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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 6 レイの修行生活を正せ! ②

お読みいただき、まことにありがとうございます。

評価、感想などお待ちしております!

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Twitter @Imori_Saito

次の日、預けていた装備が戻ってきたレイは魔物討伐の依頼を達成するべく、ドットルト砂漠に向かう。


(剣がこれまでとは比べ物にならないほどよく斬れる。身体も軽い。これは、装備を預けていたからか?)


戦いの最中、身体の動きが昨日と比べ全く違うことにレイは驚いていた。


まずは切れ味。砂人形を斬るにはノコギリのように押したり引いたりする必要があったのが、引くだけで両断できる。さらには、刺した剣を抜くのも早く、砂人形からの反撃を貰うリスクがぐっと下がる。


そして、身軽になり敵の攻撃がよけやすくなることもレイ感じていた。


防具同士の擦れや干渉によって動きが制限されていたのが全くない。錆が取れ、無駄な部分が削られている。


迫りくる砂人形を何とか倒し、残り1体となった。


(試してみる、か)


レイは朝に貰った新しい依頼を思い出す。


昨日と同じ、厳封付きの指名依頼。


中身は「砂人形を討伐せよ」と掲示板によく貼られている普通の依頼。


掲示板に張り出されている砂人形討伐依頼と違う点は、報酬が高いことと、サブクエストに「砂人形の核を撃とう」と書かれてあることだ。


  《砂人形》にはエネルギーが集約されている核がある。

   そこを破壊すれば楽に倒すことができるぞ

   感知を使って位置を探り当てよう。


《砂人形》は戦闘によって欠損した部分を地中の砂を用いて再生する能力を持ち、自身の魔力が枯渇するか、魔力が集中する核を破壊されるまで再生し続ける。


レイは今まで核の存在を知らず、砂人形が活動を停止し霧散するまで何度も破壊を繰り返していた。


魔力が枯渇するまで破壊を続ければ砂人形は倒せる。が、核の位置を探し出し的確に撃てば、砂人形を楽に一撃で倒す事ができ楽であろう。


レイは剣を縦に構え、砂人形と対峙する。機械仕掛けの小盾メカニカルバックラーには「一人でやらせてくれ」と停止を命じた。


人を模倣したとされる砂人形は持つ武器によって個性がある。


あの砂人形は盾を持っており、俊敏性は他の個体よりも低い。のろのろとレイに近づいている。


呼吸を整え、集中。


魔力の流れを読み取る。


ここは砂漠。生命の気配が少なく、魔力感知に邪魔になるものは少ない。


(見えた……)


砂人形の核となる、闇となる部分をレイは探し当てた。


闇を感じ取った瞬間、レイの脳内に憎しみの泡が微かに吹き出す。


場所は砂人形の頭部。レイは狙いを定め、腰を落とし一気に駆け、一閃。


ジャリ、という音とともに。砂人形の頭部は一刀両断され、胴体部分は崩れ落ちた。


「本当だ……たった一撃で倒せる」


今までレイは何度も何度も剣を浴びせ、いくらか反撃をもらいながらもようやく砂人形を討伐していた。

それがたった一撃で倒せるようになった。大きな進歩である。


レイは成長を確かに感じ、装備のことも合わせ、自分を指名し依頼を投げてくれた名前もわからぬ人に感謝の念を抱いた。


しかし、課題はあるとレイは感じていた。


それは目の前の敵へ意識を集中しなければ核を探し出し、正確に切ることができないということだ。


砂人形は集団が基本。先の戦いは周りの砂人形を機械仕掛けの小盾メカニカルバックラーと連携して苦労して倒し、一対一に持ち込めたからできたものの、集団で核を撃とうとすれば目の前の敵に意識を捕らわれ、後方から重い一撃を喰らうであろう。


完全に攻略したとは言えない。更なる魔術と剣術の基礎の底上げが必要だ。


「? あの光っているのは…」


倒した砂人形の頭部が霧となって消えた場所から、煌めく何かを見つけた。


取り出してみると、それはナイフであった。


刀身が木目状の模様をしており、模様が虹色をしている。


「綺麗だ」と感想をこぼすも、レイは廃品回収の依頼は受けていなかったので、持ち帰ることはせず、その場に置きなおして立ち去った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


レイが砂人形の依頼を達成した数日後の夕方。


バナナ装備店での仕事を終えたショウは宿の部屋にて、ペンを片手に次にレイに送る依頼を考えていた。


「さてと、次はどんな依頼を送ろうかな…」


レイに指名で依頼をしていたのはショウである。


装備の廃棄品から作るダマスカスナイフを、日々働く武器屋が手数料無しで置いてくれるようになったおかげで資金に余裕が出た。


それによって、レイに相場以上の報酬を払えるようになり、レイを間接的に指導、鍛えることに成功している。


特に、生活面は改善していた。


<たらふく食べよ>


という依頼で今まで1秒でも修行をしたいと碌な食べ物を食べなかったレイが、ちゃんと食べるようになったし、


<寝よ>


という依頼で睡眠もきちんと取るようになった。


嬉しいことに食事や睡眠が自分にとって良い結果をもたらすとわかると、レイはすぐに習慣化している。


記憶が無くなっても、言われたことを行い、続けるという教えは生きていた。


しかし、良いことづくめと思いきや、頭を悩ませる部分もある。


厳封付きの指名依頼だからといって、レイはなんでも引き受けるわけではない。


パーティーを組もうという依頼は例え報酬金を出していてもその場で断り、燃やしたという。


(わかっているのは、独りのまま強くなる結果になる依頼ならば快く引き受けること。俺としては、やはりパーティー組ませてあげたい。そのためには…うーん)


