表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
73/175

ドットルト紀行文

評価、感想などお待ちしております!

気に入っていただけましたら、ぜひ、ブックマーク登録してくださいね!


Twitter @Imori_Saito

やあ、久しぶり。私は語り手。ノンフィクション作品「それでもレンチを回すのは」を皆の言葉のモノサシで語る役目を仰せつかっている者だ。


私は今、ドットルトの町にあるとあるカフェで、町の様子を眺めている。


ここは、ミーシャ・パスカル・フラウラが好んでいたカフェ・(スワンプ)だ。


ブラシ髭を生やしたオーナーと褐色肌の女性のウエイトレスの二人が切り盛りしている。二人とも若く、世代交代しているようだ。


ここに来た理由、もちろん「それでもレンチを回すのは」を書くにあたっての調査のため。


この地でレイーシャ・ミスターシャ、レイは全ての元凶となる<亡者の剣>を手にした。


<亡者の剣>は死者の怨念とも言える魔力を、本来ならば魔力を保有しにくい鋼に無理やり押し込めた魔法剣だ。


性能は「死者の才能を受け継ぐ」というチート性能。


これを手にした魔法戦士レイは、器用貧乏から万能へと変貌を遂げたのだ。


様々な人の運命を大きく狂わせるきっかけとなった出来事が起きたこの地を、取材しない訳にはいかない。


決して観光、遊びに来たわけではないぞ。


20年前と比べて、ドットルトの町は大きく変わった。おそらく、ミスターシャの街の次に変わった町じゃないかと思う。


以前は今にも崩れそうな木造住宅であったのが、白レンガの綺麗な建物に変わっているし、


人口も爆発的に増え、傭兵の出稼ぎは減り、レジャーで訪れる人も増えてきた。


町には娯楽が多くある。カフェや酒場があるのは勿論、道では毎日のように大道芸人が皿を回し、吟遊詩人が歌を歌う。


夜には賭博場も開き、町が静寂に包まれる事はない。


何より、緑が増えた。


理由は勿論、砂の城が消え他国との交流が活発になったからだ。


ドットルト砂漠は様々な他国と接している。この町は立地的には栄え町になるポテンシャルはあったのだろう。


「どうぞホットケーキ・沼です」


カフェのオーナーがホットケーキとコーヒーを持ってくる。


ホットケーキの隣にはボウルに入った大量のシロップがあり、かけるのではなく、漬けて食べるのだ。


これは、ミーシャが好きだったメニューだ。


早速食べてみる。


甘い。とてつもなく甘い。


舌がとろけるような甘さで、口の中がたちまちシロップに支配されていく。


次に備え付けのコーヒーを飲むと、砂漠でオアシスの水を得たような感情が味覚として広がっていく。


ブラックなコーヒー苦みがこれほどありがたく感じるとは、流石の甘さだ。


大馬鹿舌の私がこれほど甘いと感じるのだから、ショウが食べたときむせたというのは頷ける。


ミーシャはこれをおいしそうに食べていたというのか。


「久しぶりに見ました、ケーキを漬ける方を」


オーナーが私に声をかけてきた。店内は程よい具合に空いている。


―え、違うのですか?


「そういう食べ方もありますが、普通ならば適量をホットケーキにかけたり、コーヒーに入れたりしていましたので」


ーなるほど……


私がドットルト砂漠に行くときに、ミーシャが「あの店ではひたすのがマナーよ」と言っていたせいで、それが普通かと思っていたが、どうやら違うようだ。


「観光客の方ですか?」


―いえ、取材に来ました。


「取材、ですか?」


―はい。レイーシャに関する取材に


「そう、ですか」


オーナーは気難しい顔をする。


それもそうだろう。


レイーシャはこのドットルト砂漠では砂の城を打ち倒した英雄でもある一方、


破壊の限りを尽くした重罪人でもあるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