Last Mission 剣を渡し、レイを救え!①
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<ドットルトの町 宿にて>
ミスターシャ国防軍とドットルトに集う傭兵達による、《砂の城》撃退作戦。
いわゆる「総力戦」が始まった。
今日は1日目 町の傭兵勢力で野砲&魔導士配置予定場所の敵排除を行う予定。陣地構築後、大砲で《砂の城》を物理的に破壊し、魔導士の遠距離攻撃で魔物を消し飛ばす戦略だ。
ドットルトの町は静寂に包まれている。
戦えるものは皆ドットルト砂漠に向かい、守るものは戸を固く締め、籠っている。
ミーシャは静かになったドットルトの町の宿で、義手の簡易メンテナンスを行っていた。
新しい魔生糸のカートリッジを義手に取付け、つなぎ目の部分から注油して潤滑させる。
もう一度指を動かし、頭のなかでシミュレーション。
動かしていた指同士がぶつかり、失敗。ため息を付くとベッドに座り込む。
(とてつもなく、面倒な案件を引き受けてしまったわ)
ミーシャは依頼を安々と引き受けてしまったことを後悔している。
相場では、最初にショウに提示した額の倍は取って良いほどの難易度。さらに、失敗は許されないという厳しい条件だ。
だが、引き受けてしまったのだから成功させるしかないともミーシャは思っていた。
プロの根性、矜持とも言う。
(お母さん、師匠。見ていてね)
その義手には、命と引き換えになる形で義手を託した母マーシャ、義手を発明し魔装具を教えてくれた師匠モールド、2人の思いが込められている。
(ショウ、見せてやるわ)
そして、今の義手にはショウの思いも込められていた。その思いが「亡者の剣を造りたい」という思いなのか、「ミーシャの腕を自由にしてやりたい」という思いなのかはわからない。
が、ショウの思いは確かに感じることができる。
ミーシャは決意を表すように義手をキュッと握ると、再び練習を始めた。
暫くして、ミーシャの部屋のドアが鳴った。
ミーシャの「どうぞ」という声で、ショウが中に入ってくる。迎えに来たのだ。
「準備は大丈夫か?」
「ええ、もちろん。そっちは?」
「ああ、抜かりないさ」
そうガッツポーズをするショウは、昨日よりもやつれており、目元にうっすらと隈ができている。
二人はバナナ装備店へと向けて歩いていた。
「その、ショウ。大丈夫なの? その身体で」
「ああ。多少無理はした。けれど、製作にはバナナ装備店の人たちが全面的に協力してくれるから、今日、俺のやることは少ないさ」
「そ、そう」
大仕事を前に二人とも緊張しているのか、会話は少ない。
ドットルトの町が静かなこともあって、ザクザクと砂の音が鮮明に聞こえる。
バナナ装備店の前につくと、強い風が吹いた。
ミーシャは舞い上がった砂に反応し目を瞑る。
目を開けると、黄土色の装束を全身に纏った者が二人の目の前に現れていた。
「うひっ」
ミーシャは変な声を出して驚き、尻餅をつく。
「だ、誰? 敵?」
「カースの仲間だ」
ショウは慣れたのか、冷静に応対している。
「これを」と、差し出された手紙を受け取り、開き、目を通す。
「………!!」
内容を見たショウの目は見開き、息をするのも忘れるほどに驚愕した。
「ここに書いてあることは本当なのか?」
コクリ、とカースの仲間は頷く。手紙を持つショウの手がぶるぶると震え始めた。
「何?何が書いてあるの?」
ショウの腕を握り、揺れを止める。
内容がミーシャの目にも入った時、彼女も「ウソ」と声にならない声を漏らした。
なんと、頼みの綱だったミスターシャの国防軍がドットルトへ砂漠への進路を突如変更し、南に向かってしまったという。
「ど、どうして南なんかに」
「確かに、国は南の防衛に力を入れていた。だからって約束を反故にするのか?」
「砂漠は不毛の土地だから、見捨てられたってか」
手紙を握りしめ怒りを滲ませる。ミスターシャ国防軍が来ないという事は、ドットルトの町の力だけで砂の城を追い出さなくてはならない。
「いけるのか、ドットルトだけで」
「無理、でしょうね」
カースの仲間は装束の中から答えた。カースとはまた違った低い男の声だ。
「この事を知っているのは」
「今はカースと私だけですが、物見は他にもいます、直に伝わるかと」
「そう、か」
ショウは視線を落とした。国防軍の進路変更を知った傭兵達は一目散に逃げだすだろう。そして、例外であるレイは最後まで、いや最期まで砂の城と戦うはずだ。
「カースは今、砂漠でレイを守っております」
心臓がバクバクと鳴り、ショウの息が荒くなっていく。眠気はすっかり消えてしまった。
心の乱れを止めようと深呼吸し、目を閉じて考える。
(自分には何が出来るのか、レイを助けるために何をするのが最善なのか)
「ショウ……どうするの?」
ミーシャが不安そうな声で言う。
そして、ショウは覚悟を決めたように目を開き、言った。
「このまま、予定通り続けよう。俺とミーシャは亡者の剣を造りに行く。カースはレイの援護を頼むと伝えてくれ」
「承知」
カースの仲間は答えその場を立ち、風とともに消えた。
ほぼ無人となった町の土を、風が静かに凪ぎ舞い上がった砂がショウの作業着に当たる。
「味方が来ないと知れ渡ったら、士気が落ち敗色濃厚だ。撤退戦になれば、相当多くの死者がでる。レイがしんがりの名乗りを上げる可能性もある。崩壊する前に、<亡者の剣>を渡して退却……」
「責任重大ってわけね……」
「幸運と考えよう、今日はまだ小競り合い程度のはず。引いても損害は少ない」
そうだとしても、レイが死なない保証はない。
腹をくくるしかないという一方で、二人の決意には焦りが滲み出ていた。
Tips カースの同僚
8時間交代でレイの身張りをしており、カースの同僚は2人いる。
身を隠しており、あまり声も発しないのでどういった人物か、性別すらもわからない。
カース曰く、実力は折り紙付きだという。




