Mission 13 違和感の正体を探れ!
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<ドットルトの町 カフェ・沼>
アテナは町の教会へ戻り、ショウはバナナ装備店へと向かった。
カフェ・沼にはカースとミーシャが残っている。
「ここに来て早いというのに、ココの裏メニューの存在を突き止めるとは、流石デス、ネ」
「私は甘いモノへの嗅覚には自信がありますから」
「あっしには少々、甘すぎやすね。あ、敬語はよしてくだサイヨ」
と、手を振って嫌そうに言った。この男は、敬語を使われることが苦手のようだ。
「そう…わかったわ。それで、話って?」
ミーシャが尋ねた。カースが机の下で、「ショウの旦那のコトで話がある」と記された紙の切れ端をよこしてきたのである。
「さっきのダンナに、違和感を感じましてネ。ミーシャ女史は、今日のダンナのこと、どう思いました?」
「どうって……」
首を傾げて考えてみる。
「明日に向けて張り切っていたように見えたけれど…」
「確かに、ミーシャ女史の言う通り、ダンナはレイさんを助けるという意志に燃えているようでした。ですが、あの時のと違いやしてね、どうも妙なんデス」
「あの時?」
「あっしと旦那が初めて会ったときのコトです。あの時もダンナは張り切っていやしたが、歯をちらりと見せ、笑っていました。でも、今日は唇を締めていましタ。
ただの緊張なのかもしれませんし、たまたまだったのかもしれません。ですが、妙に胸騒ぎがする。
こういう違和感は後々大きなヤラカシを生むものデス。理由を考えてみても、それがわからない」
「だから私に相談を?」
「そうでス、ネ……」
これまでの事を思い浮かべる。
「やっぱり、レイさんのことかな。本番が迫って、緊張しているから」
ミーシャとショウは部屋が隣であり、顔は何回も合わせたのだが、悩んでいる様子は見受けられない。
介助しているときも、疲れてはいたが、苦労の様子はなかった。
自分のせいでショウに無用な労力を消費させてしまった負い目があり、注意して見ていた分、よく覚えている。
ひどい顔をしていたのは、ドットルトで最初に会ったとき。レイに拒絶されて動く意味を失った時くらいだ。
それも、一瞬である。
「あれ、でも……」
ミーシャは違和感を感じた。何かかみ合わないものを感じたのである。
ショウのメンタルは強いとは言えない。今でも、レイと会うのをなるべく避けている。
介助しているときも、苦労を感じているはずなのだ。
(ショウは、隠すのがうまい?)
違和感が胸騒ぎとなる。ミーシャは首を少し傾け、考え込んだ。
ショウは今日、過去に内勤技術者のパーティで失敗した時のトラウマを克服するために、レイさんが所属している傭兵パーティの内勤技術者としての仕事を受けた。
しかし、パーティはまたも壊滅してしまった。
今度は、生き残ったレイさんの助けとなる為に、はるばるドットルト砂漠までやってきた。
しかし、レイさんに拒絶されてしまった。
それでも、レイさんに黙って裏で動き続けているのは
《亡者の剣》という拠り所を見つけているからだ。
《亡者の剣》の開発はうまくいっているという。何も問題はない。
明日への緊張だろうか? 《亡者の剣》は一品限り、うまくいくかわからない。完成しても、レイさんが死んでしまうかもしれない。
ちがうと思う。ショウはそのことを告白していた。隠してはいない。十分織り込み済みでしょう。
ミーシャの首の傾きが、徐々に大きくなっていく。
「カースさん。ショウの造っている、亡者の剣って名前の魔法剣、見た事ある?」
ぽつりとつぶやくように言った。
「いいえ。何かやっているのは知っていましたが、亡者の剣の具体的な内容を知ったのはついて知ったのは、今日です」
ミーシャも、具体的な進捗は知らない。
「何か、わかったんですカイ?」
「例えば、例えばの話なんだけれど……」
「言ってみてくだサイ」
「もし、ショウの造っている亡者の剣の製作が、上手くいっていなかったら?」
カースの細い目がかっと開いた。
「どういうことですカ?」
「ショウは、設計図の通りじゃ動かないから亡者の剣の設計を変更をしていたの。特に、持ち手、グリップの部分をね」
「そんなこと、ありえるんデス? もしそうなら、表情に出ています。ショウの旦那は、顔に表情が出やすい。夜にその日の報告をするのデスが、レイサンの行動を冷静に聞いているようでずっと狼狽していましたし、最初のころは、疲れていないと言いながらぐったりしていましたからネ」
「……」
カースは否定したが、その言葉で仮説が確信に近づいていくのをミーシャは感じた。
「それって、カースさんとショウが契約した最初のころ?」
「ええ」
カースと契約した最初のころ。それは、腕が動かなくなったミーシャの介助をしていた時だ。
「ショウって、表情を隠すのが案外上手いのよ。私には、そういった表情を見せなかった」
それは、素人だからでは? という反論を覚悟し言った。
カースはその反論はせず、代わりに足を伸ばし、「うぅむ」と腕を組み顎をなでながら考え始めた。
「亡者の剣のシンチョクがヤバいから、ショウの旦那は悟られまいと、必死に表情を隠そうとした。けれど、期日は明日。あまりにヤバいので唇に綻んでしまった。もしそうだとすれば、今日の言葉はアテナさんではなく、旦那自身にも向けられていることになる」
「そうとう追い詰められているってこと?」
「もしそうならば、ってことです仮説にしかすぎません。やる事は一つ、確かめに行くのデス。仮説は検証しないト」
と、カースは席を立った。
「ちょっと待って」
ミーシャが止める。
「もしそうだった場合、どうするかの作戦を先に練りましょう」
「イチリありますが、無駄になるかもしれませんよ。あっしにも明日の準備がありますし……」
「出すわよ、お金」
カースの言葉を遮るように言った。
ミーシャはソワソワすることなく、しっかりと座っている。
ショウの言う通り 怠惰で自分勝手な所はあるが、
大事な場面で冷静さを欠かさず、しっかりと物事を考える事ができる女性だと、カースは感心した。
カースは「わかりやした」と席に戻り、二人で対策を練った。
Tips ミーシャの本
ミーシャは本を出している。
1つは旅行記。町へ旅した時の記録を、自身が書いた絵を添えて本にしている。
そしてもう1つは、恋愛小説だ。ノーマルなものもあれば、BLなものもある。
彼女の本は、雷属性魔法による印刷技術で世に出回っている。




