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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 12 作戦を確認せよ! ②

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Twitter @Imori_Saito

「自分の為、だと思う」


「自分の?ですか?」


頭にハテナマークを浮かべるアテナに、ショウは「そうだ」と言いながら丸まった背筋を伸ばし、座り直して話を続ける。


「俺はレイのパーティーに入る前も、あるパーティーの内勤技術者をやっていたんだ。でも、失敗して自分だけが生き残ってしまってな。今でも、あの時の事が夢に出てくるよ」


幼馴染みであるミーシャもあまり知らない話であるショウの過去話、三人はじっとショウの言葉に耳を傾ける。


「レイのパーティーも元々は俺を含めて5人だったんだ。そして、ゴルード、シルク、ガーネットという素晴らしい人達がポリュグラスと相討ちになって亡くなった。一番無能だった俺がまたもや生き残ってしまった」


ショウは自分の膝の上にある右掌に視線を落とす。ミスターシャの森での危なっかしくも楽しかった5人での生活。


そしてその生活を打ち砕いたポリュグラスとグルドの襲撃。三人の無惨な姿や、敵討ちであるポリュグラスの死闘も思い起こされ。ショウはその右拳を握った。


「自惚れているかもしれないけど、もし今止めてしまえばレイは死ぬ。そうなれば、トラウマを払拭できずに俺は一生後悔するだろう。これは、神様が与えてくれた試練なんじゃなかとも思う」


「神様の試練、ですか」


アテナがポツリと呟いた。


「神様は乗り越えられない試練は与えないはずさ。レイに拒絶された時も、亡者の剣というチャンスがあった。こうして仲間も集まった」


「そ、そうです…ね…」


応答は、歯切れが悪い。


(アテナは合理的、理論、科学を信仰する技術者は無神論者が多いのではないかと思っているのだろう)


とショウは思った。


「アテナは勘違いしているとは思うが、技術者は案外信心深い人が多いぞ」


「え、そうなんですか?」


アテナが驚いた顔をする。正解のようだ。


「神官は嫌い、って人は結構多いがな」


ショウの言葉に「なんですか、それ」とアテナは口を曲げる。


「理論や技術でモノを作るけれど、神頼みの部分もあるってことだよ。特に試験段階では、不具合が起きないでくれって祈りに祈るものさ」


ミーシャは小さく頷いた。わかるところがあるのだろう。


「アテナ。動機が弱いからって気に病む必要は全くない。思いより結果だ。アテナはレイと一緒に傭兵としての仕事をやってのけている。そっちの方が拒絶された俺より十分すごいさ」


「ショウさん……」


首元の銅でできた十字架を持ち、アテナは瞑目し、4人に静寂が落ちる。


戦士が物資を積んだ荷車を引く音や、木材の板や釘を使って窓を塞ぐ音、カフェの席で杖を持った魔導師が忙しそうに魔法書のページをめくる音が聞こえてくる。


決戦の時が近づいているのだと、沈黙の中一同は気の引き締まる思いがした。


馬に大量の物資を運ばせ、大砲を十分に揃えたミスターシャ国防軍との協力作戦。


過去そのほとんどが成功し、<砂の城>を撃退している。


成功を確信し、皆意気揚々と準備に取り掛かっているが、それでも失敗すれば町が滅ぶことになる。


しばし立って、アテナは決心し目をあけた。


「わかりました。もう迷いません。私は、なんとなくでもできることをやります」


その目に迷いはない。


「そうか、ヨシ」


ショウは膝を打つと立ち上がり、地面に置いてあった袋から、一枚の服のようなものを取り出した。


「これを見てくれ」


ボトムまでついたワンピースのような一枚の大きな革を切り抜いた服で、所々に正方形のポケットが規則正しく並べられており、そのポケットの形に合うような何かが入っている。


「これは、なんでしょうか?」


「それを聞く前に、ぱっと見て感想を述べてくれ」


「素敵な防具、ですね」


「アテナにやろう」


「えっ」


ショウに言われるがまま、アテナはそのワンピースのような防具を受け取る。


「うおっ、ちょっと重いですね」


「法衣の上からで良いから着てみてくれ」


「は、はい…」


上から被るようにアテナは防具を来た。


すると、ショウはアテナの身体目掛けてパンチを繰り出した


「ひっ…痛っ……て……いたくない?」


「だろ? 革の上に鉄のプレートタイルを敷き詰めているんだ。鎖かたびらよりも防御力は高い。重くはなるけれど、動くのには支障は無いはずだ」


「ええ、そうですね」とアテナは動いてみる。


「確かに、何も支障はないです」


「防御力、機動力供に優秀、水や砂にも強い。そして何より、整備性がイイ……」


とショウは笑みを浮かべてガッツポーズをした。


「あんまりかっこよくないのが、流行らない理由よね」


「そ、そうだな……」


ミーシャに話の腰を折られたことを表すかのように、ショウは腰を折って見せた。


「それでどうだ? アテナ、気に入ってくれたなら受け取って貰えると嬉しい……んだが」


「はい。いただきます。祈り手(プレイヤー)に合った装備だと思います。整備性が良いってことは、戦う皆さんをもっと助けることができるということですから」


「よくわかっているじゃないか。でも、無理はしないでな」


「はい。ですが、戦いが終わればショウさんに返そうと思います」


「別にいいよ。お金とかより、その防具が十分に役立ったって実績が欲しいし」


明日は決戦の日


計画は順調に進んでいる、あとは各々決められた役割を果たすだけ。


しかしカースは、ショウの様子を本人に気づかれないようじっと疑いの眼差しで見つめていた。


何かあるかも と彼の中にある警告機関が、警鐘を鳴らすか迷っていた。

Tips 整備性

装備において、ショウが重視するパラメータの1つ。

整備性がいいことは、継戦力の上昇に繋がる。

誰でも、短時間で、簡単に、装備を修理することができるからだ。


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