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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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EX Mission レイを再び仲間に誘え!

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Twitter @Imori_Saito

<ミスターシャの森 某地>


(ゴルード、シルク、ガーネット。言われた通り、亡者の剣を渡し終えたよ。今の時点でもうレイは俺より十分強いから、もう大丈夫だと思う)


ドットルト砂漠の一件から暫く経った。


ミスターシャに戻ったショウはミスターシャの森にミーシャと訪れていた。


森の入り口には大きな石碑が建てられており、ショウはその石碑に花を添え、手を合わせて祈りを捧げる。


その石碑は戦いを記念する為の石碑だった。


四大将軍ポリュグラスを倒すために散っていった者達の名前が刻まれており、ゴルード、ガーネット、シルク三人の名前が中心部にデカデカと掘られている。


ドットルトの砂漠での一件後、レイに追い風が吹いていた。


ドットルト砂漠でレイは光の魔力を余す事無く使い、200年間ドットルト砂漠に関わる人たちを苦しめる砂の城を打ち倒した事により、その存在が国内で知れ渡ったのである。


国も遂には隠しきれず、レイの存在を公表した。


彼は正式な王族、光の戦士として丁重に扱われるだろう。


「あなたは……」


「………レイ」


聞き覚えのある少年声にショウが振り向くとレイがいた。その碧い目には、ミスターシャの森であったような輝きはない。


しかし、表情は以前ドットルトギルドで振られた時よりも柔らかくなっているとショウは感じた。


「………」


「………」


しばし居心地の悪い沈黙が続く。ショウは彼の言葉を待った。


「これ、返すよ」


レイはショウに機械仕掛けの小盾(メカニカルバックラ―)を手渡した。機械仕掛けの小盾(メカニカルバックラ―)は嬉しそうにショウの身体を這い、背中にぺたりと張り付いた。


「いいのか?」


「この子、寂しがっていたから。それに、僕はもう一人じゃないから」


「そう……か。そうだよな」


亡者の剣の中には、三人の魂といえるレベルの魔力が封じ込まれている。レイの後ろには、ゴルード、シルク、ガーネットの三人が常についていてくれるのだ。


「レイ、この亡者の剣は三人の素養を付与したに過ぎない」


「亡者の…剣…」


「ああ、それがこの剣の名前だ。今、お前は自分のも含めて4つの素養の原石を宿している、ゴルード、シルク、ガーネットはその素養という原石をカットして、磨いて宝石にしていったんだ。どう原石達を磨いていくかはお前次第だ」


そう言い残すと、ショウは「がんばれよ」とレイの肩を叩き、その場を去ろうと石碑を後にする。


「ショウ、今までありがとう」


感謝の言葉に、ショウは立ち止まった。


「……礼には及ばないさ。亡者の剣に関しては、俺が造りたいと思ってやった」


「うん、それもあるけれど、感謝したいことはそれだけじゃない。アテナから聞いたんだ」


レイは続けた。


「僕が魔物と戦って危ない時や、悪い人につけられていたのを守ってくれていたんでしょ。ここまで、僕は一人ではやっていけなかった」


「斥候が優秀だったし、アテナもよく頑張ってくれていたんだよ」


「うん、そうだね……僕がここまでやっていけたのは、ショウのおかげさ」


―ショウが魔装具の事を教えてくれたから、戦い続けることができたんだから―


そうレイが言った瞬間、レイは目を大きく開き、口をぽかんと開けて振り向いた。


なんと、レイはショウのことをすべて思い出していたのだ。


「レイ……お前……」


「うん、思い出したよ。全部」


レイは亡者の剣を抱いた。


「この剣に魔力を込めると、ゴルード、ガーネット、シルク三人の魔力に包まれ、温かい気持ちになる。でも、何か足りない気がしたんだ。誰か、もう一人自分を満たしてくれていた人がいる……それで、思い出したんだ」


ショウは感極まっていたが、それをレイに悟られぬよう努め、懸命に涙をこらえた。


「ならもう一度、レイの元で内勤技術者としての職をやらせてくれないか?」


ショウの内勤技術者としての仕事は半ばで終わってしまっている。


レイを立派な魔法戦士にする。それが、亡きゴルード、シルク、ガーネットとの約束であり、今自分がやりたいことなのだ。


「ごめんショウ……それはダメなんだ」


ショウとの記憶を取り戻してもなお、レイはショウを拒絶した。


「光の戦士は、必ず過酷な運命さだめが待っている。そして、それは本人だけでなくその周りの人たちも同様なんだ」


レイは艶やかな色をした亡者の剣の刀身に目を落とした。


光の戦士であるレイについたゴルード、シルク、ガーネットは四魔神ポリュグラスという理不尽に対峙し、散った。


光の戦士についての伝説は、本物だったのである。


「断定するのは早い。俺は今ここに生きているし、アテナはレイのそばにいても無傷だったじゃないか」


「そうだ、ね……たとえその過酷な運命が迷信だったとしても、僕は一人で強くなりたいんだ」


「それは何故だ?」


ショウは問うた。


「意地…かな」


「意地……」


「……ごめん、ショウ。無茶苦茶なことを言っているのは、僕でもわかる……」


レイは頭を下げる。ドットルト砂漠で見せた拒絶とは違う。これはレイのお願いであった。


ショウは空を見上げ、大きくため息を付く。


「レイの気持ちはわかった。諦めるよ。でも、俺は今まで通り、自分のやりたい事を勝手にやらせてもらう。()()()()、レイの役に立っているかもしれんさ」


と、いたずらを考えた子供のような笑みを浮かべる。


「約束」と「やりたいこと」はレイの傍にいなくても、できないことはないのだ。


レイの返答を待たず、背を向け手を振りながら歩きだした。


「ショウ!!!!」


大きな声がショウをまた、呼び止める。


「次会ったらメカバック、また貸してくれないかな。まだ一度も勝ててないんだ」


満面の笑みを浮かべるレイはミスターシャで初めて会った時の少年らしさが現れており、


瞳には、碧いサファイヤの輝きが戻っていた。


ショウは嬉しそう「ああ」と手を振って返した。


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