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FUTURE SEED

作者: ひすいゆめ

次元の高次に強力な存在からアドネル神話、平行次元グラノガード物語に続く物語です。

プロローグ

 遥か上の次元の世界に巨大な力が生まれた。それを仮にイサイアスと呼ぶことにする。それの前世は永久の勇士と呼ばれる存在だった。

 それはすぐに下の次元の絶界の3賢者は匿い、さらに強大な力を抑え込もうとした。

 そこで、しばらくして七海竜王の1柱である徳渦が降りてきた。何者かが大いなる災いの封印を解いて、それを7柱の竜が応戦しているというのだ。

 すぐに賢者の1柱はかつてそれを封印した英雄達、イロアスの居場所を探しに行った。もう1柱はイサイアスと共に助太刀に行くことにした。

 最後の1柱はその次元の中で最も強力な維持を司るドラゴン、絶界の王のシュニの元に向かった。

 

 イサイアスは少年の姿でありながら、その力は大きく全次元でも絶大な力を持つ七海竜王をも退ける存在、歪みの破壊龍の巨大なダークドラゴンのディアボリに立ち向かおうとした。それを賢者メイガスが制する。

 「いくら、お前が強くても奴には勝てない」

 時間を稼ぐしかないというのがメイガスの意見であった。七海竜王の徳渦、利渦、澤渦、潤渦、紹渦、順渦、廣渦は総攻撃を開始した。

 だが、協力攻撃もあっという間にかわされて凄まじいエネルギー攻撃に1柱、また1柱と倒れていった。そこにサポートするようにイサイアスはエネルギーを高めて解放する。次元の壁がガタつくほどにエネルギーが満たされていった。

 「これほどまでとは…」

 メイガスが呟いた。

 すぐに7柱の前に立ち塞がってディアボリを睨んだ。巨大な悪魔は恐怖の咆哮を上げた。

 ディアボリがイサイアスと同等のエネルギー波を放った。それはぶつかり強大な爆発が起こった。破壊龍が瞬時に高く飛んで高濃度の破壊弾が放たれた。イサイアスは7柱の竜王を守る為に逃げることが出来なかった。最大出力で力を手に集めてそれを受け止めた。しかし、徐々に押されていく。次の瞬間に七海竜王の徳渦と利渦が起き上がって立ち向かった。イサイアスの受けている破壊弾を一緒に受けた。押されていたイサイアスはそれを押し返し始めた。

 翼を羽ばたかせるとイサイアス達が弾き飛ばされて破壊弾に巻き込まれて爆発してしまった。

 7柱とイサイアスは爆風の中で光り始めて空中に浮かんだ。真上には天が見えないほどに巨大なドラゴンが見下ろしていた。

 「小僧はともかく他は間に合わなかったか」

 そして、七海竜王は7つの魂が浮かび上がる。

 「我らは再び力を回復して甦るまで小僧の中で眠る。我らの力をその間、存分に使うがいい」

 彼ら7つの光がイサイアスの中に入った。残った体は鱗珠となって7つの玉が飛び散った。

 巨大なドラゴン、絶界王シュニは彼を庇うようにディアボリの前に構えた。その上にいる賢者マゴイが叫ぶ。

 「ディアボリを倒すのは現段階では不可能だ。封印をするぞ」

 シュニがディアボリの回りに光の結界を張る。七海竜王の力でイサイアスは宝珠の結界を放った。さらに自分の力を放って完全にディアボリを捕らえることが出来た。

 そこに最後の賢者ロワがイロアスの1柱、剣士王ラルヴァダードを連れて戻ってきた。天から舞い降りたラルヴァダードは神殺しの大剣を封印のオーラに包まれたディアボリに突き刺した。

 ディアボリは完全に赤い結晶に閉じ込められた。それを単独高次元の彼方にラルヴァダードが封じて全てが収まった。


 剣士王はイサイアスに歩み寄った。

 「貴公は我々に匹敵する力を持っている。しかも、さらに七海竜王の力をも得てしまった。余りある力は禍しか呼び寄せん。まず、貴公の力を封印しよう」

 そう言って赤いブレスレットをイサイアスの左腕にはめた。すると、力が急に抜かれていって最小限の状態になった。

 そして、次にシュニが言った。

 「これから、七海竜王を復活させる為に世界に散った7つの鱗珠を集めるのだ。あとはお前の体の中で眠っている7柱が魂を回復させれば彼らが自ら体に戻って鱗珠を元の姿に蘇生させるだろう」

 その言葉でイサイアスは7つの鱗珠を探す旅に出ることになった。

 「では、若き勇者を借りていくぞ」

 剣士王ラルヴァンダードが賢者達に言い残してイサイアスを抱えて絶界王の上に飛び乗った。

 シュニはイサイアス達を乗せて鱗珠を探しに飛び立っていった。

 

1

 絶界よりも高い次元、絶界の天井と呼ばれる場所に辿り着いた。そこには浮遊島が空を限りなく流れていた。

 その中にひと際巨大な島が目に入った。

 「あのデ・シヴィタに行ってみるぞ」

 島の端に降りるとラルヴァダードはイサイアスに視線で島の上の山の上の大岩に立つ城を示した。

 「聖なる光の城には、エル・エサイア達がいる。彼らは例えどのような存在であろうと外の者を一歩も侵入させることを許さない」

 「厄介だな」

 無口だったイサイアスが囁いた。それを一瞥して口元を緩めると、ラルヴァダードは目を細めた。

 「あそこから七海竜王の気配がする」

 そう、イサイアスは七海竜王のペルソナが宿っているので、鱗珠を感知することが出来るのだ。

 すぐに駆け出して竜王の波動を放った。ラルヴァダードが封印した彼の力は完全に封印出来ず、漏れているもので竜王のペルソナによりその力を放つことが出来た。イサイアスの力がガソリンで七海竜王のペルソナがエンジンのようなもの。彼がそれを操り放つのだ。

 波動が城の壁に当たって見えない結界によって弾かれた。

 彼は振り返ってラルヴァダードに言った。

 「この左腕の封印を一時期取ってもらえないか?」

 彼は微笑んで首を横に振った。

 「いいや、賢者のいない今、貴公の力は次元を崩壊させる程の危険な力を持っている。そう簡単に開放させる訳にいかない。ただでさえ、我が技で不完全ながら封印出来ていること自体、不安定で奇跡に近いのだから」

 だが、エル・エサイアの誰もが出て来ないのが気になった。

 「だが、嫌な予感がする。中で何かが起こっているようだ」

 イサイアスは彼の言葉に中を感知して、異様な感覚を覚えてすぐに力を高めた。

 「こうなったら、今出来る技でこの結界を破壊する。ラルは下がっていて」

 そう言って、竜王の力を高め始めた。すると、デ・シヴィタの城から1柱の存在が現れた。それを見たラルヴァダードは思わず声を上げた。

 「貴公はグシュナサフ。何故、こんな場所に?」

 すると、後頭部に手を組んで目を細めて口を開いた。

 「相変わらず固いねえ、ラルちゃんは。そっちの兄ちゃんにここを壊されたくないんでね」

 そこで、ラルヴァダードはイサイアスに説明をする。彼はイロアスの1柱のグシュナサフでガンナーであるとのこと。次元の高い自分のエネルギーを弾にして放つ拳銃を持つ勇士であるという。

