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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Last Mission 剣を渡し、レイを救え!①

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Twitter @Imori_Saito

<ドットルトの町 宿にて>


ミスターシャ国防軍とドットルトに集う傭兵達による、《砂の城》撃退作戦。

いわゆる「総力戦」が始まった。


今日は1日目 町の傭兵勢力で野砲&魔導士配置予定場所の敵排除を行う予定。陣地構築後、大砲で《砂の城》を物理的に破壊し、魔導士の遠距離攻撃で魔物を消し飛ばす戦略だ。


ドットルトの町は静寂に包まれている。

戦えるものは皆ドットルト砂漠に向かい、守るものは戸を固く締め、籠っている。


ミーシャは静かになったドットルトの町の宿で、義手の簡易メンテナンスを行っていた。


新しい魔生糸のカートリッジを義手に取付け、つなぎ目の部分から注油して潤滑させる。


もう一度指を動かし、頭のなかでシミュレーション。


動かしていた指同士がぶつかり、失敗。ため息を付くとベッドに座り込む。


(とてつもなく、面倒な案件を引き受けてしまったわ)


ミーシャは依頼を安々と引き受けてしまったことを後悔している。


相場では、最初にショウに提示した額の倍は取って良いほどの難易度。さらに、失敗は許されないという厳しい条件だ。


だが、引き受けてしまったのだから成功させるしかないともミーシャは思っていた。


プロの根性、矜持とも言う。


(お母さん、師匠。見ていてね)


その義手には、命と引き換えになる形で義手を託した母マーシャ、義手を発明し魔装具を教えてくれた師匠モールド、2人の思いが込められている。


(ショウ、見せてやるわ)


そして、今の義手にはショウの思いも込められていた。その思いが「亡者の剣を造りたい」という思いなのか、「ミーシャの腕を自由にしてやりたい」という思いなのかはわからない。

が、ショウの思いは確かに感じることができる。


ミーシャは決意を表すように義手をキュッと握ると、再び練習を始めた。


暫くして、ミーシャの部屋のドアが鳴った。

ミーシャの「どうぞ」という声で、ショウが中に入ってくる。迎えに来たのだ。


「準備は大丈夫か?」


「ええ、もちろん。そっちは?」


「ああ、抜かりないさ」


そうガッツポーズをするショウは、昨日よりもやつれており、目元にうっすらと隈ができている。


二人はバナナ装備店へと向けて歩いていた。


「その、ショウ。大丈夫なの? その身体で」


「ああ。多少無理はした。けれど、製作にはバナナ装備店の人たちが全面的に協力してくれるから、今日、俺のやることは少ないさ」


「そ、そう」


大仕事を前に二人とも緊張しているのか、会話は少ない。


ドットルトの町が静かなこともあって、ザクザクと砂の音が鮮明に聞こえる。


バナナ装備店の前につくと、強い風が吹いた。


ミーシャは舞い上がった砂に反応し目を瞑る。


目を開けると、黄土色の装束を全身に纏った者が二人の目の前に現れていた。


「うひっ」


ミーシャは変な声を出して驚き、尻餅をつく。


「だ、誰? 敵?」


「カースの仲間だ」


ショウは慣れたのか、冷静に応対している。


「これを」と、差し出された手紙を受け取り、開き、目を通す。


「………!!」


内容を見たショウの目は見開き、息をするのも忘れるほどに驚愕した。


「ここに書いてあることは本当なのか?」


コクリ、とカースの仲間は頷く。手紙を持つショウの手がぶるぶると震え始めた。


「何?何が書いてあるの?」


ショウの腕を握り、揺れを止める。

内容がミーシャの目にも入った時、彼女も「ウソ」と声にならない声を漏らした。


なんと、頼みの綱だったミスターシャの国防軍がドットルトへ砂漠への進路を突如変更し、南に向かってしまったという。


「ど、どうして南なんかに」


「確かに、国は南の防衛に力を入れていた。だからって約束を反故にするのか?」


「砂漠は不毛の土地だから、見捨てられたってか」


手紙を握りしめ怒りを滲ませる。ミスターシャ国防軍が来ないという事は、ドットルトの町の力だけで砂の城を追い出さなくてはならない。


「いけるのか、ドットルトだけで」


「無理、でしょうね」


カースの仲間は装束の中から答えた。カースとはまた違った低い男の声だ。


「この事を知っているのは」


「今はカースと私だけですが、物見は他にもいます、直に伝わるかと」


「そう、か」


ショウは視線を落とした。国防軍の進路変更を知った傭兵達は一目散に逃げだすだろう。そして、例外であるレイは最後まで、いや最期まで砂の城と戦うはずだ。


「カースは今、砂漠でレイを守っております」


心臓がバクバクと鳴り、ショウの息が荒くなっていく。眠気はすっかり消えてしまった。

心の乱れを止めようと深呼吸し、目を閉じて考える。


(自分には何が出来るのか、レイを助けるために何をするのが最善なのか)


「ショウ……どうするの?」


ミーシャが不安そうな声で言う。


そして、ショウは覚悟を決めたように目を開き、言った。


「このまま、予定通り続けよう。俺とミーシャは亡者の剣を造りに行く。カースはレイの援護を頼むと伝えてくれ」


「承知」


カースの仲間は答えその場を立ち、風とともに消えた。


ほぼ無人となった町の土を、風が静かに凪ぎ舞い上がった砂がショウの作業着に当たる。


「味方が来ないと知れ渡ったら、士気が落ち敗色濃厚だ。撤退戦になれば、相当多くの死者がでる。レイがしんがりの名乗りを上げる可能性もある。崩壊する前に、<亡者の剣>を渡して退却……」


「責任重大ってわけね……」


「幸運と考えよう、今日はまだ小競り合い程度のはず。引いても損害は少ない」


そうだとしても、レイが死なない保証はない。


腹をくくるしかないという一方で、二人の決意には焦りが滲み出ていた。


Tips カースの同僚

8時間交代でレイの身張りをしており、カースの同僚は2人いる。

身を隠しており、あまり声も発しないのでどういった人物か、性別すらもわからない。

カース曰く、実力は折り紙付きだという。

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