Last Mission 剣を渡し、レイを救え!④
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<ドットルト砂漠 中心部付近>
―何だろう……
―なんだろうか、この感覚は……
痛さ、暑さ、寒さが入り混じる感覚に意識が沈んていたはずであったのに、あの剣を手に取った瞬間、全ての感覚が途切れ、やがてじわじわと身体の芯から温まっていくのを僕は感じた。
(……これ、は?)
徐々に、手足、指先の感覚が戻ってくる。
心地良い、身体も心も軽い。
こんな感覚は久しぶりだ、そう。ゴルード、シルク、ガーネットとともに暮らしていた時の……
(レイ様、まずは傷をいやしましょう)
聖母のような声が聞こえる。
シルクだ。死んだはずのシルクの声が聞こえる。
「シルク!?」
目を開き身体を起こして周囲を見るも、シルクの姿は無かった。
周りを緑色のオーラが包み、傷がみるみる塞がっていく。
《砂人形》に攻撃を受けても痛みを感じない。
―この光は、魔力は…シルクのものだ。間違いない。身体が覚えている。でも、どうして?
はっ と何かに気付いたレイは、手に持った魔法剣に意識を集中する。
―この魔法剣だ、この中にシルクの力が宿っているんだ…いや、シルクだけじゃない。ゴルード、ガーネットもいる……
ふと、僕はゴルード、ガーネット、シルクが後ろについているような錯覚にとらわれた。
(湿気のある砂が付着して切れ味を落とす。風を纏わせるといい)
―でも、僕は風属性なんて
(レイ様。私がついております。私の魔力を補助にしてやってみましょう)
声が、聞こえる。これは、錯覚ではないのかもしてない。
ガーネットが言うままに、風をイメージし魔力を込める。すると、柄部分の赤い魔力球が輝き、刀身は風を纏った。
「ああ、ああ…感じるよ、感じる……」
この魔法剣には、確かにゴルード、ガーネット、シルクがいる。
頬に大量の涙が流れ落ちていた。
(レイ、いけるか?)
ゴルードの声だ。
―うん、そうだね。うん、まだ終わってないね。
魔法剣に風を纏わせ、回転斬りを放つ。
周りにした《砂人形》は風の剣撃ではじけ飛んだ。
ーできた……
(ね、できましたでしょう?)
(この調子だ。俺たちの言った通りに身体を動かしてみるんだ)
僕は感覚の赴くままに、魔物に立ち向かう。
―動きがよく見える、身体が思うように動く…これがゴルードの感覚なのか。
身体一つ一つのパーツの軌道が何かに修正されている気もする。
力を入れるだけで、魔物の急所を的確に打ち抜ける。
驚きを隠せない。
この剣にしてから、まるで自分が別人になったと思うほど、身体、感覚が変わっていたのだ。
「運転状況は正常…成功か」
そう、後ろから声をかける者がいた。
「あなたは……」
以前、僕をパーティに勧誘した作業着の男。
確か、メカバックの主人だった。
男は兜を脱ぐ。まっすぐと砂漠の中心部を見つめる表情に、どこか懐かしさを覚える。
瞬間、脳裏に何かが映った。
砂漠ではない、森だ。
ー僕はこの男のことを、古くから知っているのだろうか?
彼の魔力が乱れている。顔色も悪く、汗がダラダラ流れている。
「もしかして、毒にやられているのか?」
助けようと手を伸ばすも、男は「いや、いい」と首を振る。
「仲間に解毒剤を持ってくるよう言ってある。さあ、やるぞ」
「……はい」
この男の言う通り、今は過去を探る場合ではない。
二人は背中を合わせ、迫る魔物の大軍と矛を合わせる。
「勝機はある。この砂の城を造っている本体を倒せば、二度と城が造られなくなるだけではなく、砂の人形も一気に消える。そうすれば、ドットルトのギルドメンバーだけでも十分対処できるようになる」
《鎧豚》の新たな個体によるこん棒の一撃で、レイとショウが離れた。
僕は振り下ろされたこん棒に乗り、そのまま《鎧豚》の首に一閃。風の魔力を纏わせ切れ味が上昇した一太刀は、《鎧豚》の命を絶ち切った。
あの人は右魔改造手甲に取り付けてあるレンズを覗きながら右人差し指で小さな魔弾を放った。放ち終えるとドライバーで較正し、また撃ち較正。これを繰り返しながら迫る砂の人形を迎撃していく。
「でも、《砂の城》の本体はどこに」
再び背中を合わせた時、僕は聞いた。
「お前なら見える筈だ。ガーネットの力を受け継いだお前なら。思い出せ、ガーネットの所作を」