 「丁度よくここに七海竜王の鱗珠が降って来て、この中であばれていたマゴグドラゴンのリシェ・リウを完全結界の凍結で封印してくれたんだ。その鱗珠を今、持って行かれると困るのよねえ」

 そこで、イサイアスが提案をする。

 「では、要はそのドラゴンさえいなくなれば」

 「それが出来ればね。でも、ドラゴンを倒せば呪いが掛かる。まあ、次元の上の坊やならそれも跳ね返せるかもね。でも、まず勝てないでしょ」

 そして、銃をイサイアスに向ける。

 「さあ、引き金を引かせることはしないでよね、これでも平和主義なんだ」

 そこで、ラルヴァダードは言う。

 「我らとこのイサイアスがいれば、そんなもの倒せる」

 ところがグシュナサフは手を広げて呆れたという表情を見せる。

 「俺は馴れ合いはしない主義なんだよ。だから、イロアスも1度だけ目的が一致したときに合流して、姿を消したんだよ」

 流石に業を煮やしたイサイアスが七海竜王の力を高める。

 「相手が誰でもいい、目的の妨げになるなら排除するだけだ」

 グシュナサフの銃に両手を向ける。その眼光は本気であることに間にラルヴァダードが割って入る。

 「ここで争っても何もならんぞ。いい加減にしろ、グシュナサフ」

 すると、もう1丁の銃を出してラルヴァダードにも向ける。

 「ディベートで何とかなる状況じゃないんだけどねえ」

 そのまま躊躇なく一方を放った。しかし、それを簡単に左手で弾いてイサイアスは右足を出すと同時に、体の周りに七海竜王のオーラを纏って強化しつつ拳を放った。英雄のガンナーは思い切り弾き飛ばされた。

 「なんだ、そいつは?」

 お腹を押さえて銃を片方落としてしまったグシュナサフは、少年を睨み付けた。

 「ラル、古いお友達を任せた」

 刹那、彼はデ・シヴィタの結界に体当たりして中に侵入した。破ったというより無理に通り抜けた感じであった。

 すぐに駆けて中に侵入する。その速さはエル・エサイア達に感知されることはなかった。

 城の前には兵士がこぞってやって来る。そこで、イサイアスは左手の封印を見た。

 「ここから力が漏れるなら、能力も発揮出来るはず。七海竜王の借り物の能力ではなく、本来の…」

 力を高めると兵士達は一瞬怯むが、剣を抜いて駆け出した。しかし、一瞬にしてその全ての攻撃をあっさりとかわした。

 「貴様らのアートマの力がこのアルファオメガの心髄のブラフマに通じると思っているのか。…次元が違うわ」

 そのまま、手を翳すと兵士達は全員倒れてしまった。

 本来の力でなくとも、それだけの本来のイサイアスの能力は強力であった。個の力が真理に通じる訳も交わることもないのだ。

 そこに3大騎士を携えて白氷の王が姿を現せた。騎士が前に出てスピアを構えるが、王がそれを制した。

 「そなたらでは叶わん相手だ」

 そして、彼はゆっくりと部下に視線を向けた。

 「彼らは近衛騎士のシヴィタ三銃士のアートス、ポートス、アレイミスで、我はこの城の主、デュマである。もし、可能であれば、リシェ・リウを倒してもらえれば、封印の鱗珠をお返ししよう」

 イサイアスは4柱を見回し頷く。遠くではラルヴァダード達の戦闘の爆発が見られる。

 「急がないといけない。手伝ってもらえますか?」

 「無論」

 4柱が声を合わせて返答した。

 城の中のエントランスの奥に進む。白銀の壁には彫刻が鮮やかに輝いている。大分進むと急激な冷気が漂いドラゴンが氷漬けになっていた。

 イサイアスはアルファオメガを高めて手を当てる。すると中から鱗珠が現れて彼はそれを掴んで仕舞った。途端に封印にひびが入り始める。

 「移行」

 彼はドラゴンごと天空島の遥か上空に瞬間移動させた。デュマ達も現れる。

 アートスはスピアから光の剣撃を放って囮になる。ポートスはアレイミスと動きを止める為に結界を張る。もって1分ですぐに突破されるものだろう。

 デュマは力をイサイアスに与えた。

 「さあ、少しの時間だが、左腕の封印は半分解除されているはずだ」

 そこでイサイアスは頷いて両手に力を溜めて、アルファオメガに超振動を加えてリシェに向かって刹那、攻撃を腹部に叩き込んだ。リシェは大きな咆哮を上げて凄まじいエネルギーブレスを放った。

 さっと避けてさらに巨大なエネルギー弾を放つ。強烈な爆発と共にドラゴンは肉体を失いペルソナのみの存在になって漂った。

 「流石、運命の存在。我には叶わん。そなたに従おう」

 そう言って、リシェは消えた。

 シヴィタ王は礼を言うと三銃士と共に城に帰っていった。イサイアスはラルヴァダードの下に降りた。

 彼は全てを悟っていて旧友との闘いを中止して休んでいた。

 「凍結の王が封印を一時期解除するとはな。本来は今の状態で倒すべきだったのだが」

 それを見てグシュナサフは彼を叩く。

 「まあ、結果良ければいいじゃないか。固い事言うな」

 「貴公もそれを見越して止めたんだろう」

 ラルヴァダードの言葉に彼は寝そべって言う。

 「色々あるだろう、この世界。頑ななことなど1つもないさ。真理の申し子は運命や宿命さえも超えるってね。さ、鱗珠を出して」

 言われるまま、イサイアスはグシュナサフに鱗珠を渡すと手の中で光を当てて念珠にした。

 「これは自分の力を0から100まで出せる封印の念珠だ。七海竜王の力だけでも100%出さずとも、それなりの戦い出来るようになれよ」

 それを放るとイサイアスは慌てて受け取り、それを右手にはめた。

 「お主も来るか?」

 ラルヴァダードの問いに手を横に振ってグシュナサフは囁く。

 「玉集めなんて興味ないさ。それにつるむのは性に合わないって言っただろう」

 ラルヴァダードは微笑んだ。

 「そうだったな。じゃあ、行くか」

 イサイアス達は新たな鱗珠を求めて天空島を後にすることにした。


2

 絶界と同次元の密界の巨大な都に次元を降りたイサイアス達は高い位の夜久行者やくぎょうじゃを見つけて話を聞くことにした。

 「確かにこの世界に鱗珠が飛んできました。ご案内したいのは山々ですが、妖魔が漂う不入の地の先に行きました。しかし、生憎、我が主であり義兄弟の八咫帝やたていに依頼されて、西にある胎蔵界たいぞうかい阿印あいんの経書と金剛界こんごうかい吽印うんいんの経書を取りに行くのです」

