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TRIGGER HAPPY  作者: 琉球の民
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プロローグ

「………ぃ。……ぉい。………………おい、聞こえるか少年?目を覚ませ」


 呼ばれる声に目を開ける。

 飛び込んできたのはどこまでも続いている様な白い空間。

 ………いや、真っ白すぎて距離感が掴めないから、もしかしたらすぐ近くに壁があるかもしれない。

 両手を広げても、前後左右に何かが当たる様な感じは無いので、やっぱりとても広い空間かもしれないけど。

 でも………………。


「………ここ、どこ?」

「ここはキミ達で言うところの【天国】ってところだな」


 方向感覚も掴めなくなる様な場所に立っている自分に向けられた言葉。

 言葉の意味は理解出来るものの、言われた内容が理解出来ずに声のする方を見た。


「………………えっ?」


 そこには気怠げな感じで椅子に座っている、年上と思われる男性が座っていた。

 ………見上げる形の、宙に浮いている様に見える椅子に。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「今日は久しぶりに新作が出る日だからな。バイトも休みだし、エンディング見れるまで何度か挑戦しよう!今までのシリーズと同じで隠し難易度もあるって噂だし」


 好きなシリーズのシューティングゲームで、新作が今日稼動するという情報が貼り出されて、それを今か今かと待っていたので、給料日直後というのも相まって、小躍りしそうな気分でゲームセンターに向かっていた。


「っと、その前にバイト先に寄ってお金下ろさないと。たぶん今の時間は店長だけのはずだからついでに挨拶しておこう」


 昼前の時間なので、いつもならそろそろ客足が落ち着いてきて商品の発注を確認しているだろう、ゲームセンターの途中にあるバイト先のコンビニに足を向けた。



「お疲れ様でーす」

「いらっしゃいま……おぉ、透か。どうした?今日は休みだろう?」


 発注状況などを確認するためのタブレットから顔を上げた店長が、俺を見ていつものきさくな笑顔で話してきた。


「はい。ちょっと遊びに行こうと思って、ATMでお金下ろしに来ました」

「そうかそうか、だったらバイトしてるお店の売り上げも貢献してくれるんだよな?」

「ちゃっかりしてるなー。わかりましたよ。小腹が空いてるのでパンと飲み物ぐらいですけど」


 満面の笑顔で問いかけられ、苦笑しながらまずドリンクコーナーに向かった。


「…………ん?」


 自分以外に女性のお客さんが入ってきて、背後の自動ドアが閉まる寸前に滑り込む様に男性の客が入ってきた。

 なんだ?なんか目が血走っている………よう……な…………。


「か、金を出せ!!早くしろ!!!」



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「そういえば、たしか強盗が入ってきて………。女性の悲鳴が聞こえたと思ったら…………」

「興奮した男が女性の方を向いた隙に店長が警報ベルを鳴らして、その音に気付いた男が激昂。カウンターの中に居た店長を狙わず、女性に向かって行こうとしたのを少年が後ろから羽交い絞めにした。けれど、それで暴れた男の持っていた包丁が運悪く刺さり、さらに刺さった所が動脈だった為に、病院に搬送されたものの失血死。って流れだな。」

「………僕、死んだんですか?」


 あまりにも実感が無く、呆けた様に、答えが出ている事を問いかけた。


「うん、死んだね。失血死だから少年自身は途中から意識も朦朧としてて自覚が無いかもしれないけど。」


 実にあっけらかんと、事実とその時の自分の状態を述べる男性。

 悲壮感も、高揚感すらも無く、淡々と告げられた自分の死に『あぁ、ホントに死んだんだ』となぜだかすんなりと受け入れていた。


「………ところで、あなたはどちら様ですか?」

「俺はキミ達で言うところの神様だ」


 またもや淡々と。それが当たり前な事である様に、自身を神様だと男性は告げた。

 本来なら一笑に付されてもおかしくない『どこの芸人のネタだ?』と訊きたくなる様な名乗り。しかしその名乗りも見覚えの無いこの場所のせいか『そっか、一応【天国】には来れたんだ』と妙な感覚が心の中を占めていた。


「そういえばあの強盗ってどうなったんですか?訊いても大丈夫ですか?」

「問題ない。捕まったよ。少年が刺された後、強盗の上に覆いかぶさる形になっていたから、逃げ遅れた強盗は逮捕された」

「女性は無事だったんですか?」

「無事だよ。むしろ少年が助けなかったら、奪った命は1つじゃなくて2つになる予定だったんだけどな」


 感情は感じられないが、なぜか2つと仰る神様。

 ………………もしかして。


「女性は妊娠されていたんですか?」

「そうだよ?まぁ、奪った命が1つだろうと2つだろうと、まず人間として転生する事は出来なくなるから、大した違いではないが。でも良く気付いたな?キミ以外の二人が犠牲になっていた、って可能性もあるだろうに」