首をフクロウのように傾けても、良いアイデアは捻り出ない。


背伸びをしようと椅子から立ち、何となく後方を見たときだった。


「うわあああああ!」


後方に斥候として雇ったカースがすぐ後ろに気配無く立っており、ショウは驚いた声をあげて椅子からすっころんだ。


「よっと」


ショウの尾てい骨と固い木の床がかた~いキスをする直前、カースが膝を曲げショウを抱える。


ショウは一瞬固まるとカースの顔を見て、深いため息をついた。


「なんだカースか……驚かせないでくれよ」


「定期連絡をと思いまして、ネ」


「いったどこから入ってきたんだ?」


「窓からデス」


小さな窓が開いている。とても大人一人が入れそうなサイズではない。


「どうやって近づいた」


「それはまあ、普通に」


「ウソだろ……」


ショウの住む宿は木造で古く、歩くだけでもキィキィと床がなり、今にも床が抜けそうだと恐怖するくらいだ。


「音を立てないで歩くのは斥候の基本で、サ。レイサン、砂人形の集団戦にもだんだんと対応できるようになっていますヨ」


カースにはレイが危ない時はナイフを投げ援護を頼んでいる。


生き物が少ない砂漠地帯で、レイに気付かれず援護をやってのけるのは、流石斥候と言うべきだろう。


「特に装備を預けてからレイサンの動きは特によくなっています」


「そりゃそうだろう。むしろ、今まで廃棄同然の武具・防具でよく戦えていたな」


ショウがレイの装備を見た時、肝が冷える思いがしたのをよく覚えている。


レイがこんな装備で生き残れたのは、幸運であったのと、同伴しているメカバックのおかげであろうと、ショウはメカバックに心の中で感謝をした。


「核への命中率は?」


「5割程度、デスね。残りは私が片づけています」


と、カースはダマスカスナイフを取り出した。


虹色に輝く刀身の模様は、ランプの弱い光であっても美しく光っている。


「なかなか良いナイフです。狙った場所に真っ直ぐ飛ぶ。こんなに安くでいいんですかい?」


「材料は廃棄された装備で、道具もバナナ装備店が貸してくれる。原価は俺の人件費くらいだから利益はある」


「なら、もう10本ほど頼みましょうか、ネ」


「無理だ。手が回らん」


カースはケッケッケと笑うと、使用済みのダマスカスナイフ数本と銀貨を置いた。


「そういえば……レイさん、オンナを全く知らねえと思ってましたが、意外と紳士なんですネェ」


とカースが思い出したように言った。


「紳士?」


「エエ、盾を操ってオンナに椅子を勧めたりしてますカラ」


「あ、ああ……」


と、ショウは溶けるように机に脱力した。


女性に椅子を勧めているのは、レイではなく、メカバックの意志だからだ。


どうやら、メカバックは"柔らかいもの"が好きらしく、柔らかいものを見つけるとすり寄っていく。


それがどういった理由で行われているかはショウにもわからない。


が、良くも悪くも無機物故か、見境が無く"様々なもの"に寄っていく。それが、ふかふかの羽毛布団やら、焼き立てのパンとからなイイのだが、女性の柔らかい部分に行ってしまうと波乱が起きたりする。


その責任は、所有者へと向いてしまう。


(ミスターシャではシルクやガーネットに行くことはなかったから、直ったのかと思ってたけれどな……シルクは質素倹約な生活でやせ型だったし)


シルクは質素倹約な生活を送り余計な部分をそぎ落としていたせいで、ガーネットは自分に対する敵意がメカバックに伝わっていたのだろうかとショウは推測する。


(レイにセクハラ男という烙印が押される前に、手を打たなければいけない)


そう意思を固めるも、今までレイの生死を分かつような緊張する行動をしてきただけに、今回の報告には脱力せざるを得ない。


「どうかしたのですカ?」


「いや……ちょっと休憩、かな」


「そうですカ……」


「では、マタ」とカースは影に消える。


その神出鬼没ぶりにショウはわが目を疑い、そして、良い斥候を雇ったと思った。


今のところは順調。カースと機械仕掛けの小盾メカニカルバックラーのバックアップで、レイは成長できている。


この調子なら亡者の剣の製作に取り掛かる余裕もできる。


ショウはこれ以上問題が起こらないでくれと強く願う。


だが、残念ながら問題というのは不意に訪れるもの。


ドンドン、とドアから鈍い音がする。手でノックするような音ではない。


「いったい何だ」とショウはドアを開ける。


「どうしよう、ショウ…腕が…」


そこには顔面を真っ青にしたミーシャが立っていた。


Tips 機械仕掛けの小盾

ショウの相棒、今は蛮勇極めるレイを危険から守っている。

やわらかいものが好き。

小盾曰く「ショウやミーシャは固い」とのこと。

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