そう言われ、記憶を頼りに目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。
聞こえてくるのは遠くのつば競り合う金属の音、耳を掻く砂混じりの風、ゴーッ、と火が燃える音、その雑音を排除しただ探知にのみ全感覚を集中させる。
(そう、そうやって感覚を研ぎ澄ませて闇の気配を探るのよ。ここは砂漠、探索を阻害する生き物も少ないわ。レイさ……レイならできるはずよ)
ガーネットの声だ。後ろにいるようで、僕は安心感を覚える。
―見つけた。
地中に潜る大きな闇の塊。
僕は目を開き、一つの方向を指差した。
「あそこです」
指差したのはドットルト砂漠の中心から少しそれた場所にある砂の城。そこに地中を掘り、魔物達を呼び寄せる本体がいる。
「なるほど……あそこなら、ここから守っている城は1つ。俺が道を開く、お前は特効して城の本体を倒せ」
「はい!」
「しばらく魔力を溜める。守護は任せたぞ」
<十手魔刀 六ノ手 アドジャストレンチ>
彼の手に持つ何かから、先が六角形をした半透明の物体が出てきた。
<制限解除>
彼が右足を城に向け腰を落とし、刀身を自分の腹に差し込む。
「ふんっ!!!」
「おい、いったい何をしているんだ!?」
敵に対処している最中、不可解な行動をする彼に叫んだ。
「いいから、目の前の敵に集中しろ!」
そして、彼はガチャリと腕を回す。
すると、彼の中から沸々と無属性の魔力があふれ出した。
<十手魔刀 三ノ手 手品腕>
持ち手から半透明の腕が生え、その手がメカバック掴むと、彼は手を放し、手甲のついた両拳を付きだした。
「はああああああ」
両手甲からギアが高速で回転する音が鳴り響き。魔力が掌に集まり、圧縮され発光する。
「飛ぶ準備はいいか?」
「飛ぶ?」
「こいつだ」
半透明の腕に掴まれたメカバックが僕に近づくと、ぐるぐると僕の周りを回転する。
僕のお腹に、半透明の白い紐のようなものが巻き付いた。
メカバックは、彼の左手甲の目の前で待機し、カチカチと歯車の音を鳴らす。
そういうことか、と僕は頷き剣に魔力を込めた。
「安心しろ。メンテナンスも較正もバッチリだ」
大きな力の集まりに反応した砂の兵士達が、彼に向かって一斉に襲いかかってきた。
邪魔させまいと僕がサポート。流れるような所作で砂の兵士を切り裂き、魔力を与えて砂へと帰す。
カチリと手甲の中から音がする。周りを風とオーラが舞い、砂が巻き上がるもショウはしっかりとレンズで目標の城を捉えていた。
「準備完了だ! いくぞ!」
「くらいやがれ!!!!!」
「くらいやがれえええええええ!!!!!」
両掌のゲートがカメラのシャッターのように開かれ、右手から魔弾が、左腕からは無属性の魔力が噴射された。
メカバックが飛び、僕も飛ぶ。すさまじい慣性力に身体が悲鳴を上げるが、我慢だ。
狙いを一点、砂の城本体に集中するんだ!!
赤黒い濃密な魔弾は、砂を抉り、立ちはだかる魔物を消し去り、目標の城を粉砕する。
着弾とともに、砂が舞い。砂漠の中心が見えなくなる。
「行け!!! レイ!」
「うおおおおおお!!!!」
僕は剣を逆手に砂漠の中心へ、地中にいる邪悪な存在の元へと突き進む。
着地と同時に地面に亡者の剣を突き刺して、炎の魔力で爆発を起こした。
<灼熱の大地>
爆発の衝撃で城もろとも吹き飛び、レイの身体も浮かびあがる。
(どこだ、どこにいる?)
砂による雑音の中、感覚を研ぎ澄ませた。
砂嵐の中に黒く大きな影がある。
細長い生物、巨大なアリジゴクのような生物だった。
(あれが本体か!)
砂の城(本体)は僕の存在に気づくと、地中へと潜り、逃亡を計ろうとする。
「逃がすかああ!!!」
僕は足の裏に風を纏わせ、巨大アリジゴクに突撃した。
砂の城(本体)が地中へと潜りきる前に、剣を突き刺した。
「とまれえええええ!!!!」
ありったけの魔力を剣に込める。持ってくれ、あと少し。
―グギャアアアアアアア!!!!
砂の城本体の動きが鈍くなり、みるみる固まり、大きな氷の象が出来上がる。
「これで、止めだ!!!!!」
細長い氷の像を、バラバラに叩き切り、その氷群は霧となって消えた。
Tips 十手魔刀
ショウが初めて造った魔装具。自身のエネルギーを様々な形に固めるという単純なものである。
携帯性、堅牢性、そして整備性が良く、ショウはアップデートを繰り返し長く愛用している。
ショウ曰く、10個形があるらしい。




