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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 7 ミーシャ不調の原因を追え! ①

<ドットルト砂漠 外周部にて>


遮るものの無い空で日光がこれでもかと照り付けている。


砂漠に生えた白い岩の数々が光を反射し、慣れぬ者は直視できないほどの明るい空間を作り出すドットルト砂漠。


今、私はそのドットルト砂漠名物である白い岩によじ登り、画題をじっと観察していた。


「あれが…《砂の城》…」


双眼鏡を覗く私は、《砂の城》の予想以上の造形美に、思わず口がこぼれてしまう。


お久しぶりです。私はミーシャ。絵師見習いという皮を被ってニートをしています。


今私はドットルト砂漠に乗り込んで、画題である《砂の城》観察に来ているわ。


ドットルトという地域には《砂の城》が襲来するシーズンがやってきたようで、今日訪れたドットルトの町はもちろん、中心街のミスターシャも緊張を高めつつある状態ね。


本来ならば忌み嫌われるはずの《砂の城》。


けれど、あの城の造形には人を惹きつける何かがあるわ。不謹慎かもしれないけれどね。


人が造った城がベースとなっているけれど、禍々しい形の角があり、平べったい牛のような頭蓋骨もある。


魔族の遺骨であろう形をした造形物がシンボルとして、所々に飾られている。


魔物文化を専門にしている学者は是非とも至近距離で拝みたいでしょう。私も、もっと至近距離で観察して、想像力を膨らませたい。


でも、それは叶わないわ。


だってあれは魔物を呼び寄せる魔界へと繋がるゲートみたいなものだもの。


近づけば魔物が出陣し、《砂の城》の防衛にあたる。そう考えると、機能まで城そのものって感じがするわね。

それに、戦力温存のため、現在実力者しか《砂の城》がある中心部には行けないのよ。


あと二週間もしない内に、《砂の城》がどんどん建立され、魔物保有領土から強い魔物が雪崩れ込んでくるでしょう。


《砂の城》第一号が建立されてから、周辺の魔物も動きが活発化し始めているらしいわ。まるで援軍がやってきて魔物達が歓喜しているみたい。


それ故、私のような戦闘素人は《砂の城》に近づくことができないから、こうやって高い岩場に登り、サングラス機能を備えた双眼鏡で観察するしかないの。


《砂の城》観察のために買ったんだけれど、高かったのよ。これ


「こんな楽な仕事、めったにないぜ。ぼーっとしてるだけで金が貰えるんだからな」


「私は結構な重労働ですが」


「ははは、そうは見えないけれどな」


と女純戦士は「はい、魔力回復薬」と女性氷魔導師に渡す。


二人は私が雇った護衛でドットルト出身。しかも幼馴染であるのでからセットで雇わない理由はない。


性格も女純戦士は性格に荒い所があり、女性氷魔導師は冷静沈着。わかりやすいテンプレートをそのまま貼り付けたような性格で、このまま二人を観察し続けていれば、イロイロ捗る小説が一本描けるかもしれないわね。


今はそちらのジャンルのモチベーションは少ないけれど。


たらふくの水を護衛の女純戦士に運ばせ、大きな日傘を立て、女性氷魔導師を据え熱中症対策は万全。


女性氷魔導師が快適な空間を作り出してくれたお陰で、岩から立ち込める熱波や、熱く乾燥した空気も無効化。


砂漠のど真ん中とは思えない涼しい環境で、じっと《砂の城》を見ながら私はキャンバスに構図や輪郭を描いていく。


色を付けるのは帰ってから。画家達と同じように脳裏に光景をしっかりと焼きつけなくちゃ。


「《砂の城》、あれ本当に魔物が作ったの?」


私は雇った女性氷魔導師に聞いた。芸術には対象物の知識も必要よ。


「ええ、地面を盛り上げるようにして建立するのよ」


手を丸めその間に氷のレンズを張った疑似望遠鏡で覗いている。減光機能はなさそうだけれど、大丈夫かしら。


本で読んだ通りだと、確か地中で特殊な粘液を使って砂を固め、造形し。完成したら盛り上げている。だったわね。


「それだけであんなお城が建てられるなんて……あとで魔物が調整とかしないのかしら」


彫刻でも絵画でも、つくるものはなんでも一発で決めきるというのは相当勇気が要るわ。


完成しても「やっぱこうすればよかったんじゃない?」という思念が湧いて、呪縛となってその他の行動を阻害しちゃうものなのよ。


その呪縛から解放されるためには、自分で自信が持てるまで能力を高めるか、納期に救ってもらうしかない。


となると、《砂の城》を作りし魔物は相当な芸術センスの持ち主?


「一度建立されたらそのまま。損傷したら直すよりも、新たな城を建てるのが趣味みたいよ」


「えらく文化的ね。魔族じゃないの?」


「かもしれないわね。魔族特有の濃い闇の魔力が感じられないから魔物に分類しているけれど、地中にいてわからないってだけ、かもしれないから」


200年経った今まで、幾度となく《砂の城》は襲来してきたが、未だ建築家の姿を拝んだことはないという。


「といっても、前の《砂の城》の時には私たちはまだ乳吸ってた歳だったから、わからねーけどな、ははは」


女純戦士があぐらをかいて座り、ニタニタ笑う。


「……言い方が下品よ」


「いーじゃねえか、女だけなんだからさ」


「ミーシャさんごめんなさい、彼女、昔からずっとこうで」


「いーのいーの、そのまま続けて頂戴」


「え?」


暖かすぎる視線に、女性氷魔導師は戸惑ってしまったのでしょう。


「こっちの話よ。観察に戻りましょう」


Tips 氷魔導師

氷魔導師が傭兵パーティーに1人いると、砂漠攻略がサクサク進む。氷魔導師の周りを避暑地にすることができるし、氷補助魔法は身体能力を強化できるだけでなく、一定時間暑さと寒さを無効化することができるからだ。

このように、補助魔法でも属性によって付与される効果が異なる。

風属性ならばスピードが著しくアップするし、土属性ならば防御力が飛躍的に上昇する。

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