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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 7 ミーシャ不調の原因を追え! ②

話を切り上げ、キャンバスを手に取って再び砂の城を観察する。


「あれ……」


砂の城はどこかと双眼鏡を上下左右に動かしていたとき、砂煙が見えた。


ある方向に一定に進んでおり、今は無風。自然にできたものとは考えにくい。


砂漠に立つ砂煙を発見、よく見ると商業旗を発見。あれは商人のキャラバンだ。大慌てで砂漠の中を走っている。


追いかけているのだわ。後ろに何かいる。あれは、盛り上がった砂で良く見えないわ。


脚はなく、砂の上を滑るように進んでいる。腕だけがあって、砂で作られた鎧や剣、弓を持っている。


間違いない。砂そのものが魔物。《砂人形》だわ。


商人キャラバンが《砂人形》に追われている。あたりに他の傭兵達はいない。おそらく、私たちが一番近い。


―助けなきゃ


岩から飛び降りようとしたとき、砂漠の異変と私の感情の変化に気付いた女性氷魔導師が異変を察知し、制止する。


「待ってください! 今行くのは危険よ!」


「見過ごせないわ!」


「アイツは護衛も付けていなかったんです。自業自得ですよ!」


やはり二人は、自己責任を信条とする傭兵ね。


死後の保障が一切ない彼女達は何よりもまず自分の命が最優先。彼女達にとってあの承認を見捨てるのは正しい選択なのでしょう。


でも、その選択は私にとって正しい選択なわけないじゃない!


だって私は、物語から正義を教わったから!


「もう!」と私は二人を振り切り、ぴょんと高台から砂漠へと飛び降りる。


私は風属性を習熟した魔導師でもある。空を飛ぶほどではないが、着地の衝撃を消すことはできる。


後ろを振り返れば、護衛の二人が大慌てで坂を下っているのが見えた。


私は「戦闘手当をつけるわよ!」と叫び、風魔法を足裏に込め、飛ぶようにして砂地を駆ける。


商人の荷車を引いていた《三つコブラクダ》は走り疲れたのかすっかりダウン、砂人形が商人と思われる人に迫っていた。


ロンググローブの指先から、10本の魔生糸が出る。


その魔生糸を空中で編み込んでいき、複雑なしかし規則性のある立体的な模様を形成していく。


編んだ魔生糸が風属性の色である緑色に発光する。


発動(アクティー)!」


出した魔生糸が弾け飛んだ時、魔法が発動した。


小竜巻こたつまき


竜巻たつまき》よりも威力が落ちる分、制御に優れる。


その砂交じりの小さな竜巻は、うねる軌道で商人に迫ろうとしていた剣を持つ《砂人形》を吹き飛ばした。


これは、保有技術である「三次元魔装回路製作技術」を利用した独特の魔法発動術。魔導師が魔法を発動する時に起こす体内の魔力の流れを、魔装回路で表現するもの。


魔装具の魔法発動構造と同じではあるけれど、三次元で組める分、魔装具よりも高度な魔法を扱えるわ。


他の《砂人形》が私の存在に気付き、私に矛先を変える。


その時、後ろから追いかけてきた二人の傭兵が姿を現した。


氷の礫(シャード・アイス)


女性氷魔導師が小さな氷の礫を無数に発射。


その礫は砂漠の暑さで水となり、《砂人形》の胸、お腹などをそれぞれ濡らしていく。


「それええええ!!」


濡れて茶色に変色した部分を、女純戦士が的確に叩き斬った。


本来ならば斬っても斬っても地中の砂を吸い再生する《砂人形》がはじけるように消えていく。


核だわ。あの女性氷魔導師が《砂人形》の核となる部分を探し、印をつけているのね。


ドットルト砂漠に生息する魔物の対処に慣れている。やっぱり現地の人を雇って良かったわね。


「あっ」


最後の《砂人形》を女純戦士が叩き切ったとき、《砂人形》は最期に砂の矢を放った。


矢の先は、貫頭衣かんとういを纏ったあの人……商人に向かっている。


私を守ることを最優先にして動いている二人の傭兵は、私を見た。


そのせいで、商人への反応が一歩遅れてしまう結果なる。


(間に合って!)


私は足の裏に全力の風魔法を込めて、飛んだ。


氷の壁(シールド・アイス)


女性氷魔導士の掌から冷気が放たれ、氷の壁を作り始める。


だが、間に合わない。矢は商人のすぐそこまで迫っていた。


カツン、と木が打たれるような乾いた音がして、砂の矢は商人の額に届く前に私の伸ばした左腕にぶつかった。


矢は軌道が反れるも、勢い余った私は砂中を転がり、途中、白い岩に右腕がぶつかった。


もう一度、乾いた音が鳴り、パキッ、と別の音が鳴る。


マズいと思った私は、二人の傭兵が駆け寄る前に、魔生糸を左腕から5本出し、砂の矢が当たって敗れたロンググローブの部分を縫い直した。


左腕の動きが鈍いわね、右腕に至っては…


「大丈夫? 私が応急手当を」


「もう大丈夫よ」


「しかし……」


「大丈夫だから」


私は女性氷魔導師の申し出を頑なに拒否した。


鈍くなった左腕を回し、血が出ていない事を見せる。彼女は怪訝な顔をしながらも私に回復薬の瓶をくれた。


女純戦士は私の異変に全く気付くことなく、砂を払ってくれる。


よかった。二人にはばれていないようね。


その後、すぐにドットルトの町に帰って、報酬をその場で渡し、すぐに帰ったわ。


詳細は、心ここにあらずという感じだったのであまり覚えていない。とにかく腕の事がバレないように振舞うことで精いっぱいだった。


Tips 砂人形

ドットルト砂漠に生息する、砂でできた魔物。

1体1体は弱いが。砂のフィールドからどこからともなく群れで現れ、剣や弓などいろいろな武器を持つのが厄介なところだ。

その出現は、魔導師では感知しにくく、研究が行われている。

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