 そこで、彼は近くの山に手を差し出す。

 「あの吉祥山の頂上に寺院があり、阿闍梨あじゃり様という高僧がおられるので、行ってみて下さい」

 険しく遥か高い聖山の山頂は空間を移行出来るイサイアス達でさえも、容易く登頂することは出来ない。

 夜久行者に礼をして彼らは吉祥山の麓に行った。そこには2柱の門番が視線だけイサイアスとラルヴァダードに向ける。

 「ここはお主らの来るべき場所ではない。去れ」

 そこでイサイアスが何か言おうと歩み寄ろうとするが、ラルヴァダードはそれを制した。

 「どうしても我々は阿闍梨様に接見する必要があるのだ」

 門番は2柱で1つの話を同時に発する。

「存在には幽と霊と気で出来ている。下の次元の存在やドラゴン等の特殊な存在は肉体というものもあるが、それは一時的で離脱したり受肉したりするので除外する。幽はアートマ、霊は思念や残留思念、気はオリジナルでペルソナと記憶、ブラフマの一部で出来ている。幽と気で魂と呼ぶ者もいる。この3体は離れることのない一体のものであり、それを切り離すことは例え英雄のそなたでも不可能だ」

2柱は一斉にイサイアスを一瞥した。

「つまり、その中の1つを置いて行かなければ登れないと」

 そのイサイアスの言葉に彼らは顔を見合わせた。

 「流石、次元の王。真理の流れを読み取り知識を呼吸のように得る者よ。霊を置いて行かないといけない。思念がないと登頂は不可能だ」

 「さらに、気だけを切り離すことは不可能」

 ラルヴァダードもそれに付け加える。

 そこで、彼は右腕を見せる。

 「これは七海竜王の封印の鱗珠です。切り離せなくても封印すれば、気なしで上に登山は可能ということですね」

 門番は錫杖を鳴らして唸る。

 「ならば、気なしで行ってみよ」

 許可が出ると、イサイアスは右手に力を込めて強く振り下ろした。彼の能力、力、気を封印させた。まるで廃人になったような様子で彼は山門を潜って上を目指した。

 ラルヴァダードは門番に尋ねた。

 「気をなくして登頂出来るものなのか?」

 彼らは首を横に振る。

 「我らは不確定要素を知ることは出来ない」

 「では、質問を変える。我が気を封印したら登頂出来るか?」

 彼らは首を横に振る。

 「絶対に叶わぬ」

 彼は溜息をついてイサイアスを信じるしかなかった。


 森の中を彷徨いながらも上をただ目指した。植物が見えなくなると岩山がそびえた。その急な岩山を蹴って上に登り続ける。すると、そこにある存在が現れた。

 「ほう、久々にこの山に踏み入れる者がいるとは。しかし、気を封じているから意思はないのか。未熟者め」

 幻惑の長老、尸宗法師しそうほうしは興味を持って寄ってきた。しかし、すぐに身を隠した。複数の鬼のような存在が姿を現したのだ。

 「何故、羅刹がここに?」

 法師はすぐに山頂に向かった。羅刹と呼ばれた存在は邪悪な気配を放ちながらイサイアスを囲んだ。

 「ここで貴様も最後だ」

 湾曲した剣を出して、角を生やした赤い肌の野党は一斉に飛び掛かった。と同時にその中の頭領は足をすぐに止める。

 右手の念珠が光り輝きイサイアスの体から圧が発せられた。2柱は弾き飛ばされた。3柱の剣を軽く左手でいなして、右手の拳を放つ。風圧だけで彼らは岩肌にめり込んだ。

 「まさか、無意識で力を?」

 羅刹の頭領は大剣を取り出すと構えた。

 イサイアスの瞳が金色に輝き、アルファオメガを放出させる。

 気を封じている為に手加減も自力を制することも出来ない。だからこそ、イサイアスに近付けないのだ。本来、存在は自分の力を100%使用することで自分にも負担が掛かることを防ぐ為、周りに破損を与えない為に力を大分セーブしているのだ。

 それが、今は下手すれば100%以上の能力を発揮する可能性がある。下手をすると封印を破壊してしまう可能性がある。そうすれば、次元や世界すら破壊してしまうことを羅刹は本能的に察知してしまったのだ。

 「今は引くぞ」

 羅刹を退散させるとイサイアスは元の無の状態に戻り、足を再び進め始めた。

 しばらくして、尸宗法師が再び現れてそのオーラを感じて焦りを感じた。

 「流石に5英雄の太陽大神ラダか神殺しのペトロに匹敵するレベルと言えるか。次元崩壊を考えるとセブンズドラゴンズとも似ているが、7柱束にしても格が違うだろう」

 ここでセブンズドラゴンズの1柱、龍王エイシェントドラゴンの王、ノガードのいる次元に移行した。

 イサイアスはさらに進む内に最小限の力で異常なスピードで頂上に向かった。足元が悪い細い中、低い姿勢のまま進み気付くと巨大な社の前にいた。

 「もう、気を発しよ」

 中から大きく低い声が響いた。その圧でイサイアスは元の状態に戻った。

 「阿闍梨様でしょうか」

 「さよう」

 彼は姿を現さずに答える。

 「この次元に落ちた鱗珠の場所を教えて下さい」

 すると、中から降魔の剣を投げた。それを受け取ると握った。

 三鈷杵の一方が小型の剣状になっている武具である。イサイアスが力を込めると降魔の剣は西の不入の地に向かって光を放った。

 「その降魔の剣が案内してくれるだろう。ただし、辿り着くにはそれに従わないといけない。一直線に行けなければ、何かをしなければいけないかもしれん」

 彼は礼を言ってすぐに山を下り始めた。下りは気を封じなくても大丈夫であった。意思があるので瞬時に麓の門に下山出来た。

 「待ちくたびれたぞ」

 ラルヴァダードが剣を杖に立ち上がると門番が2柱共、その戻ってきた早さと手の降魔の剣を見て驚愕の表情を見せた。

 「今までで最速とは」

 初めてそこで礼を示して深々と頭を下げる。2柱に手を挙げて笑顔で別れを告げて、イサイアスはラルヴァダードと西に向かった。


 不入の地の前まで来ると、そこで老人が姿を現した。

 「わしは尸宗法師という。この次元の長老というところかのう。別の次元では仙人と言われたこともあるが、好きに呼べ。この先に妖魔が沢山いるが、その前に羅刹の徒党が襲ってくるだろう。足が必要になると思って良い仲間を連れてきてやった。5英雄に匹敵するお主なら問題ないだろうが、油断をするでないぞ」

 そして、巨大なドラゴンが雲から現れて舞い降りてきた。

 「ドラゴンの王、ノガードではないか」

 「イロアスの剣王殿、久しいな。今は従者をしているのか」

 バリトンの声は大地に響いた。ラルヴァダードは頭を掻いて自嘲する。

 「まあ、そのようなものだ」

 そこで、ノガードは大きさを小さくして翼を消した。

 「わしはお主が気に入ってな。力を貸してやるので、何かあれば呼べ」

 尸宗法師の力で小さな姿になったノガードに乗ると、イサイアスは吉祥山の門番のように頭を下げた。それがこの次元での礼だと理解したのだ。ラルヴァダードも後ろに乗り、ノガードは不入の地を進み始めた。

 踏み入れてすぐに地面が崩れて下に落ちて行った。

 イサイアスはすぐに力を発してノガードを支えて静かに着地をさせた。そこは別の次元であった。

 「あの場所は小さな亜次元が組み合わさっていて、手順を踏んで進まないと進めないから鱗珠の気配を探って進むことが出来ません。だから、阿闍梨様の降魔の剣がないと辿り着けないんです」

