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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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エピローグ 新たなモンダイのヨカン

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Twitter @Imori_Saito

<ミスターシャの街 とあるレストランにて>


「え、そこは押すところでしょ どうしてそのまま引き下がっちゃったのよ」


と、ミーシャがフォークを片手に言う。


ショウはレイと別れた後、ミスターシャにあるレストランで軽食を取っていた。


「良かったんだよこれで、レイはもう一人でやっていける」


「ふーん ショウが都合よく解釈してるだけじゃないの?」


「そうかもな、ハハハ」


ショウは口を開けて笑うと、コーヒーカップに口をつけた。


「ショウが助けていたレイって人が、この国の王族だったなんて驚いちゃった。ショウは知ってたの?」


「まあな」


「お父さんも知ってたみたいだし、なんか私だけ疎外感が……」


ミーシャはムスッとした表情で言う。


「仕方ないだろう。情報が情報だし。あ、レイとの関わりのことは秘密にしておいてくれよ」


「わかっているわよ」


ミーシャはパスタをフォークとスプーンを使って食べ始める。


作法はしっかりしているが、パスタをフォークに巻き付ける量は多い。


二人は食事に集中し、レストランの声が聞こえてくる。


― レイーシャ王弟殿下が、ドットルト砂漠の砂の城をやっつけたらしいぜ


― 1人でか?


― ああ、そうさ


― なるほど、だから国防軍は進路変更して南に向かったのか


― そうだな。光の戦士、レイーシャ王弟殿下は軍千に値する戦力を持つミスターシャの英雄だ


レイの武勇伝を語り継ぎ、昼から乾杯の音が聞こえる。


今のミスターシャの街では、光の戦士の軍功に活気付いていた。


(まったく、反吐がでる…)


そう思い、ショウは不機嫌そうにコーヒーの苦みを味わう。


レイをめぐる一連の事件を深く知る彼にとっては、ミスターシャの噂や喝采は耳障りでしかなかった。


「ショウのやりたかった事も、これで一段落?」


山盛りだったミーシャのパスタが、気づけば空になっている。さすがは魔力保有量の多いミーシャだ。


ショウは上を向き、腕を組んだ。


「そうだな。やりとげた、な。亡者の剣も造ったし」


「<死者の能力の伝承能力>を持つ、なんて相当まずいモノじゃないの、あれ?」


「そうだな。確かにあれを手にした途端レイは桁が変わるくらいの強化を遂げた。だけど、その力は死者の霊が与えてやりたいと思ったからこそレイに宿ったんだ。俺が使っても力は発揮されない。レイじゃなければ、大した変化は起きないシロモノなのさ、あれは」


亡者の剣には、ゴルード、シルク、ガーネットの御霊が宿っている。御霊と呼べるほどに強く濃い魔力を封印することができたのは、3人がレイのためになりたいと強く思ったからだ。


亡者の剣の設計を試みた魔装具技術の父ドーラスは、この剣に込められた魔力と使用者との深い繋がりを機構化することができず、お蔵入りにしてしまったのではないかとショウは推測していた。


「それに、あの亡者の剣はもう造れないから大丈夫だ。素材が無いのは勿論、俺とミーシャがいなければ造れないからな」


「もう二度と作りたくないわね…」


「でも回路製作は楽しかっただろ?」


「そんなわけないじゃない……思い出しただけで頭が疲れてきたわ……」


亡者の剣の刀身に命を吹き込んだ<神の3秒>を思い出し、テーブルに伸びたミーシャを見て、ショウはケラケラと笑った。


「ショウはこれからどうするの?」


ミーシャが顔だけを起こして聞いた。


「うーん。しばらくはレイと、亡者の剣の様子をしばらく見守ろうと思う。どんな不具合が起こるかわからないし、メンテナンスも俺がやった方がいいだろうしな」


「それなら、やっぱり強引にでもレイ王弟おうていの元につけばよかったんじゃないの?」


「過保護すぎるのもよくないし……」


ヘリクツに「拒否されるのが怖いだけでしょ」と言わんばかりにジト目を送るミーシャ。その思いがひしひしと伝わってきて、ショウの笑顔がひきつっていく。


成長していかなくてはならないのは、レイだけではない。




食事後、レストランの入り口で、何かを思い付いたミーシャは首を傾げてうーん、と唸り始めた。


「ん? どうしたんだ?ミーシャ?」


「これでめでたしめでたし、って感じなんだけど、なんか終わらない気がするのよね」


「へ?」


訳のわからないことをいうミーシャにショウは吊られて首をかしげる。


ミーシャの言っていることは何も裏付けはなく、突拍子もないことだが、妙に納得している自分がいた。


そして、ミーシャの予感に呼応するかのように、「大変だぁ~! 大変なんだ!!」と叫びながら何か大きな玉がコロコロとレストランに転がって来た。


店の全注目がその玉に集まる。その正体はポトフだった。


「お、お父さん」


「ポトフ、また太ったな」


二人は慌てて仰向けに倒れているポトフに駆け寄る。


ショウがこのレストランで会ったときはもう一回り小さかったはず。


「ストレスの暴食でね……」


ショウには心当たりがあった。それもイロイロと


「そ、それは。すまなかった……」


「いやそれより大変なんだ」


ミーシャが不味いことを口走ってしまったと両掌で口許を押さえる。


ショウは落ち着かせ、水を一杯飲ませた後、店内の椅子を持ってくるとポトフに勧め。落ち着くのを待った。


これを持って能事終われり、という訳にはいかないようだ。


命ある限り、面倒ごとは降ってくる。


ショウは大きくため息を付くと、微笑し。面倒ごとがポトフの口から伝えられるのを待った。


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