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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 3 レイとともに行動せよ! ①

Twitter @Imori_Saito

<ドットルトの町 ギルドにて>


― 誰だ、あの人? 身を乗りださんとまでの勢いだったが。


― いえ、私にもさっぱり。指名するために待っているらしいですよ。


ドットルトギルドのギルドマスターと受付嬢達がひそひそとうわさ話をしている。


― 一体誰を?


― レイっていう最近登録した魔法戦士です。


― 魔法戦士で登録したのに、魔法剣を持っていないあの子か。身内なのかな。


― そんな訳ないでしょう、似ている所が一つもないですし、はっ もしや…これは捗りそうな案件?


― 妄想が過ぎますよ~


声量は小さいが、ギルドは今静かなのでショウに聞こえてしまっている。


聞こえてはいたが、ドットルトギルドのギルドマスターと受付嬢達の会話を尻目に、ショウはその古びた紙に書かれた亡者の剣の設計書を憑かれたように読み込む。


「うーん、無理だこれ」


しばらく時間が経った後、ショウは頭を抱え、天を仰いだ。


頭をくしゃくしゃとかき分ける。最後までくまなく目を通してわかったのは、「この設計書の実現が困難である」という事だった。



ものを作る時いくつかの壁にぶち当たる。


まずは経済的な壁。お金がなければ部品や素材は買えないし、もし製品を売るならば黒字になるように努力せねばなるまい。


この壁は、亡者の剣においては存在していない。ショウの場合は亡者の剣の根幹を成す刀身の素材は揃っている。持ち手のガードの部分の素材や、魔法回路を作る為の魔生糸もそこまで高価ではない。なんとかなる。


ショウが悩んでいたのはもう一つの壁、技術的な壁だ。


大きく分けて3つ。


1つ目は「製造環境」亡者の剣を作る為の鍛冶道具が不足している事だ。


魔鋼を柔らかくできる炉も無ければ、鍛える槌も砥石も無い。

幸いドットルトは強めの魔物がいるお陰で、規模が大きい武具防具屋がある。鍛冶場と連結しており、ドットルトには亡者の剣は作れる環境はある。


問題は、ショウがそれを使えるかどうかだ。

鍛冶士という職業は決して裕福な暮らしができる訳ではなく、悪環境で金属を叩き、糊口をしのぎ生活を送る者が多い、いくらかの交渉力と金が必要だ。


また、ドットルトの工具と鍛冶道具をショウの手になじませる必要もある。


2つ目は強度問題だ


ショウが別の紙にペンを走らせ、何やら数式などを書いている。

(何度計算しても同じか。やっぱりな、これじゃあな)

亡者の剣の全体図らしきものが描かれた紙に×印を入れる。そこは魔力応力が集中するだろうと考えられる場所。


レイは市販の魔法剣を破裂させるほどの魔圧を込めることの出来る光の戦士、レイがこの設計図のままの亡者の剣を使えば壊れてしまうのは必至だとショウは考えた。


魔法剣は精密機械。持ち手の部分は別の素材で作る必要があり、ドーラスの指定している材料では確実に壊れる。


素材の選定からやりなおすか、魔力応力集中をうまく分散させるよう機構を新たに考え、図面を引くしかない。設計経験と発想力にすべてを投げ祈る必要がありそうだ。


そして最後かつ最大の3つ目の問題

それは、この刀身の内部までに埋め込まれた魔装回路の製作方法だ。魔鋼に込められた怨念は、魔装回路を通して変換され、使用者の身体に同期する。


魔生糸は離れた糸同士の三次元出来干渉も、魔装具の効果を決定する重要な要素。二次元平面に回路を落とし込む事はできない。


魔生糸は魔力をよく通す事以外は生糸と同じ。鋼など貫ける訳がないし、かといって鋼を熱でやわらかくしても今度は魔生糸が燃える。


(炎系魔装具は魔生糸が空気に触れないように設計されてるいからそれを応用しては?確か本社に風属性を極めた魔導師が真空空間の作成に成功していたから、その室内で熱した鋼で糸を通せば……いや、どうやって作業するんだ。しかも空気無かったら鋼を熱せられない)


アイデアがシャボン玉のように出て無惨に消えていく。


当時のドーラスも、亡者の剣の製作は技術的に困難を極めるとわかっていたのかもしれない。


後世に託すべく、システムを紙だけに起こしたのだ。


(この亡者の剣はすぐに作らなくてはいけないわけじゃない。俺の仕事はレイを守ることだ。まずはレイを探そう)


そう半ば逃げるように思い、気がつけば夕刻、傭兵達も次々と帰還しており、成果を受付嬢などの事務員に報告しあっている。


機械仕掛けの小盾(メカニカルバックラー)からの通信が届いた。それも近い。


ドアのベルが鳴り、一人の青年がギルドへ入る。砂と汗で汚れたるも輝きを保つ金髪にショウの目は大きく見開く。レイだ。


「レイ!」


その名前を呼び、ショウは椅子を戻すのも忘れて走る。その男はショウに振り向き、碧い瞳を向ける。

間違いない、レイだ。


「レイ、良かった。やっと会えたよ」


(よし、レイにも会えた。まずは工具を買い直そう。次に仲間を集めて、そうだな。回復が得意な傭兵を雇って、そして)


あれこれこれからの事を考考えているショウに、当惑した表情を見せるレイは予想外の言葉を放った。


「君は、誰?」


「えっ?」


Tips ドットルトギルド

ミスターシャの街には傭兵ギルド、商業ギルドなどいくつものギルドがある。

ドットルトの町は傭兵ギルド1つしかなく、その傭兵ギルドは魔物討伐以外の仕事も請け負ったりしているので。

ドットルトギルド、と呼ばれている。

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