そう言って、龍王から飛び降りて前に出ると短い剣を翳す。光が右の方を射した。歩こうとするが、上手く動けずに倒れてしまった。

 イサイアスは自分の姿を見て唖然とする。ラルヴァダードが微笑みながら言う。

 「ここは肉体が必要な場所なのだよ。だから、今の我々は仮の義体を纏っている。肉体はすぐに慣れると思うが、肉体を破壊されると先ほどの場所に戻されるから気を付けろ」

 彼は鎧の体を触って手を閉じたり開いたりしてみた。

 そこにノガードが叫ぶ。

 「気を付けろ、老師の言っていた敵がこぞってやってくるぞ」

 彼は空間と力の知覚をすると、地底の迷宮の奥から鬼のような存在、羅刹がやってくる。

 「何故、羅刹がイサイアスを狙う?」

 ノガードが問うと羅刹の頭領が後ろから答える。

 「鱗珠はこの世界に闇の攻撃の力を与えている。それで我らがやっと法師や行者、須弥山から対等に抵抗が出来るようになったのに、また地底に追いやられるのは困る」

 「そんなことの為?」

 イサイアスは唖然とした。彼らは表情を曇らせる。

 「才能が最初からある者には分からんさ。どんなに努力をしても才能がなければ不可能なことはどんなに望んでも不可能のまま。真理を受ける者が分からんとは言わせんぞ」

 そこで、彼は左手の中指と人差し指を立てて刀印をし、右手の拳を握って構えた。

 封印の鱗珠から力を高めると羅刹達は後ずさりをした。しかし、すぐに駆けだして剣を抜いた。

 剣撃をさばいて避けながら凄まじい速さで駆けて、どんどん羅刹を切って肉体を破壊していく。

 肉体があることで不利なのに、得意の羅刹さえ苦戦する状況に雰囲気は一気に変わる。

 「勇士よ、その辺にするんだ。肉体は体力を消費するんだ」

 そう、彼はすぐにバテてしまった。息を切らしてすぐに後ろに飛び退いた。

 「だから、羅刹は体力温存をしていたのか」

 ラルヴァダードは剣を抜いて、まるでイサイアスがバテるのを悟っていたかのように攻撃を開始した。

 「あれはイロアスの剣士だ」

 すぐに羅刹は退散を始める。頭領が2柱の右腕を連れて前に進み出た。

 「どこぞの勇者か知らないが、そう簡単に勝てると思うな」

 六角棍棒を構えた羅刹はラルヴァダードに飛び掛かった。さっと剣で棍棒をさばいて(まともに受けると折られたり刃零れするので)、剣を振るった。胴に一閃が走るが、すぐに避けたので傷は浅かった。

 イサイアスはすぐに回復させて、もう1度構えて大きな踏み込みで飛び出した。すると、鉄の爪を装備した羅刹がそれを避けて爪を振るう。それを空を蹴って避けるとイサイアスはエネルギー弾を放った。羅刹は壁に叩きつけられた。

 羅刹の頭領は大剣を構えてそれに加わろうとするが、ノガードが元の姿のドラゴンに戻って制した。

 「彼らの戦いに水を差すんじゃない」

 大羅刹は剣を構えてドラゴンに向かって駆け出した。ノガードがブレスを吐くとすぐに剣で防いで洞窟の奥に弾かれていった。

 イサイアスは蹴りで羅刹の両手の爪を回し蹴りして、そのまま力を込めた拳を放った。

 羅刹は腹部に拳を放たれて義体を破壊されて消えた。

 ラルヴァダードも同時に棍棒を屈んで避けて剣を放って羅刹の義体を両断して破壊したところだった。

 ノガードは元の姿に戻るとイサイアスは座り込んだ。

 「肉体とは厄介だな。早くこの世界を通り抜けよう」

 ラルヴァダードは複雑な表情で苦笑した。


3

 洞窟の奥に行くと、迷路を抜けて大きな空間が現れた。

 「次の場所にいくには、ここにいる存在に認められることをするしかないようだ」

 中央にいる存在を見て行った。祭壇の上にいるのは廬舎那仏のような存在で、目を閉じたままで口を開いた。

 「その右にある池の中央から聖剣アスカロンが刺さっている。それを抜けば1つだけ願いを叶えよう」

 ラルヴァダードはイサイアスにこの場所から次の亜次元に行く手段だと耳打ちした。

 彼はそれを無視してゆっくり池に向かって歩く。

 「おい、受肉しているんだ。その池の周りに能力封印の結界があるから、沈むぞ」

 「だから、物理の法則もあって引力で下に引っ張られなければいい」

 そして、アルファオメガを高めた。

 「物理には真理で」

 彼は飛んで池の中に入る。そして、足先は水面の上で止まった。波紋が広がっていく。浮いたままで剣の前に行くとゆっくりと握って抜いた。

 「聖剣アスカロンに選ばれし者よ、願いを言え」

 イサイアスは叫ぶ。

 「この剣をもらう」

 そこで、慌ててラルヴァダードは叫ぶ。

 「何を言っている?この世界の次に行かないといけないんだぞ」

 しかし、祭壇の存在はゆっくり答える。

 「認めよう」

 そして、彼は降魔の剣を取り出して言う。

 「これは何の為にあると思っていますか?」

 それを掲げると光は天に射した。二人はノガードに乗って天を目指すとそのまま洞窟の空間の天井を超えて次の場所に抜けることが出来た。

 

 肉体は消えて元の状態に戻り、1つの岩で出来た街の中央広場に気付いたら寝ていた。ノガードは小さな翼のない姿に変化して、イサイアスは起き上がるとアスカロンを鞘に納めて背負って立ち上がった。

 岩に穴をあけて家や店を作られた町が広がっている。ラルヴァダードも起き上るとノガードに乗って次の場所を目指そうとした。

 「ここではまだ条件を揃えていないみたい」

 イサイアスが降魔の剣を掲げても光が出ないことを確かめた。

 「何をすればいいのだ?」

 ラルヴァダードが頭を掻いて困っていると、宿屋が目に入った。

 「一晩、休もう」

 彼らは宿の部屋に入って部屋で話し合った。

 「何故、あの洞窟の上にこの場所と繋がっていて行き来出来ると分かったんだ?」

 ラルヴァダードがイサイアスの剣に視線を注いだ。

 「亜次元の行き来に1柱だけが可能という事象が現実的じゃないから。それに…」

 剣を持って言った。

 「これに選ばれたと言われて、これは誰もが手にすることが出来ない。つまり、何か意味があると感じたから、どうしても手に入れておきたかったんだ」

 しかし、この世界は条件付きで出ることが出来ないのが気になっていた。考えられることはいくつかある。次の場所への入り口が封印されていて、その鍵を手に入れないといけない。

