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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 12 作戦を確認せよ! ①

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Twitter @Imori_Saito

<ドットルトの町 カフェ・(スワンプ)>


ドットルトの町の人々による砂の城討伐作戦がいよいよ明日に迫るこの日。


のんびりと照り付ける太陽とは裏腹に、町の中は喧騒に包まれていた。


その喧騒にはショウ、ミーシャ、カースも含まれている。


三人はミーシャ推薦の、カフェ・(スワンプ)で明日についての最終確認を行っていた。


「ん~ 甘い、甘いわ!」


ミーシャは落ちそうな頬を押さえながら、ホットケーキをパクパクと食べている。


彼女が食べているのはただのホットケーキではない。


甘さを極限まで追求したカフェ・(スワンプ)の裏メニューであるホットケーキ・(スワンプ)である。


生地を押せば飴色のシロップがあふれ出るほど漬け込んでおり、さらにそれを粘土の高い糖分が濃縮された水あめにつけて食べるのだ。


「ミーシャ女史、やりますネ。(スワンプ)の裏メニューは現地のあっしらでも頼むのをためらいますヨ」


「甘いものは別腹っていうでしょう、ショウもどう?」


「いいや、俺は…」


ショウは一口食べれば身体中の粘膜が持っていかれそうなケーキを手を振って遠慮した。


「ああ、みなさん」


「おお、来たな」


アテナが姿を現した。


レイを助ける為のパーティーにはアテナも含まれている。


「ギルドの様子の方は順調か?」


「はい。回復職はいくらいても足りないですから」


「そうか、大変だな。じゃあ、座ってくれ」


ショウは他のテーブルから椅子を持って来て進めると、アテナの分の飲み物をウエイターに頼んだ。


「このらくが…アートはなんですか?」


アテナがテーブルに置いてあった紙束を見て聞いた。


「ま、魔装回路と言ってな…魔装具の中身の回路図だよ」


確かに、知らない人から見れば線をぐちゃぐちゃに引いた何かに見える。


ショウは自分のコーヒーを飲み干すと、明日の方針について話し始めた。


「明日の総力戦においての俺たちのミッションは、レイを生き残らせることだ。簡単そうに見えるが難しい。行くのを止めろと言っても、レイは必ず魔物と戦いに出るだろう」


「確かにレイさん、いつになるやる気満々でしたね」


と、アテナは言った。迫りくる魔物達の闇の気配を、レイは本能的に感じ取っているのだろうとショウは思った。


「あれは理が通じる相手じゃねぇですからネ。一応毒ナイフやデバフナイフで止める事はできやすが」


「それはダメだ。レイの気力なら、その毒を抱え込んだまま出陣するかもしれない。毒で弱ったレイなら、《砂人形》でも仕留められる」


「です、ネ」


とカースは頷いた。レイの異様なまでの猪突猛進ぶりは彼も理解していた。


「だから、この魔法剣でレイさんを強化しようって話なんですか?」


「そういうことになる。この魔法剣ならレイの力を実力以上に引き上げることができる。そうすれば生き残る確率もぐっと上がるだろう」


「そんな魔法剣があるとは初耳ですネ。本当にそんなものあるんですかイ?」


カースが顎を撫でながら疑問を口にした。


「カースの疑問は正しい。魔法剣はあくまで自身の魔力の変換機に過ぎないから、使う本人の実力以上の力を引き出すことはできないのが普通だ」


ショウは続けた。


「でも、この魔法剣、亡者の剣ならそれができるんだ」


「妙に信じますネ……何百年の昔の人のことをそこまで信じることができると?」


「理論上はな」


ショウは苦悶した表情で答えた。


「試した事もないのに、ですカ?」


「………ああ。この魔法剣の原案を造ったドーラスさんは、魔装具の祖、神様みたいなもんだ」


「勝算の低い賭けとは、いつものダンナらしくないですネ」


小心者という含みのある言葉だ。


