第三話
「総理、あけぼのは何故攻撃を受けたのでしょうか?我々が入手した情報によると、あけぼのが彼らに先制攻撃を仕掛けたと聞きましたが?」
元の世界にあった台湾と日本の二重国籍の進民党の女性議員が総理に質問した。
「村沢総理大臣」
「はい。あけぼのは先制攻撃ではなく、海面に警告射撃を実施しました。例の帆船には当たっていません」
村沢は正直にいうとあの野党の協賛党やついさっき質問してきた進民党の議員に対してイライラしていた。
なぜなら、根拠もなく架空の事実を国会で質問してくるからだ。
そうこうしているうちにやっと、長い国会での野党に対する答弁が終わり、村沢は駆け足で首相官邸に戻ると執務室に司馬国防大臣がいた。
司馬国防大臣は書類を執務室の机に広げていた。
「お待ちしていました。総理、エジブタ皇国の位置が分かりました。尖閣諸島南小島で救助した捕虜からの情報と復旧した偵察写真衛星の情報によると、東に800kmの地点に軍港を確認しました。現在、確認できるだけで100隻以上の木造武装船や民間船が停泊しているのを確認しました」
「そうか、では、準備を進めてくれ。パールハーバーの二の舞にならないように」
「分かりました。外務省と連携を取り、彼の国にしっかりと「宣戦布告」を告知します」
こうして、日本連邦は初めて接触した異世界の大国エジブタ皇国との戦争に突き進んで行った。
◇
海軍庁長官の命令で日本連邦海軍は呉基地や横須賀指令基地、那覇基地で揚陸艦や輸送艦や急いで民間会社から徴収した輸送船やRO-RO船に海兵隊の戦車や各種車両、航空機の積み込みや弾薬輸送船に弾薬を積む作業を開始した。
海兵隊は普天間基地からCH-53やUH-1Y等の輸送ヘリが歩兵部隊や軽車両部隊を運びAH-1Zやドアガンを搭載した改良型のMi-24Dがおおすみ型強襲揚陸艦4隻に着陸し、次々とメインローターを折り畳み揚陸艦の両舷にあるエレベーターで格納庫に運ばれって行った。ウェルドックにはAAV-7が次々と進入し、LCACがT-90や10式戦車を積み込み戻ってきた。運び込まれた戦車隊はLCACから降り、車両格納庫へと続くスロープを登り、誘導員の指示に従い、停車した。車両格納庫内は既に車両でいっぱいになっており、ウェルドックと車両部隊を繋ぐスロープは防火シャッターが塞いでいた。
佐世保基地の近くにある佐世保海軍工廠のドッグにはあけぼの攻撃事件で損傷したあけぼのと定期検査中のたかなみ型駆逐艦12番艦しろなみが乾ドックで修理を受けていた。
海上保安省はあけぼの攻撃事件で隊員12名が死亡し、重軽傷者が20人以上が出たと、発表した。
連邦政府はエジブタ皇国を交渉のテーブルに座らせ、補償を取るために連邦軍を派遣することを閣議決定し、既に準備が完了していた連邦軍は各地にある基地から出動し、エジブタ皇国軍港を目指した。
宣戦布告は護衛艦に乗った外務省の職員がゴムボートで、SBUとと共に上陸し、現地の海軍基地に宣戦布告を押し付け、追撃を受けたが護衛艦が撃退し、全員が無傷で帰還した。