 入口がランダムに移動する。ある状態でないと通ることが出来ない。

 とにかく、降魔の剣が反応しない限り先に進むことは出来ないのだ。

 外には動物のような人間が行きかっている。その中で同じような旅人を見ていたが、見極めがつかなかった。


 翌日、ノガードに乗って岩の街の上にある祠に向かった。ここの宗教は夜叉を崇めている。その道すがら強力な能力を感じてラルヴァダードは反射的に剣に手を掛けた。

 イサイアスはそれを制して振り返って叫んだ。

 「目的は同じだ、来たいなら付いてこい」

 そこで瞬時に大人びた女性が現れた。

 「良く分かったわね」

 「そりゃあ、あれだけの魔力を発していれば…」

 イサイアスの言葉に彼女は微笑んだ。

 「まあ、わざとそれを出して気付かせた。問題は君が味方だと気付いて呼んだこと、か」

 「もう、正体は分かっているんでしょ?」

 ラルヴァダードはそこで我に返る。

 「5英雄の永遠の女帝ゲーデが何故こんなところに?」

 そこでやっと頷いてラルヴァダードに握手をした。

 「そちらこそ、大英雄イロアスの剣豪様がどうしたの?」

 彼はイサイアスを一瞥する。

 「久しぶりね、永遠の勇士の覇王エクソダス。否、今はイサイアスだったわね」

 その言葉でラルヴァダードは畏怖の表情でイサイアスを見た。

 「まさか、あのエクソダスがイサイアスだと?」

 世界でも名高い永遠の勇士の中でも最強の戦士だったエクソダスは不敗伝説を知らない者はいなかった。

 「元仲間だから、気配で味方だって分かったんでしょ?転生しても感覚を全て忘れる訳じゃないんだから」

 イサイアスは微笑んで首を横に振った。

 「前のことは全て忘れたよ。勿論、あなたのこともね」

 「そう、それは残念。でも、敵ではないわ」

 そう言って祠の上空を指さす。

 「夜叉が邪魔している封印を解いて次の場所に行くわよ」

 彼女がそう言って、空を飛んで祠に向かって飛んで行った。イサイアス達もノガードに乗って祠に向かった。

 祠の前には数柱の存在がいた。前には夜叉信仰の動物の姿の戦士が立ちはだかる。

 自分達の神が狙われているのに守らない信者はいないだろう。それらは問題ではなく、夜叉の眷属が天の封印を守っていた。

 夜叉自身は祠の屋根で高見の見物であった。

 「夜叉、昔のよしみで通して欲しいのだけど」

 彼は首を横に振って嘲笑った。

 「阿闍梨様に逆らうことは出来ないさ、いくら無敵の女帝様の願いでもね」

 「同じく借りがあるエクソダスの転生者のイサイアスであっても?」

 そのゲーデの言葉にイサイアスを見て流石に夜叉の表情が曇った。

 「なら、眷属の試練があっても簡単に行けるだろう」

 「そうね、じゃあ行ってくるわね」

 ゲーデはドラゴンの姿に戻ってイサイアス達を乗せて飛ぶノガードに一緒に乗った。夜叉の眷属達は怯えながらも各々の金剛杵を構えてやってきた。

 イサイアスは聖剣アスカロンを抜いて振り下ろした。一瞬にして夜叉の眷属は散り散りに落ちて行き、封印に一時の隙間が空いた。その中にノガードは入るとすぐに封印は閉じてしまった。