「まあな。今のところ製作は問題なく進んでいるが、材料の都合上、一つしか作れない。だから信じるしかない、というのが正しい……」


と、ショウは唇を閉じ、真剣な表情でカースを見据えた。


カースは細い目を更に細め、ショウを凝視する。


今まで会話に加わらなかったミーシャも、この緊張感の中ではホットケーキを食べる手を止め、食器を置かざるを得ない。


「まあ、シロウトにはよくわかりませんデサ。やることをやりましょうかネ。頑張ってくだせエ」


「ありがとう。レイが死なないよう、できる限り時間を稼いでくれ」


「……なかなか無茶な仕事を押し付けますネ」


「すまない」


「安心してくださイ。貰ってる分の仕事はしますゼ」


面倒くさそうな表情を浮かべたカースだったが、そこには少し嬉しそうな表情もかいまみえる。


「そういえばカースさん、レイさんの偵察はしなくても大丈夫なの?」


ミーシャが何かを思い出したような様子でカースに尋ねた。


「ええ、問題ないでス。他の同業者に依頼して任せてあるんでサ」


「え、それって中間搾取って奴じゃないの!」


ミーシャのティーカップがカチャリと音を立てた。


「いえいえ、3人で8時間交代。報酬もほぼ3等分にしてますぜ」


「ほぼ、ねぇ」


ミーシャはジト目をカースに向けて、ショウに視線を移す。


「24時間目を離すなってのがそもそも無茶だしな。目的が達成されてれば文句はないさ」


ショウは特に顔を変えず、ただ腕を組んで答えた。


「それだから中間搾取の闇は晴れないのよ…」


まったく、まったくといった雰囲気でミーシャはティーカップに口をつける。


「ん? どうしたの? アテナ」


その三人のコントとも取れる作戦会議の様子を、アテナは一歩引いたように悲しげに眺めていた。


「みなさん、すごいです」


下を見つめたままアテナは言った。


「私はただここの教会、孤児院で育って、なんとなく修行をして<祈り手>になって、孤児院に恩返しをするために、なんとなく、傭兵になった。私はただ、あんな危ない戦い方をしているレイさんを見て、ちょっと気になっただけなんです。

これまで、なんとなく、ただ気になって、気が付いたらここにいるだけ……それに対して、皆さんの顔がイキイキしていて羨ましい限りです。ドットルトは、私の故郷なのに……」


「そんな深く考えなくていいの」


隣にいたミーシャがにっと笑ってアテナの肩に手を置いた。


「私だって働くのは嫌。本当なら本と絵を一日中過ごしたいわ。でも、私にしかできないから仕方なくやっているだけ」


ミーシャは続けた。


「深い理由もなくただやってみたい。それでもいいじゃない。立派な動機よ」


「あっしも、お金が貰えるというだけの理由ですぜ」


「何故、そこまでしてお金を? カースさんは確かドットルトギルドの中では、稼ぎランキングがいつも上位だった」


アテナの問いかけに、カースは「そうですね」と腕を組んで答える。


「家族の為。ですかね」


「家族?」とミーシャは尋ねた。


「ええ、あっしには妻と息子がおります。息子はもう2歳で」


「「「え、ええええええええ!!!!!?????」」」


カースが妻子持ちであるという事実に、ショウとミーシャ、アテナの三人は目を見開き大声で驚いた。


「そんな驚くことですかい」


カースは恥ずかしさを隠すかのようにコーヒーカップに口をつける。そのビジュアルにしては考えられない。


「とにかくまあ、子育てにはカネがかかるんデ」


人は見た目で判断できないと、改めて思う三人であった。


「ショウはどうなの?」


最後はショウだ。


「そうだな、何でだろうな」


ショウは空を見上げ、そして手を顎に添えて考える。

Tips カースの使うナイフ

カースの使う投げナイフには、即効性の毒が塗られた普通の毒ナイフもあり、また、魔装回路が仕込まれたナイフもある。カースはそれに自身の氷魔法を込め、デバフナイフとして活用している。


ショウが造るナイフは、歪みがなく、綺麗にまっすぐ飛んでいく。

何より低価格なので、カースはショウにどんどん造って欲しいとせがんでいる、らしい。

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