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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 4 ミーシャを仲間に引き込め!①

お読みいただき、まことにありがとうございます。

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Twitter @Imori_Saito

「ショウ、来たわよ」


海を思わせる綺麗で滑らかな青い髪と、エメラルドのような瞳。間違いない。


ミーシャ・パスカル・フラウラ 彼女はショウの上司であったポトフの娘。


そして、ショウと同じ魔装具技術者である。


ショウは目を疑った。ミスターシャにいるはずのミーシャが突如ドットルトに現れたからだ。


衣服は青と白を基調とした装飾の無い長いスカート、長袖のワンピースだ。行動用の服だろうか。


ミーシャは「疲れた」とバッグをショウのベッドの上に投げ、グリーンカーキの靴を脱いでベッドに座り、腕を天井に突き上げ、身体を伸ばす。


しわのついた袖が落ち、両腕の肘を覆うほど長い白ロンググローブが露わになる。


まるで自分の家かと思うくらいのくつろぎぶり。間違いない。ミーシャだ。


「どうしてここに?」


一睡しても、ショウの気分は晴れてはおらず、帰って欲しいという感情しかショウに湧かなかった。


だが、ミーシャには全く関係ない事で当たり散らしてはなるまいと、心に鞭を打ち必死で平静を装う。


「ドットルト砂漠の風景画を描きたかったのよ」


絵を描く事は、彼女の趣味の一つだ。


「一人で来たのか?」


「ええ、そうよ。お父さんは護衛を付けようとしていたのだけれど、モタモタしていたし、ちょうどいつも牛乳をくれる婦人さんが西に戻るって言うから荷台に乗せてもらっちゃったわ。下ろしてもらってからは歩いてね」


「まじかよ…」


ミスターシャ国の領内と言えど、ここは西の辺境砂漠町。いくら比較的治安の良い国とはいえ、移動中に魔物や山賊が出ないとも限らない。その中を女性が一人で行くなど、ポトフが聞いたら卒倒するであろう。


しかし、ミーシャがふらっと思い付きで遠くに行くのはいつものことであり、本人も慣れていることではある。衣服はその土地で暮らす普通の人々と合わせ目立たないようにしているし、靴も実用性重視。


オマケにショウと違い、ミーシャは魔導師でもあるので、護身はできる。


「それで、俺に用があってきたのか?」


「そうよ。実はお父さんからの頼みで、ここに来たの」


「ポトフが?」


「そう、ショウが変な事をしないのかって見張って欲しいってね」


「え、それ言っていいのか」


困惑し眉でハの字を描くショウにミーシャは続ける。


「ええ、良いわよ。だってそれ、表向きの理由なもの」


「表向き?」


「本当の理由はね、「ショウの力になってあげて欲しい」ってお父さんが言っていたからよ。ショウは今困っているだろうからって」


ショウの心にある、鉛のような憑き物が一つ落ちた気がした。


「そうだった、のか…」


ポトフは、ポトフなりのやりかたでショウの味方でいてくれる。ショウのやりたい事を応援してくれていたのだ。


ショウは自分の早計さを悔い、心の中でポトフに感謝した。


「私が最後に会った時は、万事上手くいっているという顔をしていたから、半信半疑だったけれど、会ったら本当に困った顔しているから驚いちゃった。それで、どうしてそんな困った顔をしているわけ?」


ベッドに座ったミーシャが足を組んでにやりと笑い、ショウに問いかける。


一つ鉛が落ちれば、他の鉛も落としたくなるのは人の常だろうか。


ショウも背もたれの無い椅子に腰掛け、心にずっしりと沈みこんだ残りの鉛を吐き出すかのように、これまでの事を話し始めた。


内勤技術師としてレイ率いるパーティーで働いていた事、ポリュグラスとの戦いに巻き込まれて仲間を失いではぐれてしまった事、そしてようやく見つけられ依頼主であったレイに自分の事を忘れられ、拒絶されてしまった事。


「ふーん、具体的にはなんではぐれちゃったわけ?」


「ミスターシャの森で大きな爆発があっただろ?」


「四魔神ポリュグラスがやって来たって話? 衝撃的なニュースだったわ。倒せたから良かったものの」


「あの爆発に運悪く俺たちも巻き込まれちゃってな。気がついたらレイがいなくてこのドットルトまで来たんだ」


ミーシャに話していないこともある。ショウの勤め先に、ゴルード、シルク、ガーネットという三人の英雄たちがいたことや、レイは王族で光の戦士であること、そして、ショウは棺に間違って入れられてしまうレベルまで死にかけたことだ。


国内の情報封鎖のおかげか、ミーシャはショウの言葉に何も疑問を持たなかった。


「うーん、正直に言っていいかしら ?」


腕を組み考え込むミーシャが言った「どうしてレイさんの元に行ってあげないの?」


「いや、それは拒絶されてしまって話しただろう」


「一回くらい拒絶されたくらいで何心折っているのよ。死なせたくない人なんでしょ?」


「それは、そうなんだが…その…向こうが嫌がる事をしたくない、というか、なんというか…」


釘を打たれたようにショウは仰け反って言った


「はぁ ショウってば変な所で、か弱いんだから」


見た目はかよわい女の子であるミーシャに指摘され、ショウは情けなさを覚え縮こまる。


ミーシャはやれやれと首を横に振って大きな嘆息をついた。


「なら、これからどうするつもり? ミスターシャに戻るの?」


「いや、このままドットルトに残る。方法はある、ある、はず…」


「はぁ…要するにまだないって訳ね」


レイは「誰とも組まない」と言っていた、それは傭兵にとって死にに行くと同じ意味。


その常識をレイは知ってもなお行こうとする。


さらに、今は砂の城が現れ、総力戦が行われる時期。魔物が活発化し、レイは一人で向かうだろう。そこに敗北と死が待っているのは、火を見るより明らかだ。


だが、今のショウにレイを助ける事はできない。


亡き3人が託した亡者の剣も開発の目処が立たないし、かつてのように内勤技術士として働こうにもレイ本人が拒絶している。


ドットルト初日早々、八方塞がりとなってしまった。

Tips ミーシャ・フラウラ(17)

彼女は芸術を趣味としている。文学、絵画、造形など。特に、本が好きだ。

しかし、楽器だけはどうも苦手らしい。

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