 「まさか、アスカロンまで手に入れているとは驚いたわ。まさに鬼に金棒ね」

 「そうでもない」

 イサイアスは両手の封印を見せる。

 「まあ、いいじゃない。ハンデがないとチートな試練じゃつまらないじゃない」

 徐々に次の世界が見えてきた。


 気付くと砂漠の中にいた。そこは胎動界であり、目の前に夜久行者が旅をしていた。彼は振り返って手を振った。

 「貴方達もここまで辿り着いたのですね。この胎動界で私は阿経を得ないといけないので、道を分かつことになりますが旅は道連れと言いますしどうでしょうか」

 「高貴な方とご一緒出来るのはこちらも光栄です」

 ラルヴァダードがそう言って、彼と一緒に進むことにした。

 しばらくすると、岩山が見られるようになる。そこに妖魔が現れて気付くと周りを囲まれていた。狼人のような妖魔は爪を伸ばして飛び掛かった。

 と同時に夜久行者は手印を結んだ。周りに不思議な気配が立ち上り突然彼らの周りに竜巻が起こって妖魔は全て舞い上がった。

 「さあ、私の手の内の見学はそのくらいで、どうぞ倒して下さい」

 彼は一瞥すると、イサイアスは苦笑して久々に七海竜王の力を使うことにした。竜巻に雷撃を放つと妖魔は一網打尽になって砂の上に落ちて行った。

 「ほう、それが七海竜王の力ですね」

 「天候の力なので、使える状況が限られますが。それでも、封印された自分の力を絞り出すより力を出せるので有利です」

 岩山を縫って歩いていくと、広大な荒れ地が広がっていた。

 ゲーデは右手を前に向けて力を発する。すると、見えないものが見えてくる。

 「これが幻の都、アニマか」

 次元を漂う都、幻のアニマは目の前に広がった。

 「夜久行者、金剛界への道はこの中ですね。では、我々はこれで」

 ラルヴァダードが礼をすると、イサイアスは降魔の剣の指す光に向けて荒野を進みだした。

 ノガードは進んでいくと、土の中から強大な巨人兵が現れた。額には鱗珠がはまっている。

 「鱗珠でパワーアップしているから、気を付けないと」

 イサイアスの言葉に声を出して笑った。

 「このメンバーでそれを言う?」

 ゲーデがそう言って微笑んだ。

 ラルヴァダードが剣を構えて飛び出した。しかし、石の巨人が大きさに似合わぬ素早さで避けて拳を繰り出した。ラルヴァダードは剣でさばいて離れて着地した。

 「まあ、イサイアスの言葉も多少はあっているわ。それは修羅しゅらが作った守り神だから。私はこれが守っている指輪が欲しいの」

 イサイアスは力を高めてアスカロンを抜いて構えた。周りの雰囲気が突如変わってピリピリし始めた。

 「試したい技があるんだ」

 そう言うと、七海竜王の力と自分本来の能力を合わせて、アスカロンに込めて放った。

 凄まじい威力で炎の竜巻が発生して巨人は腕で防ぐが、石の巨人でも燃え盛ってしまっている。

 剣を構えたままで、力をさらに込めた。巨人は徐々に後ろに押されながら腕を削り始めた。

 そのうちに腕が弾けた巨人は胸に大穴が空いて、そのまま倒れた。

 「流石だな、相容れぬ力を合わせて強大な技を出すとは」

 ラルヴァダードの言葉にイサイアスは照れ笑いした。

 倒れた巨人に飛び上がって止めを刺して、鱗珠を外すとそれは粉になって散っていった。

 指輪を拾うとゲーデはそれを見せる。

 「じゃあ、共闘はこの辺で。また逢おう」

 そう言い残して、どこかに去っていった。ノガードも元のドラゴンの姿に戻った。

 「我もここで去ろうぞ」

 そして、飛び去って行った。


4

 「さて、次はどこに行こうか」

 ラルヴァダードが聞くが、降魔の剣は反応せずに気配を感じることが出来なかった。

 「まさか、もっと下位次元に落ちたのか」

 「肉体が必要な場所だとまずいな」

 そこで、ふと微かに鱗珠の気配を感じた。

 「まさか、創生の鱗珠か。幸運だな、これが手に入れば肉体のある次元にも行ける」

 イサイアスの言葉にラルヴァダードは首を横に振った。

 「肉体を作ることが出来ても、それを破壊出来ないと元の上の次元に戻れないぞ」

 「じゃあ、破壊の鱗珠も必要という訳か」

 しかし、それでもラルヴァダードが言う。

 「だが、先ばかり考えても前に進まないから、とりあえずは肉体を手に入れてさらに下に行けるようにしよう」

 彼は溜息をついて、とりあえず創生の鱗珠を求めて、下の上界という次元に降りて行った。


 上界の主がすぐに出迎えに来た。

 「これはラルヴァダード殿。生憎、カオスに属する何者かが謎の道具で白い悪魔を生み出して我々を悩ませているところなのです」

 そこで、その道具が創生の鱗珠であることは判断出来た。すぐに、ローとカオスの属性の者達が大きな岩に群がっていた。

 イサイアスは力を溜めて手の中で鍵を作り出した。上の次元の存在は力が大きい為にどの次元でも存在は力の一部を切り離してバランスを保つのだ。

 例外もありある程度のレベルの存在に限られるが。

 その力の一部の切り離した鍵、オーバーコードを手の平で見つめているとラルヴァダードが声を掛ける。

 「やっと、取り出したか。で、どういう武具にするんだ?」

 鍵に力を込めるとナイフのような形になった。刃はS字のような意匠的に出来ている。

 「これは武具ではなく灯りです。赤い刃は光です。名は『巫幻灯みげんとう』にします」

 「では、それを下に放つんだ。遠くに離すことが大事なんだ」

 イサイアスは巫幻灯を放って下の次元に落とした。

 「じゃあ、行くか。意味のないことは一切ない」

 全ては有であり無であるのだ。そう心に言い聞かせてイサイアスは七海竜王の力を解放した。

 「どいて下さい」

 そう叫んでイサイアスは凄まじいエネルギー波を放った。ロー勢もカオス勢もさっと避けて大岩にいた白い大鬼の群れがバーサーカー化して赤い目をして漂っているのが分かった。

 「通常の大鬼じゃない?」

 体の周りに強化の力をまとって誰にもとらえることが出来ない速さで拳と蹴りを放った。七海竜王の力が回復して来ているようで、イサイアスの攻撃力が上がっていた。しかし、大鬼もイサイアスに劣るものの多勢に無勢であった。

 そこにラルヴァダードが加勢した。

 「雑魚は任せて、ボスを頼む」

 頷いて大岩を睨んだイサイアスはそのまま飛んで行った。

 「駄目だ、あの大岩には手を出すな」

 ふと振り返ると上界の強者がいた。

 「龍皇か」

 「今は龍気翔りゅうきしょうと呼んで欲しい。我が力の大部分を込めたこの大剣でアレだけを倒してくれ。大岩にはまずいものが封印されている」

 イサイアスは溜息をつく。

 「だったら、そいつも倒せばいい」

 ラルヴァダードがすぐに割って入る。

 「今はアレだけを倒すんだ。今は創造の鱗珠が先決だ」

 すぐに目の前の目標に借りた大剣を握って力を込めた。

 「ライトウィング」

 背中から光の翼が現れる。

 「ライトソード」

 さらに大剣に光が纏われた。

 と同時に一瞬で目標の背後に回った。剣を振るうが簡単に腕で受け止められてしまった。

 すぐに距離を取った。

 「ライトショット」

 剣から光弾を放つがそれも弾かれた。

 「接近戦も飛び道具もダメ、か。では、これなら」

 強大な力を放って光以外の上界のCODEの力を発する。

 「ローサマナー」

 この上界で最大の両極、ローを憑依召喚した。

 「カオスサマナー」

 さらにその両極の最端のカオスも同時に召喚させる。

 イサイアスなら自我を保つことも力を注ぐことも容易かった。上界にはここの世界の力でこの技を使える者は数えるしかないだろう。

 「ファイナルフラッシュ、ラストワールド」

 一気にそれらの大技を放った。白い光がイサイアスの周りから広がり、同時に黒い電撃を帯びた大きな弾が放たれた。

 周りの大鬼が光に溶けて消滅して、光を耐える目標に黒い弾が直撃して大爆発した。

 と同時に光の翼で一瞬に真上に移動して光の剣を振るった。

 それは手足を出せずにそれは消滅した。残った鱗珠を手に入れて剣を龍気翔に返した。

 「次に下界に行くのですか?」

 しかし、イサイアスは龍気翔の問いに首を傾げる。

 「下界の方に気配はするけど、でも少し違うというか…」

 そこに死を司るデスが現れる。大きな鎌を担いである人間の精神体を運んでいた。

 「あ、あれは」

 すぐにイサイアスはデスの前に立ち塞がった。

 「彼女を生き返らせて欲しい」

 しかし、デスは睨み返す。

 「死すべき者はどのような理由でも死してもらう」

 そこにラルヴァダードがやってきて聞いた。

 「どうしたんだ?」

 「彼女は下界の双子のような次元に行ける能力を持っている」

 それを聞いてラルヴァダードも剣を抜いて隣で構えた。

 「その場所を教えてもらえば、勝手に行けるだろう」

 デスの意見もそうだが、次元の場所を教えるという言葉は空間の場所を地図で教えるように簡単には伝えることは不可能であった。

 剣を抜いてすぐにデスとイサイアスはつばぜり合いになった。間に入るのが難しい程の闘いだが、ラルヴァダードは剣で両方の刃を受け止めた。

 「デス、その魂をその次元まで道案内させるくらいは良いだろう?生き返らせる必要はない」

 デスはしばらく考えたが苦肉の策で頷いた。

 魂は意思が眠っているので、記憶を再生させて導くようにCODEを使った。その魂は下界に重なる次元に行く。精神体であるといけない次元にイサイアス達は精神体で訪れた。

 すぐに鱗珠の創生の力で2柱は受肉をした。デスはすぐに魂を持って上界に去って行った。

 「愛想のない奴だな」

 ラルヴァダードがそう言って剣を納めると手を開いたり閉じたりした。イサイアスは歩くことで体の感覚を覚える。

 「この前の次元と違うな」

 「確かに。肉体によって違うからな」

 砂漠が広がる次元を見渡す。他に生き物は見えない。感覚では1種類だけ感じとることが出来るが、妙な感覚であった。まるで、ゴーレムのような。

 すぐに何か強力な力を感じた。イサイアスは降魔の剣を出すと光はその方向に向かった。

 「門番は只者じゃないぞ、勝てるか?」

 「ラルは手を出さないで」

 イサイアスは封印の鱗珠に力を込める。最大の七海竜王の力を発して瞬時に砂漠を移動した。大樹が見えてきたがその近くの岩に穴があり、そこに少女がいた。

 「まさか、あの娘が門番?」

 しかし、躊躇いなくイサイアスはアスカロンを抜いて構えながら駆け出した。

 「ラルは来ないで」

 その娘はイサイアスの攻撃が開始すると瞳を赤く光らせて凄まじいスピードで飛び上がって光弾を放った。それを避けながら近付き、彼は高く飛んで剣に七海竜王の力を込めて振るった。軽々避けられて次に強烈なエネルギー波を放った。イサイアスは地上に降りながらバリアを張った。

