで、私も戦ったわけだけど、その結果がこれってわけさ。能力をほとんど奪われて、今は少し体術が使えるだけの一般人くらいの強さになっちゃった。」


そういうと、リオンは舌を出して首を傾げる。少しだけ可愛いと思ってしまった俺を殴りたい。


「まぁそのあとなんやかんやありまして、私を守ってくれた君を探してたわけだよ。そしたら今日になってバッタリと!嬉しくてつい飛び込んじゃった!」

「ちなみにどれくらい探してたんだ?」

「んー?だいたい3年くらいかな?」

「じゃあもう少し粘れば会わなかったわけか。惜しいな。」

「なにが惜しいの!?」


少しその後の話をすると、リオンがどうしても一緒に連れて行ってくれと頼んできたので、仕方なく一緒に旅をすることにした。土下座なんかされたら連れていかんわけにもいかないだろ。


「・・?」

「どうしたの?カトー。」

「いや、少し視線を感じたっていうか・・」

「視線?なにそれ?」

「いや、なんでもない。ほら、さっさといくぞ!」

「あー!待ってよー!」


【・・あいつが、戻ってきたか。】


何か声が聞こえた気がしたが、その言葉が終わると同時に感じていた視線も消える。その視線はどこか、あの空間で感じた視線に似ているような気がした。


王道?これは王道なのか?ちなみにリオンの強さは本当に一般人より少し強いくらいです。魔法もなにも使えません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