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それでもレンチを回すのは ~凡骨技術者の奮闘譚~  作者: イモリさいとう
1章 魔装技術者―ショウ・アキミネ
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5.主人公失格①(ショウが棺に入る9日前)

お読みいただき、まことにありがとうございます。

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Twitter @Imori_Saito

ガーネットと喧嘩して以来、ショウはレイたちのパーティーから距離を置かれてしまったと感じていた。そしてその感情に引きずられるように、自らも距離を取ってしまった。


彼らから仲直りを切り出されることはなく、ショウ自身も、彼らの素性を探るという嫌われかねない行動をしてしまった罪悪感から、謝罪の言葉を口に出せずにいた。


それでも、内勤技術者としての仕事だけは手を抜かないと、心に誓っていた。


ミスターシャの街に戻った翌日、レイたちが魔物討伐へ出ているあいだ、ショウは黙々と仕事に取り組んでいた。


昼のうちは主に、ゴルードやレイの武具・防具の鍛え直しを行う。槌を振るう鍛冶仕事は騒音が大きく、夜にはできないため、日中に済ませておかなければならないのだ。


炉の煙突から白い煙が立ちのぼり、金床の上ではカーン、カーンという音が響く。ショウの鍛冶の腕は一流とまではいかないが、それでも一店舗構えられるほどの技量はある。


鍛冶と魔装具、両方をある程度こなせる技術者は、本人の自覚があるかは別として、かなり重宝される存在である。


魔法剣のように剣と魔装具を組み合わせる装備を作るには、刀身部分の鍛造を避けては通れない。だが、魔導師出身の魔装具技術者は、頑固な鍛冶職人と折り合いが悪く、力仕事を嫌う者も多い。


結果として、鍛冶もできる魔装具技術者であるショウに依頼が集中する。頼ってくるのはアルマス社内の技術者にとどまらず、他国から訪れる者もいた。


「さっさと鍛冶師と仲直りしてくれ」とぼやきながらも、ショウは依頼を断らない。それは、依頼者たちが誠実に報酬を支払い、敬意をもって仕事を頼んでくるからである。


その日の作業が一段落したころだった。


「お、にいちゃん。こんなところで鍛冶やってたのかい」


ショウの前に現れたのは二人組の男だった。


一人は小柄で丸く太り、無精ひげをたくわえ、オレンジ色の脛当てと胸当てを装備している。もう一人は真逆で、身長が二メートル近くある細身の男。彼は寒色系の青い防具を身に着けていた。


二人ともトサカのような飾りのついたフェイスオープン型の兜を被り、いかにも「俺たちは成果を上げてるぜ」と周囲に誇示するような出で立ちだった。どう見ても純戦士だろう。


「あなたたちは……?」


「俺はピップ。こっちはポール。ミスターシャじゃ名の知れた傭兵コンビよ」


(……聞いたことないな)とショウは内心思った。


「森の中でカンカン音がしてたから来てみたら、まさか鍛冶やってるとはな。なあ、ポール」


ポールは無言でうなずいた。


「それでな、実は俺たちの武器が刃こぼれしちまってよう。頼みたいんだよ」


ピップは背負っていた袋を地面に置いた。金属のぶつかる音と重量感からして、かなりの量だとショウは察した。


無言のまま、ショウは槌を金床に置いた。ちょうどレイとゴルードの武器調整が終わったところで、手は空いている。


「鍛冶屋なら、街中にも何軒かありますが……」


ミスターシャには武器専門の鍛冶屋も、農具を作る野鍛冶も数多く存在しており、今は繁忙期でもない。そこに持ち込めば翌日には仕上がるはずだ。


だがその言葉にピップは眉をひそめ、苛立った表情になった。


「そこまで行くのが面倒なんだよ。見たところ、お前らここでしばらく野営してるんだろ?」


「まあ、そうですけど……」


「余計なことは考えず、やるかやらないかを答えりゃいいんだよ」


ピップは一歩踏み出し、威圧的に言葉をぶつけてきた。


(……つまり金が無いってことか。だから個人でやってる俺に、安く済ませようって魂胆か)


こうした傭兵も、少ないながら存在する。仕事が途絶えると、武具の修理すらまともに出せなくなるのがこの世界の現実だ。


後方のポールは無言のまま、腰の短剣に手をかけている。脅す気満々なのが見え見えだった。


(威圧感があれば、こういう連中にも強く出られるんだけどな)


ショウはどちらかと言えば小柄だ。グリズリーを倒すだけの戦闘力を持っていたとしても、その外見ではなかなか伝わらない。


今はまだ昼前で、ゴルードたちが帰ってくる夕方までには時間がある。助けを呼ぶ時間稼ぎも難しいだろう。


(……どうする)


黙って固まるショウを見て、ピップは勝手に「怯えた」と解釈したのか、にやりと笑って袋を置き、


「ま、頼んだぜ。約束だからな。明日までに仕上げとけよ。金はあとでちゃんと払うからよ」


そう言ってショウの肩を強く叩き、ポールとともにその場を立ち去った。


ショウは彼らを追うこともせず、その場に立ち尽くし、草の生い茂る地面と青い空を交互に見つめていた。


やがて、「よし」と気合を入れるように膝を叩くと、袋から押し付けられた武具を取り出し、使える金属部分だけを赤く燃える炉へと投入していった。


その日の夕方、レイたちが帰ってきたときも、ショウは何食わぬ顔で出迎え、食事の準備をしていた。


この件については、誰にも何も報告しなかった。


ショウには、考えがあった。

Tips 魔装具メーカーアルマス社 ミスターシャ支部

アルマス社ミスターシャ支部にはいくつかの部署が存在する。

軍用魔装具開発部、日用魔装具開発部、そして、生産部だ。

ショウはどの部にも属さず、支社長ポトフの直属として色々な魔装具製作の依頼をこなしている。


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