 「この力、只者じゃない」

 バリアは何とか防ぎ、次の攻撃を放つ。剣撃を連続で放つと流石に避けられずに直撃するが、それでも右腕を落として掛かって来る。

 「生き物ではない、アニマではないのか。じゃあ、何者?式神にしては動きが良過ぎるし能力が高い。…作られた存在なのか。生き物を創るということは」

 彼は上に視線を向けて思い切り力を放った。すると目の前の娘が動きを止める。と同時に左手から電撃を帯びた炎弾を放った。敵は簡単に吹き飛んで岩の壁にめり込んで動かなくなった。

 「いるんですよね、出て来てください」

 イサイアスが叫ぶと空が割れて大きなドラゴンが現れた。

 「貴方が創生龍グランフォーゼ。生き物をも産みし存在」

 ドラゴンは心の中に語り掛ける。

 「ここは私が作った次元。向こうの大樹は強い禍々しいもので封印せざるを得なかった」

 そこですぐに気付く。

 「この次元にあの化け物を短時間で封印する為に、鱗珠を使ったのですか」

 「察しがいい。そう、創生の鱗珠を使っています。しかし、あれは返さないといけません。多少、この次元に歪みが生じますが、あなた達には好都合でしょう。次元に歪みが出来れば肉体を持ったまま別の次元に移動も出来ますね」

 イサイアスは頷いて洞窟の中に入っていき、指を鳴らして光を発生させると藁の上に鱗珠が置かれていた。

 それを拾うと次元が不安定になったのが肌で感じることが出来た。

 外に出るとグランフォーゼは姿を消していた。

 離れた場所にいたラルヴァダードに合流すると、次の場所に行く方法を考えた。

 「次も肉体が必要な下界だ。丁度、重なった次元だから移動はそんなに難しくないし、次の鱗珠は破壊の鱗珠だから肉体から解放出来る」

 「それは良かった」

 ラルヴァダードはそう呟いて、遠くから他次元から侵入する者の気配を感じていた。魔道の力を持つ者。巨人。それと…。

 「さあ、行こう」

 彼は降魔の剣を振るうと一時的に次元を切った。その中に滑り込むとその次元の切れ間はすぐに塞がった。

 「下界は安定した次元だから、もうあの次元には戻れないよ」

 「戻ろうとは思わんさ。さて、次はどうする?」

 この次元は物理の法則に固く雁字がらめになっていて、見えない能力というものが希薄であった。

 「本当にどうしようか」

 イサイアスも溜息をついた。場所は昔のイスタンブールの海岸であった。

 

エピローグ

 時空の一時的な移行が可能な魔法円がエジプトの近くの岩に刻まれていた。そこに破壊の鱗珠が転がったことを彼らは知っていた。かつて、この次元に平行次元から移り住んだ者達である。

 彼らは砂の上に魔法円を描いて、それを彼らの崇める神の国に知らせようとした。

 無界の住人はその上の次元の空界のエマヌエーレを崇めるマヌエル教を信仰していた。

 シモン-ケインという者がおさめるメルキオール王国にその魔法円はあった。

 そもそも、彼は最初にこの次元に移行した先発隊であり3人のマギの1人であった。

 マヌエル教の次元を司る存在、ジューダス-イスカリオットの13使徒(大天使のような存在)の1柱、シメオンを召喚しようとしていたのだが、彼らは間違って同じ下界にいるイサイアスとラルヴァダードを召喚(空間移動)させてしまった。

 「貴方達は?」

 彼らは説明が面倒なので、上の次元の存在で鱗珠という小さな玉を集めていることを説明する。

 すると、破壊の鱗珠が岩の魔法円に入ってしまったことを伝える。

 「ラル、おかしくないか?無界の次元からの先発隊である彼らが知らない魔法円があるっていうのは」

 「否、彼ら以外にも時空移行の魔法円は作れるだろう。彼らの能力のアポリオを岩山から感じないから、おそらく別の力だろう」

 イサイアスは表情を曇らせる。

 「なら、なおさら、おかしい。じゃあ、この能力のない世界に危ないあんなものを誰が作ったと言うんだ?」

 ラルヴァダードは能力のある世界ばかりにいたので、イサイアスのような疑問は浮かばなかったのだ。

 「まあ、言われてみれば」

 「特にこのような次元に能力のある上の者が来ることは考えにくいし、あのメルキオール王国の彼らが移行してきたこと自体、異例中の異例だし」

 「それはこの世界の時空を超えた場所に行きたかった誰かが作ったんじゃないか。向こうに行けばこちらの岩の魔法円を消すことは出来ないだろう。で、岩に刻んだのは自由に時空を移行出来ないから1回あそこに作ったら、向こうの世界で戻る魔法円を作れないから、じゃないか?」

 「そこまでして、向こうで何を。嫌な予感がする」

 「確かにまともではないよな。よし、我らも行こう。どちらにしても鱗珠を手に入れる必要がある」

 彼らは下界の時間を超える魔法円の中に飛び込んでいった。

 魔法円の中は真っ暗な空間があり、そこにある存在がいて弓を構えていた。

 「門番?」

 イサイアスが呟くと、ラルヴァダードは微笑む。

 「あれは旧友だ。イロアスのアーチャー、蒼穹のロアだ」

 彼は弓を下ろす。ラルヴァダードが声を掛ける。

 「ここで何をしている?」

 するとロアはぼそっと囁いた。

 「ここから先は誰も通さん。例え、戦友だとしてもな」

 そこでイサイアスがこの先に行った者が只者でないことが分かった。

 「まさか、5英雄の1柱のホルミスダスか。確かに時間に干渉する低次元で時間を操り、下界に入っても影響は最小限に済む。だが、何故、ここから下界の未来に向かったのか」

 そこで静かにラルヴァダードがロアを一瞥する。

 「なるほど、ホルミスダスだとすると、向こうにあそこから次元移動した何者かを追っていったのか。すると、そいつが向こうで悪事を行っていると最悪だな。しかも、破壊の鱗珠を拾われたら最悪だ」

 それを聞いたイサイアスは呟く。

 「あそこにまだ魔法円があるということはホルミスダスがまだそれを捕まえていないということか。時間という縛りが厄介だな、下界は。でも、向こうに行った相手はこの場所から向こうに行ったということは、無界の民衆の移動が関係しているのか。無界の人と共に来た存在?空界の存在だとしても時間を超える存在はいないか。すると、たまたま空界にいた強力な存在ということになる。…イロアスの1柱か?」

