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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 14 亡者の剣の設計を完成を急げ! ②

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Twitter @Imori_Saito

「で、あっしが呼ばれた訳ですかイ」


「そういうこと、よろしくたのむわね」


「は、はァ……」


と、カースは後頭部をポリポリと掻いた。


(これは一体?)


ミーシャに言われるがまま、カースを呼んだが、未だに状況がわからない。

町から離れた砂地にて、カースとショウは対峙している。


一方は木の片手剣を握っている。カースはごくごく一般の木であるが、ショウは握っているのは、亡者の剣を模した剣で、グリップには試験用の細い魔生糸が回路を組んでいる。


ミーシャが棒を持ってきて、とせかしてきたので、慌てて持ってきたものだ。


ちらりと剣を見れば、亡者の剣のことを思い出し、「なにサボってるんだ!」「早く設計図をかけ!」と言った言葉が頭に鳴り響いてくる。


持ってくるのを間違えたなと、ショウは後悔した。


「じゃあ、試合を始めるわよ」


「し、試合? 誰と誰の?」


「ショウとカースの」


「え?」


(なんでそんなことをしなければいけないんだ?)


「カースも、準備はいいわね?」


「エエ。レイサン今日は休むみたいですし、暇でしたからネ 付き合いますヨ」


「よろしくね、カース」


カースは腰を落とし、自分の近くでピタッと剣を構えている。剣先にブレが無い。


「さあ、ショウも構えて」


ショウは困惑している。


今はこんなことをしている場合ではない。すぐに帰って、少しでも多くのアイデアを生み出さねばならない。


そうは思っていたものの、片手剣を両手で持ち、順手で上段に構えた。


(ふっ 身体は正直だな……)


戻って机に向かったところで、地獄のような時間が待っている。


逃避をしたいという気持ちが、身体を突き動かした。


「では、はじめ!」


ミーシャの腕を振り下ろすとともに、カースは距離を詰めた。


間合いに入ると、カースは鋭い突きを繰り出す。


“危険”という本能を頼りに、ショウは身体をねじり、紙一重で交わした。


本気だと悟ったショウは、身体をねじった勢いで地面に転がり、距離を取ろうとする。


カースは逃すまいと、距離を詰め、ショウが立ち上がったところに突きを置いた。


動きを見切り、攻撃を剣で払うと後ろに飛び、距離を取るべく剣を突き出す構えを取る。


「おい、カース! 勘弁してくれよ!」


木製とはいえ、当たったら痛いしケガもする。


さらにカースは無属性の魔力を剣に込めて威力を上げており、腕や肩に直撃すれば、技術者エンジニアとして一貫の終わり。


それこそ亡者の剣製作は失敗に終わる。


「残念ですがダンナ。そうはいきません」


「どういうことだ?」


「ミーシャ女史に頼まれているんですヨ。ダンナの3倍以上の報酬でね……」


「く、守銭奴め……」


「ガキのためデス。許せ、とはいいませんヨ。それに、ダンナのため、らしいですからネ」


とカースは再度距離を詰めた。


「くっ」


ショウも自身の剣に無属性魔力を込め、応戦する。


少しでも油断したらやられる、とショウは集中し、神経を尖らせた。


しばらく二人の攻防は続いた。


経過はカース優勢。太ももとわき腹、それぞれ一発ずつ軽い一撃をカースはショウに与えているが、ショウは一発も有効打は無い。


「ホウ、なかなかやるもんですネ」


「イヤミか、ったく」


「ホメているんですヨ」


カースの攻撃を受け、払い、かわす。


(身体が……頭が…軽い)


