Last Mission 剣を渡し、レイを救え!⑤
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<ドットルト砂漠 中心部付近にて>
(……技名……あった方がいいかな…)
ショウは地に伏し干からびていた。
魔力は自身の身体中に点在する生命エネルギーを、精神力という結合材で一点に集め、形とするもの。
<十手魔刀 六ノ手 アドジャストレンチ>の<制限解除>によって生きる為の生命エネルギーを戦いに回し、実体かつメンテナンス済みである《魔改造手甲》が、の生命エネルギーと精神力を燃やし尽くしたのである。
猛烈な苦しさを覚え、ショウは魔力回復薬を探そうとするが全く身体が言うことが聞かない。
弱った身体に《三つ首蛇》の毒がどんどん回っているのだろう。
心臓の鼓動も弱くなっている。
(いや、いいか。だって俺は戦士でもなんでもない、ただの技術者だしな…)
苦しみが通り過ぎてしまったのか、ショウはだんだんと弱くなっていく心臓の鼓動を感じながら、ぼんやりとモノを考えていた。
「大丈夫ですかい、ダンナ」
カースがショウの冑を外し、瓶の蓋を開けると、その黒い液体をショウの口の中に流し込んだ。
「げほっ、げほっ、ごほっ」
止まっていた息が、再び吹き替えす。カースが与えたのは、《三つ首蛇》専用の解毒剤だ。
次に、カースは瓶の中の青い液体を飲ませる。魔力回復薬だ。
「……もっと……頼む」
掠れた声でショウは言った。
「いや、しかし」
カースは渋った。この魔力回復薬は大量接種すれば毒として命を蝕むのだ。
「大丈夫だ。コレには耐性がある。それに、まだ動かねば」
「アンタ、一体…」
「……頼む」
カースはニ本目の蓋を開け、ショウに飲ませると、ようやく身体を起こせるようになった。
「みなさーん!」
アテナがやってくるのが見えた。
「ショウさん、大丈夫ですか? 今手当を……あっ」
ショウはアテナの腰のポーチに入っている魔力回復薬の瓶に気づくと、ポーチをふんだくり、瓶を取りだし、がぶ飲みし始めた。
「死にますよ!」とカースとアテナが慌てて止めようとするが、ショウは瓶の取り合いっこに辛勝。
アテナが仲間の回復用に持っていた魔力回復薬を全て飲みきり、ようやく立てるようになるまで回復した。
致死量をとうに越えても立ち上がれるショウに、カースとアテナは驚いた表情を見せる。
「言ったろう、この耐性があるって。アテナ、どうしてここへ? 逃げなかったのか?」
「ええ。なんか、急に魔物の出現数が減ってきたので。来ちゃいました」
「前線にノコノコやってくるなんて、有難い回復職だな。カース、望遠鏡を貸してくれないか」
カースから望遠鏡を受け取り、砂の城本体がいた中心部分を眺める。
ドットルト砂漠の中心で、レイは魔法剣を抱きながら一人涙を流していた。
「亡者の剣はうまく機能したようだな」
「仕事完遂、ですカイ?」
「ああ」と、安堵の息を漏らした。
「アテナ、カース、レイを頼んだ」
「どこへ、行くんですかい?」
「どこって、戦場に戻るんだよ」
アテナもカースも、頭に?マークを浮かべている。
ショウは、中心部にある砂でできた城の数々に背を向けているのだ。
「おいおいおい。俺は戦士でもなんでもない。ただの技術者だ。この闘いで、消耗品である武器や防具はどんどん壊れていくだろうさ」
本体が倒されたとはいえ、まだ他の地との地下通路の役割を担っている砂の城はまだ残っている。これを全て倒し、通路を塞がない限り勝利はない。
二人は納得したように、手のひらに拳をポン と置いた。
「全く……俺の本当戦場はここじゃない、鍛冶場だ。頼んだぞ」
と、兜を抱え、ドットルト砂漠を後にした。
(これは……)
途中、二つの雫がショウの首元を伝わり、動きを止める。
(汗、いや、涙か)
首元に垂れた涙を拭い、また歩き出す。
ここまで色々な出来事があった。
なあなあで受けたパーティーの内勤技術師の勤めが、自分のトラウマと向き合うきっかけとなり、レイという不思議な人物に出会った。
悲劇に襲われ、挫折を味わい倒れそうになるも、目の前に現れる救済の糸を頼り、踏みとどまることができた。
良いアイデアが浮かばず、のたうち回る事だってあった。酒に頼った事もあった。
《亡者の剣》そんな苦難と努力の結晶。
ショウにとって、初めての成功体験だった。
初めての感覚に、気持ちが昂ぶり、それが涙となって表れた。
「やっぱり俺は、一人じゃなにもできない凡人だ」
ミーシャ、カース、ポトフ、ドットルト砂漠の人たち、アテナを始めとした傭兵達など、様々な人の助けがあったからこそだろうと、ショウは思った。
レイの動向を把握しつつ、《亡者の剣》の剣に打ち込めたのはカースとアテナの協力があってこそ。
カースの交渉能力や、アテナには人を惹きつける力がある。
特に、ミーシャだ
彼女の義手から伸びる魔生糸が、<亡者の剣>に命を吹き込む場面を見た時、技術者として超えられない、絶対的な壁を感じた。
同業者として、それは何よりも悔しいこと。嫉妬さえ感じる。
しかし、義手というハンディキャップをアドバンテージに変えるまでの努力を思うと、負けを認め、納得している自分もいる。
「でもまあ、なんとかなって良かった」
立ち止まり、ショウは今までの感情をため息とともに吐き出した。
技術者として《亡者の剣》製作成功の余韻に、浸りたかったからだ。
貢献度が低かろうか、凡人だろうが、とにかく作りたいものが作れた。それでいいのだ。
《亡者の剣》の製作が自分を最後まで奮い立たせてくれた要因である一方で、最後まで苦しめたものであったと、ふと気づいたショウは、薄気味悪い笑い声をあげ、ドットルト砂漠を後にした。
その後、勝機が見え、ドットルト砂漠にどんどん傭兵達が戻ってきた。
《砂の人形》がいなくなり、一気に戦力が削がれた魔物達はじりじりと後退を始めている。
200年間、ドットルト砂漠に関わる人たちを苦しめてきた砂の城本体が倒された事によって風向きが変わっていた。
数日をかけて無事に全城の処理が終わり。ドットルト砂漠に平和が訪れたのであった。
Tips 薬の数々
<回復薬>
使用者の魔力を用いて傷を治す薬。消費魔力量が多く、使い勝手は悪め。
<魔力回復薬>
身体から魔力を絞り出す薬。飲みすぎると、生命維持のエネルギーまでもが魔力に変換され、使用者は死ぬ。
※魔力とは、生き物が持つエネルギーのうち、魔術(身体強化などの無属性魔法も含む)として使えるエネルギーを指す。