 下目で見るイサイアスの言葉にロアは顔を心なしか背ける。それをラルヴァダードに目配せすると、彼は溜息をついて口を開いた。

 「となると、ロアと腐れ縁の逆鱗のウェドか。ランサーだ」

 そこで、再度ロアに通すように話す。

 「ウェドを連れ戻す。ホルミスダスに力を貸すだけだ。勿論、見ての通り我々は受肉をしているから、あまり能力を使わなければ次元を歪ませることも少ない」

 それを聞くと少し考えて頷く。

 「必ず、ウェドを止めてくれ」

 イサイアス達は手を上げて先に進んでいった。

 時空は開いて目の前には何故か近未来の日本であった。

 「何故、こんなところに繋がっているんだ?」

 イサイアスはウェドの目的を考えた。

 「確か、この時代は上界や上の次元の存在が下界に手を出し始めてこじれている時期だな。だとすれば、考えられることはそれらを利用することか」

 「とりあえず、この世界に精通している者に会いに行くか」

 ラルヴァダードは日本人の初老の姿に変化した。イサイアスは日本人の高校生くらいの姿になる。

 2人は出てきた場所が廃村の蔵の奥である。既に、別の次元の者が出てきた気配を感じる。

 蔵から出ると2柱とも村から出て近くの湖の畔で気配を感じた。

 「おかしい、ホルミスダスと他のは感じるがウェドの気配は感じない。…まさか、破壊の鱗珠で自分の気配を消したのか」

 降魔の剣を翳しても光は発生しなかった。

 湖を蹴って駆けると山脈の上を越えると少し高い山の山頂近くの洞穴に辿り着く。

 中に入ると待っていたのは別の次元の上の存在であった。今は転生してここの人間になっているようだが、能力は健在である。

 「やあ、勇者殿達。俺は安藤龍あんどうりゅうという者だ」

 すると、ラルヴァダードは目を見開いて声を漏らす。

 「あの次元、グランフォーゼが創った世界に同行していたアンドリュか。まさか、完全転生でこんな場所にいるとは」

 そこで龍は声を出した。

 「グラノガードに行ったのか」

 「あの次元の名前か。すると、ノガードも絡んでいたのか」

 イサイアスの言葉を無視して龍はこの世界について簡単に説明した。

 「しかし、誰もホルミスダスとウェドについては知らないのは確かだ」

 それを聞くと2柱は顔を見合わせて首を横に振った。

 「しかし、もしかしたら関係あるかもしれないが、都会のある場所で妙なことが起こっている。ホルミスダスもそこにいるらしいから、知覚して話を聞いてみたらいい」

 龍に礼を言ってすぐにホルミスダスのいる場所、関東地方に向けて飛んでいこうとするが龍に注意された。

 「言ったようにここの人間は水の上を駆けたり山を跳んだり出来ない。登山で降りて公共機関で行くんだ。なるべく能力を使うのを避けるんだ。君達は強力過ぎるし既に多くの者が力を使い過ぎている。ここの次元が既に不安定になっているんだ」

 「了解」

 2柱共声を合わせて弱弱しく答えると下山を始めた。


 湖の淵に来ると車が待っていた。

 「君は?」

 そこにいたのは前世が上の次元であり複数の武具を持っているジョン-スチュワートと下界でSNOWCODEの血を受け継ぎ次元の力を持つ我神棗であった。

 「知り合いのチビの剣士から話を聞いてきました。近くまで送りますよ」

 彼らのおかげで歩かずに済んだ。森の中の舗装のない道を進み村を通り抜けて湖の北側に出る。発掘場を横目にさらに進むと湖を回って南側に出て廃村に沿って進む。また森の中に入り獣道を進んで宿が見えてきた。

 「あれは月夜見館つきよみかんで、仲間がいます」

 それを右折して細い道を抜けるとやっと舗装道路に出た。それを左折して山道を進むと右手に新興住宅地が見えた。

 「ここは第1次メビウスの箱事件の起きた場所で、あまり好きじゃないですね」

 と棗が一言呟いた。

 「ちなみに先ほどの廃村が第2次メビウスの箱事件の場所ですね」

 ジョンが付け加えた。

 山道を進むと大通りに出た。それをかなり進むがいっこうに閑散としている。しばらくしてやっとインターに入って高速道路を下り始めた。

 「あの場所は色々といわく付きのようだな」

 ラルヴァダードがそういうとジョンは助手席で苦笑した。

 「色々ある場所ですしね」

 そして、とある関東地方の駅に着くと、連絡先を渡してジョン達は帰って行った。イサイアス達はホルミスダスのいる場所に向かって歩き出した。

 駅前の通りの並びにある喫茶店に入る。そこでラルヴァダードは静かにマスターに声を掛ける。

 「ホルミスダスに会いたい」

 50代くらいの紳士風のマスターは一瞥してブルーマウンテンを差し出す。

 「それは出来ません。少なくとも、ここの住人に紛れてから出直して下さい。あなた達の精神操作と創生の鱗珠で何とかなります」

 それを聞いて彼らは出直すことにした。幸いこの世界の上の次元に関わる者達は味方をしてくれるようなので、棗達を頼ることにした。

 

 連絡して棗の口利きで住処と戸籍を手に入れた。彼らの仲間の陣竜胆は公安の独立部隊のCODEの責任者であり、ある程度の融通が利いた。

 CODEは上界の運命を司るものの力を近くして使用出来る者の集まりであり、機密機関でもある。

 ジンの計らいでアパートに住むことになった。金銭はカードをCODEから配給されて再度あの喫茶店に向かった。

 すると、既にホルミスダスがカウンターで待っていた。

 「さて、ウェドなのだがどこまで知っている?」

 イサイアス達は首を横に振る。それを見てホルミスダスは微笑む。

 「まず、黒幕がおる。それに操られておるようだ」

 2柱は予想通りというように視線を交らわせる。

 「そ奴は私の予想だが、アポカリプスだと推測しておる」

 ラルヴァダードの表情が青ざめ愕然として口を開けたままになった。

 「世界の終焉の神、アポカリプスが何故?」

 それでも冷静にイサイアスは言葉を紡いだ。そこでホルミスダスは少し間をおいて答える。

 「イロアスのウェドを使っていることから、相当上の存在だと思われる。目的がこの場所であるとすると考えられるのは、この場所の破壊だ。あまりにも上の次元の存在が干渉し過ぎて次元が崩壊し掛けている。これが別の次元にも影響を及ぼしている。他の次元を守る為にこの場所を犠牲にしょうと考えている。それを考えてこの次元だけをまとめて消滅出来るのはアポカリプスだけだろう。ただ、力を少しでも高めれば居場所が分かり我々に止められる。だから、ウェドを呼んだ。ランサーの能力と破壊の鱗珠の力で邪魔物を葬って捨て駒が動きやすくしたところを動くつもりだ」

 その言葉にイサイアスは違和感を感じた。

 「アポカリプスほどの者が止めようとする存在達を恐れてウェドに任せるだろうか」

 「今、ここにいるだろう?私、それに剣豪に次元破壊の英雄がいるだろう。当然、他にも強力な者が降りているかもしれん」

 「アポカリプスほどの者に評価されて光栄だけど、それでも…。そうか、この次元破壊にかなりの力を使うから、追っ手を払うことが出来ないのか。さらに、力を使う時間を長く維持出来ないということだ。ラル、封印を解いてくれないか?僕の力なら―」

 そこで彼は視線でその言葉を制した。

 「なるべく力を使うな。アポカリプスと戦う程の力を解放すれば、代わりにお前がこの、否、全ての次元を破壊することになるだろう」

 そして、ホルミスダスは手を出す。イサイアスはアスカロンを出すとそれに手を翳すと剣は鍵になった。

 「好きな時に力を込めれば元の姿になる」

 礼を言って鍵をポケットに入れると、イサイアスはこれからの計画を考えた。この世界の住人に紛れ込んで彼らを探し出して封印することにした。

 ただ、彼には不安があった。ウェドが畏怖からアポカリプスに従っているとは考えにくいと個人的に推測していた。

 


これはCODEシリーズから派生したアドネル神話、その先のグラノガード物語に続く物語で、全ての物語を読んでいただくとこの先の物語も理解できます。

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