相手の動きに神経を尖らせてきたショウはふと、どんよりとしていた心が晴れ、頭が軽くなっていることに気づいた。


身体を動かし血流が巡ることで脳が活性化を始めていた。


カースの動き、剣先の動きがこれまでより鮮明に見え、動きも良くなっていく。


「ここだ!」


今までは防戦のみであったショウは、初めて攻撃をしかけた。


「うおっ」


カースは後方に飛び、距離が開いた。


攻撃はカースの胸元の黒い服をかすめるに終わる。カース優勢は変わらないが、ショウにとっては大きな変化だ。


ショウは手に持つ木でできた亡者の剣のレプリカをまじまじと見る。


力と魔力を込め、攻撃を仕掛けた時感じた、魔生糸を流れる魔力の感触。


不思議で、懐かしさを感じる感触であった。


カースと打ち合い、感覚も鋭くなっている。


「動きが良くなってきているんじゃないですカ」


「これからだ、カース」


「楽しみです、ネ」


二人は笑いながら剣を合わせる。


打ち合う度に、カースの動きが読め、自分の身体の動きも思うように動いてくる。


打ち合う度に部品の軋み、魔生糸同士の干渉の感覚がフィードバックとして頭に流れ込み、


そして、新たな設計案が次々と生み出され、消えていく。


そこに負の感情はない。


感じていたのは成長の嬉しさへの喜び、高揚感であった。


納期のことや、アイデアが思い浮かばないことに、くよくよしていたショウの姿は無かった。


ブレイクスルーは、程なくして訪れる。


隙をついたカースの横なぎの一閃を、ショウはぐっと足腰を落としギリギリで交わした。


砂地というアンバランスな地の上で転ばぬよう体幹を固め、足に力を込め立ち上がりとともに強烈な切り上げを浴びせ、カースの剣を弾き飛ばす。


刹那、何かがショウの脳内で起こった。


脈絡もなく無から発生したソレは、ショウの知識、経験、技術に伝播し、繋げ一つの構想を練っていく。


(わわわかった。わかった)


ついにたどり着いた。問題を解決する、画期的な設計案に。


その瞬間、ショウの景色が逆転した。


カースに投げられていたのである。戦闘以外のコトに集中しすぎていれば、当然の結果であった。


「ぐはっ」


ショウは背中から地面に落ちる、砂上なのでケガはない。


転がると、すぐに起き上がり、戦闘に戻る……のではなく、なんとショウは剣を投げ捨て、指で砂に図や計算式を描き始めた。


「いける、いけるぞ。これならいけるかもしれない」


カースとミーシャは、試合を急にほっぽり出してぶつぶつと絵を書くショウを、怪奇を見るまなざしで見ている。


(このアイデアが少しでも霞まない内に正式に図面として書き留めなければ)


「ヨシ」と立ち上がると、ショウは二人に「ありがとう」と早口で言い、一目散に駆け去っていった。


「はぁ~ 結局、ショウはずっと設計のコトを考えていたのね」


やれやれとため息をつくミーシャだが、その表情は満足そうにも見える。


「生かさず殺さず。ミーシャ女史も無理難題をおっしゃる。あっしは対面で戦うのは苦手でしてね」


「それでも、やってのけたじゃない」


「ミーシャ女史の策が良かったからでショウ」


「いやいや、二人が試合をするのは、思いつきだったし……」


はい、とミーシャはカースに硬貨の入った袋を渡す。カースはそれを丁寧に頂戴すると、中身を確認して懐にしまった。


「ありがとう、カースが「ショウの様子がおかしい」って言ってくれなきゃ、私も気づかなかったわ」


「心を読むのが、あっしの専門ですから、ネ。ミーシャ女史も。頑張ってカベを壊してくだサイ」


「うっ、どうして知っているの……」


図星を付かれたミーシャは背中に矢を受けたように前のめりになった。


「ミーシャ女史は、ショウの旦那と同じで顔に出やすいですカラ」


「あれはショウが悪いのよ。任された依頼の回路製作が難しすぎるわ。これならお金をしっかり取っておけばよかったわ」


「くくく、そうは言いますが、やって見せるんでしょう」


「そうよ、一度請け負っちゃったんだもの、やって見せるわ」


心を見透かされすぎて不満に思ったのか、ミーシャはぷいっ踵をかえしてしまった。


※※※※※※※


「できた……成功だ……」


壊れていない試験機の前で、ショウは大きく息を吐く。


目の前には、一心不乱に描いた設計図が糸で吊されている。


旧設計書にあった技術的な問題を解決する、新たな亡者の剣の設計がついにできあがった。


「思えば簡単なことだった。もっと早く気づいていれば…」


と、ショウは疲労とともに肩を落とす。


どれだけ入り組んだ迷路も、突破の糸口を見つけてからは、早いものだ。


(ありがとう、ミーシャ、カース)


自身の設計書の上部分に、タイトルとしてこうショウは書き留める。


《亡者の剣Ver0.1 ―プロトタイプ》


そしてショウは明日に備え、バナナ装備店の藁ベッドを借りると、眠りについた。


明日は、勝負の日だ。

Tips ショウの戦い

ショウは技術者であり、戦闘員ではない。

しかし、技術者の中では戦えるというとで、危険な場所にある魔装具の素材を取りに行かされたりした。

彼は生き残ることを優先としており、危険を知らせる感覚信号が他人より異様に発達している(本人は自覚していない)。

彼の異様な生命力もあり、勝てはしないものの、生き残る。

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