 数や大小の問題ではなく、行為そのものが問題だと。

 女性が身重である事に気付いた僕に表情を変えずに問いかける神様。

 まぁ、消去法というかなんというか。


「あの場に居たのは自分含めて三人で、店長は合気道と柔道共に二段なので。今でも道場に週2で行ってるらしいんで、可能性として除外するとしたら女性だけか、自分も襲われていたか。でも自分は店長と違って武術の心得も無いので、自分が割り込んで命を落としたのが自分だけなら、逆に命を落としていたのは女性だけだったかもしれない。女性が亡くなって、命が二つ失われるとなると、妊娠意外に無いかな、と」

「………よくもまぁ、そこまで頭が回るもんだな。わかってるのか少年?キミは今自分で自分が死んでいる事を自己認識したも同然なんだぞ?普通はもうちょっと慌てたり悲嘆するもんじゃないか?」


 呆れる様に、推理ですら無い様な思考の結果を述べる僕を、溜め息を吐く様に見やる神様。


「まぁ確かに、色々未練もありますよ?高校三年になって誕生日を最近迎えたばかりでこれから受験とかあったのにとか、一度は彼女が欲しかったなとか。でも気付いたら死んでるし、今更出来ない事を悔やんでもどうしようも無いので」


 新作のゲームも出来なかったし。


「そうか、少年が納得してるならこちらとしても構わない。構わないんだが…………。あぁ、もう!メンドクサイ!!仰々しくなんて出来るか!!」


 突然大声を上げながら、威厳を持たせる様に座っていた椅子から立ち上がり、髪を掻き毟り始めた。


「わりぃな、天使共が煩いんで勿体付けた様な話し方してたが、回りくどいのは好きじゃねぇんだ。やる事も多いんでちゃっちゃと進めさせてもらうぜ」

「はぁ………………」


 さっきまでも面倒そうな感じはしていたが、どうやらこちらが素の様だ。粗忽な振る舞いをするかの様に、いや実際そんな感じか。

 姿勢良く座っていた椅子へ体を斜めにする様にもたれかけて、足を組みながら、紙の束をどこからか取り出した。


「えぇっと、新田透君ね。高校三年生で享年18歳。ちょうど一ヶ月前に誕生日を迎えたばかりと。運動はそれなりに出来る、学業は真面目に取り組み、目立つ様な成績ではないが、順位は上から数えた方が早いぐらいか。趣味はゲーム全般、特にシューティングゲームが好きで、好き過ぎてかなりの腕前、と。中学の頃には一人でノーコンティニューで大抵のシューティングゲームはクリア出来てしまうので、周囲からは若干引かれ気味だった。それから…………」


 どうやら自分の今までの人生の内容がまとめられたものらしい書類を読む神様。

 ………っていうか、こちらの心を若干えぐる様な部分はわざわざ読まないで頂きたいが。

 内容を流す様に読んでいた神様が、僕が死んだところまで読み終わり、こちらに視線を向けてきた。


「さて、どうする?特筆する程の内容は無かったが、君は最後に善行を積んだとでも言うのか、命を守って死んだ。普通はやらないんだが、今回は俺のきまぐれだ。どうする?同じ世界で転生するか、別の世界に行くか」

「………………はぃ?」


 ようやくこちらに向けた視線を受け、何が来るのかと待ち受けていたら、よく判らない事を仰った。

 別の世界へ行く?新世界?なんか開拓でもするの?

 違うか。いわゆる異世界転生ってやつかな?


「違う世界でランダムの家庭に生まれ変わるも良し。今の記憶を持ったままその世界に飛ぶも良し。好きな方を選べ」


 投げやりな感じでぞんざいに選択肢を提示する神様。


「違う世界ってどんな世界ですか?生まれ変わらずに行っても大丈夫なんですか?」

「少なくともキミが居た世界よりは環境が悪くなるかもな。その世界でどう生きるかはキミの自由だが、より高度な文明が発展している世界に飛ばそうとすると、その世界の知識をある程度与えなきゃいけない。そうすると、瞬間的に学習させる事になるから、最悪魂が持たずに廃人に近い状態や記憶喪失の状態で送る事になる。生まれ変わるもそのまま行くのもなんとでも出来るから、その辺は問題無い」

