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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
1章 魔装技術者―ショウ・アキミネ
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10.盟友の誓い①(ショウが棺に入る23時間前)

お読みいただき、まことにありがとうございます。

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Twitter @Imori_Saito

ここで少し時を戻す。


ポリュグラスとの戦いが始まる前の日の深夜の事だった。


「ショウ、座ってくれ」


「ど、どうしたんだ。一体」


レイが寝たのを確認すると、ゴルードはショウを呼び、木の椅子に座らせた。ガーネットやシルクもいる。


三人の視線がショウに集まり、沈黙が流れる。


(一体今日はなんなんだ?)妙な雰囲気にショウは息を呑んだ。


状況はあの時…そう、最初に会った時と似ている。


しかし、最初に出会った時のあの圧迫面接感ではなく、どこか三人は緊張しているのがショウにもわかった。


(そうだ…そろそろ俺がここに来てから二週間が経つのか)


二週間、それはショウ・アキミネの内勤技術者としての試用期間の終わりを意味していた。


雇用主であるレイ達が、ショウを気に入らなければ、契約はここで終了しショウはパーティーから離れることになる。


ショウは複雑な気持ちであった。


思えば、パーティーに加入したときは歓迎されず、ショウ自身も二週間で辞めようと思っていた。


しかしこの二週間で、別の気持ちが芽生えた。


レイである。ショウは、レイの成長に自分のやりがいを感じていた。


イロイロあったが、レイは着々と成長している。このまま魔法戦士として、立派になるのを見届けたいと思っていた。


ただし、自分がここにいられるかどうかはレイ達次第、実務を執り行っているゴルードたちの裁量なのである。


自分はよくやったつもりでも、相手が「よくやっていない」と言ってしまえば、それまでなのである。


少しの沈黙の後、ゴルードが切り出した。


「ショウ、お前は内勤技術者として本当によくやっている。武器の使用感も格段によくやっているし、なにより飯も上手い」


改まって感謝され、どこかムズ痒く感じたショウは「ど、どうも」と後頭部に手を置き、ヘコヘコしながら返した。


骸骨(ボーン)に襲われた時も、レイをきちんと説教してくれたのもありがたかった。俺たちには、そんな事恐れ多くてできないからな。本当にいい人を雇えたと思っている」


「よ、よしてくれゴルード。俺はそんないい人でも優秀な人でもない」


両手の平を向け、困惑気味に首を振るショウ。


(俺は褒められているのか? そうだ、本で読んだことがある。人に悪い知らせをするときは、前に良い知らせを伝えるか、相手を褒めるかをすると)


面と向かって褒められたことは久しぶりなので、ショウは懐疑的になっていた。


「ショウ、お前はどう思っているかはわからんが、俺たちはお前を仲間だと思っている。ショウがいいのであれば、このまま仕事を続けてほしい」


「あ、ああ、もちろんだ」


半ば流される形で握手を交わし、契約更新。どうやら不安は、杞憂に終わったようだ。


「だから、仲間として話さなくちゃいけない事があるんだ」


ガーネットとシルクの表情が真剣なものへと変わる。本題はここから本題らしいと、ショウは気を引き締めた。


「……それはレイの事、か?」


「ええ、これからお話しするのは、レイ様の事についてです」


まるでおとぎ話を子供に読み聞かせるような温かな口調のシルクが言った。


「ショウ、今から話すことはお前を信頼できる仲間だと思って話す事だ。この事は他言無用で願いたい。無論、お前の上司にもだ」


ゴルードの表情には一人の誇り高き戦士として、このパーティーを支えてきたものとしての覚悟と風格が漂っていた。


その言葉を聞いたショウは暫くの間、腕を組み、沈黙している。


ショウは上司であるポトフに、レイ達の身元を調べるために情報を持ってくるよう頼まれている。


情報を報告しないことは、職務放棄になりえる。


これから聞くことは、派遣されたアルマス社員としてではなく、レイのパーティーの一員として聞かなくてはならない事だ。


ここが境目、決断しなくてはならない。ショウはどうするべきか、じっくりと考えた。三人はショウの返答をゆっくりと待つ。


この日は風もなく、パチパチと焚き火が燃える音だけが聞こえる夜だった。


(よし、決めた)


ショウは組んでいた腕を解き、顔を上げると


「わかった」


と真剣な表情で言った。


ゴルードがガーネットに目をやると、ガーネットは頷いた。ショウの言葉に嘘偽りが無いようだ。


「ありがとう。シルク、俺は語ることは得意じゃない。すまないが、頼む」


シルクは「わかりました」と頷く。


「レイ・ミスターシャ。そのファミリーネームからわかる通り、彼はミスターシャ国の王族の血を引く者。我々は、レイ様を守る護衛として様々な各国からこのミスターシャに派遣されました」


「それは本当なのですか? レイなんて王子は聞いた事が無い」


「そう、でしょうね」


シルクは机の木目の中心に視線を落とした。


「……一体、どういう事なんですか?」


シルクの話を聞いていたゴルードがショウに向き直る。


「レイ様、レイーシャ様は、王宮に疎まれし光の存在なのです」

Tips ミスターシャ王国

東西南北の四方は全て別の国があり、魔物と戦争状態に陥っていない珍しい国。

比較的平和であることを恩恵に、内陸国でありながらも経済をぐんぐん発展させてきた。

最近は、さらなる国の発展のため、魔物から領土を奪い取ろうと画策しているとか……

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