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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
2章 亡者の剣を製作せよ
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Mission 2 ドットルトの町でレイを探せ!

<ミスターシャ西方 ドットルトの町にて>


ドットルト砂漠はミスターシャの街からずっと西にある大きな砂漠だ。


多くの国に隣接している砂漠であり、かつてミスターシャが周辺の魔物を駆逐した事から、《魔物所有領土における優先権条約》によりミスターシャの国の領土とされている。


そこに隣接しているドットルトの町は国の中心から離れる国境付近に位置しており、砂漠という不毛な土地だからか町の規模は小さい。


立派な壁も無く、木造住宅があちこちにみられる小さな町だ。


小さな町であるが、強い魔物が砂漠に出現するので傭兵の行き来は激しく、他国の商人も商いをしに町へとやってきているので、規模の割には栄えている。


ショウはドットルトの町につくと、ここまで運んでくれた馬車の主に謝礼を払い、目についた二階建ての小さな宿へと向かった。


宿に入るなり、お腹の出た中年女性から「いらっしゃい」と、気さくな声が飛んでくる。


部屋はちょうど二部屋空いていたので、今後必要になるであろうレイの分も合わせて借りた。


鍵を貰い部屋に入ると、すぐ必要な道具を腰のポーチに入れ、外にでる。


(なによりもまず、レイと合流しなければ)


ショウはそう考え、レイがいると考えられる場所、ドットルトのギルドへ向かった。


ミスターシャのレンガで造られたギルドの建物と違って、ドットルトのギルドは古き木造の建物だ。


入れば愁傷を漂わす木の香りが鼻をくすぶる。強い魔物が出現するこの場所では、腕っぷしの良い強き傭兵達が集まり、昼は魔物討伐に、夜になればギルドを酒場として肉と酒の互いに酌み交わすのはミスターシャの街ギルトと変わらない。


時刻は昼すぎ、傭兵達も依頼で出払っており、受付嬢などの事務員がのんびりと仕事をしていた。


「おお、ショウじゃねえか」


ギルドへ入ると、聞き覚えのある声がした。


「お前たちは…」


ドットルトギルドの椅子で、ピップとポールが食事をしていた。


小柄で丸いお喋りピップと細長で無口のポール


この二人と言えば、以前ショウがミスターシャの森で内勤技術者として働いていた時、


ショウを脅し、盗品や遺品である武具・防具などをショウに修理させ、浮利を貪っていたコンビである。


ショウの汚い手口でミスターシャのギルドに捕まって降格処分を受けてからは改心し、


魔族グルドや四魔神ポリュグラスの情報をショウに渡したりした。


「どうしてここに?」


ショウは尋ねた。


「仕事だよ仕事。傭兵としちゃあ降格しちまってな、こうして稼ぎの良いドットルト砂漠に来ているわけだ」


と、ピップは答えた。


「そうか…」


とショウは少し沈鬱とした表情で床に視線を落とす。

ショウ自身、合理的で一番穏便に済んだとはいえ、卑怯な手であったと自責する部分はある。


「そんな顔しないでくれよ。俺たちはお前に感謝してるんだ。あの時俺たちが捕まえたのがギルドじゃなくて国だったら、今頃俺たちは牢獄にいるだろうし」


無口なポールもコクコクと頷いている。


「ショウも仕事できたのか? まあ、今は《砂の城》の時期だし、鍛冶屋も大忙しだろうしな」


「《砂の城》?」


「なんだ、違うのか」


ポールは「コレ」と自分たちの机のすぐ上にある張り紙を指さす。


内容は以下の通りであった。

 

  ドットルト砂漠にて《砂の城》が目撃された。

  普段は見ない強力な魔物も現れた事も確認。

  ミスターシャ国防軍は《砂の城》撃退戦の準備を開始。傭兵達も準備されたし。


「《砂の城》…そうか、もうその時期か」


ショウは《砂の城》に関する知識を思い出す。


ドットルト砂漠は、長年《砂の城》という大型魔物に悩まされており、強い魔物、強い傭兵が集まる原因になっている。


それは文字通り、ただの砂で出来た大きな城。


独りでに建立し、城の門から本来砂漠に生息しない魔物達が現れ、ドットルト砂漠の交通網を次々と破壊し国同士の交易に大きなダメージを与えている。


魔物学者の見解によれば、城の地下と魔物によって支配された部分は繋がっており、城を造り上げている魔物がいるはずだと言われている。


この《砂の城》を最初に撃退したのがミスターシャ国。条約によりドットルト砂漠の領有権を持ち、定期的に現れる《砂の城》をミスターシャの軍とドットルトの街のギルド総出をあげて対処している。


(《砂の城》撃退の為の総力戦が近々行われる、となるとレイも必ず名乗りをあげるはず)


この総力戦は毎回双方大きな被害が出る。到着するのが総力戦前でよかったとショウは胸を撫で下ろした。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


ピップとポールと別れた後、ショウはドットルトの受付嬢へ話しかけた。


「指名で依頼を頼みたいのですが」


「はい、どのような方を?」


太陽に育まれた褐色肌と白銀の髪を邪魔にならないよう結んでいる、ドットルト受付嬢。暑い気候と暇が相まって衣服は少しはだけ豊満な谷間が見えている。


「魔法戦士をやっている、レイという者なのですが」


「レイさん、レイさん…はい。いますよ~」


「本当ですか?」


ビンゴ! と身を乗り出さんとするショウに、ドットルトの受付嬢は冷や汗をかいて、


「で、ですが、彼は昨日登録したばかりの新人です~」


と言った。のんびりとした口調は変わらない。


指名は、難しい問題や事件を確実に達成するために多くのお金を払ってベテランに頼むというもの。


新人を指名するなど、いったいどこの風の吹き回しだろうとドットルトの受付嬢は眉をひそめるのも当然である。


「構わない、それで、どこに?」


「今、ドットルト砂漠の魔物退治に出ておりまして。ええと、砂人形です」


この《砂の城》の発生とともに現れる、《砂人形》。闇の魔力があつまり、動き出した人型の魔物だ。


(レイだけでも倒せそうな弱い魔物だ。メカバックもいるからやられることはまずないだろう)


ショウの機械仕掛けの小盾(メカニカルバックラー)への信頼は、きわめて厚い。


(入れ違いにもなるかもしれないから、ここで待ってメカバックの連絡を待とう)


次の機械仕掛けの小盾(メカニカルバックラー)からの連絡は4時間後だ。


「わかった。待たせてもらおう。もしレイが帰ってきたらあのテーブルに行くよう伝えてくれ」


「は、はい」


ショウは椅子に座ると、レイの帰りを待ちながら亡者の剣の設計書を読み込んだ。


Tips 《魔物所有領土における優先権条約》

元の所有国を問わず、魔物が住む<闇の領域>から奪った領土を自国の領土にして良いというもの。

この条約によって、人の国同士の争いが消え去った。

「国同士が魔物領土を取り合って争いとなるのでは?」と条約が結ばれたとき、誰もが思った。

しかし実際は、魔物に対する侵略戦争は成功率が低く、国同士協力はしないものの、取り合いまでに発展しなかった。

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