「なんとでもって、なんかそこはかとなく不安があるんですが…………」

「大丈夫だ、俺は神だから」


 うん、やっぱり不安だ。


「このまま飛んでもいいなら、その方がいいですけど………。せめて飛ばされる世界のある程度の内容を聞いておきたいんですが………。僕の世界の小説に出てくる様な中世の感じの世界ですか?」

「あぁ、候補としてはそんな所だな。キミの住んでた世界と違うのは、魔物が出るところか。冒険者なんて職業も存在する感じだな。あとは………、基本的な武器は剣とか槍とか弓だが、銃がある」

「………は?銃ですか?」

「そう、銃。それもキミの世界では古臭い先込め式の銃じゃなくて、マガジンに弾を装填しておいて、連射出来るタイプだ。簡単に手に入るわけではないが」


 意外なものが出て来た。いや、金属を使った加工技術と火薬の製造技術がそれなりに発展していれば、先込め式で火縄銃的なモノや大砲だったりは作れるだろうが。まさかの連射可能なモノがあるとは。あれって、ニトロみたいな衝撃性の燃焼剤が必要じゃなかったっけ?


「あとパソコンがある。キミの世界みたいに自由に情報が手に入ったりする様な便利なモノではないけどな」

「は?えっ!?」


 さすがにちょっと混乱した。

 中世の世界観に、連射可能な銃があり、パソコンがあると。

 ………………理解出来てないけど、とりあえず『異世界だから』で納得しておこう。だって、


「詳しく説明するのは面倒だから、行きたいんだったらその時にキミ自身で確かめてくれ。それよりも、せっかくだから恩恵でも授けようか?」


 説明してくれる様子は無く、放り投げられる疑問。

 今は疑問を横に追いやっておいて、半ば一方的に問いかけられる形だが、何かを頂けるらしい。


「恩恵、ですか?」

「そう、恩恵。何もしなくても過ごしていける位の金でも、聖剣みたいな最強の武器でもいいぞー」


 『いいぞー』って。

 さっきから話してる感じで思ってはいたが、この神様かなり適当で投げやりだな。

 まぁいいや。なんかくれるんならもらっとこう。聞く限りチートみたいだし。


「えっと、とりあえず当面は過ごしていけるだけのお金は欲しいです。それと、魔物も出るって事なので身体能力を上げて欲しいです。もしくは鍛錬した分は習得出来る様にして欲しいです。後は、出来ればで良いんですが、初期装備で銃が欲しいです」

「ふむふむ、構わないけど銃は何が良い?マシンガンとかライフルとか」

「出来れば拳銃が良いです。オートマチックで二丁。魔物相手には威力不足かもしれませんが、ライフルみたいな中距離射撃のモノより、取り回しやすく汎用性が高いハンドガンタイプがいいかな、と」


 要望を伝えると、神様はこちらに眼を向けず『問題無い。他には?』と言ったので、少し考えて、その世界にはパソコンもある事を思い出した。


「パソコンがあるって事なので、僕が元居た世界のページを見れる様には出来ますか?」

「キミが操作した時だけ見れる様に出来るよ。掲示板に書き込んだり友達にメールしたりの干渉は出来ないけど。それだけかな?」

「あ、ノートパソコンも出来れば欲しいんですが…………」


 『ノートパソコン?』とさすがにこれには首を捻る神様。どうやら異世界にはノートパソコンは無い様だ。


「うーん………。ま、いっか。大丈夫だろう。わかった、ノートパソコンも渡しておこう。でもタブレットとかスマートフォンとかじゃなくていいのか?」

「ガラケーしか使ったことが無いんで」


 小遣いがもらえる環境ではなかったし、高校入ってようやくアルバイト出来る様になって自分で携帯料金払ってたし。基本料金の高いスマートフォンは、さすがにきついとすぐに諦めたからなぁ。

 パソコンなら中学から授業にもあったからある程度は使えるし。


「………ふむふむ、よし!こんなもんか?だったらそろそろ飛ばすぞ?準備はいいか?よし行って来い!!」

「え?あの………!」


 こちらに同意を求めた様で、返答する間もなく神様が片手を上げる。

 すぐに体が光り始めて、包み込む様にしたところで神様の姿も霞む様に見えなくなっていった。


 ………おぉい!今あくびしてたぞ神様!!

 ………………選択肢、間違えたかな?

色々な方の作品を読んでいて、書きたくなったので書き始めた作品です。


拙い文章かもしれませんが、よろしければこれからお付き合い下さると幸いです。

……多くの方に読んで頂けるよう、面白くなる様に頑張っていきます。

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