表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短めに  作者: 冬野周一
1/1

カッパドキア

 散髪をするのは久しぶりの様な気がする。確か年末以来だから三ヶ月余りになる。

 外はポカポカと春の陽気で暖かい、車の中はすでにエアコンが入っている。

 

「いらっしゃいませ」「どうぞこちらのお席に」と待つこともなく黒い背もたれ椅子に腰を降ろした。

「いかがいたしましょう?」

「短めにお願いします」

「どのくらい切りましょう?」

「短ければ構いませんから短めでお願いします」

「・・・・・」

「では少し切ってみますので確認をお願いいたします」


 若い店員は愛用の鋏を右手に持ち、左手で櫛を入れながら切り始めた。

「シャキッ!」と切り応えのある音がした。

「・・・!しまった切りすぎてしまった!かな?」

「まあこれくらいならまだ大丈夫、よしこの長さで揃えていこう」と店員は胸の内で独り言をつぶやいた。

「シャキッ、シャキッ、シャキーン!」手入れを良くしているので切れ味は抜群である。

最初に右側から、やや刈り上げ風に切ってみた。そして後ろにまわって首筋を刈り上げていった。

 そして左側にまわり、鏡で確認しながら揃える様に切っていった。

「こんなものかな」「うん?まだ長いな」「シャキシャキ、シャキーン」

 今度鏡で見てみると「あれー?左が短すぎないか?」

 お客様は目を閉じたままで何も見ていない。

「よしもう少しだけ右を短くしてみよう」


「シャカシャカ、シャッー」と軽快な音が10分程は続いただろうか。

「お待たせいたしました」と若い店員が声をかけた。


 そして鏡を見た瞬間

「うぎゃーーー!!何だこの頭は!?」

 鏡に映った姿は「カッパ」の髪型に変わり果てていた。


「大丈夫ですお客様、今このスタイルが流行です、これはカッパドキアと呼ばれ人気なのです」

「カッパドキア?どこかで聞いたような」


 若い店員はほんの二週間前に「トルコの世界遺産ツアー」から帰ってきたばかりだった。

 そしてそれはただの言い訳に思いついたヘアスタイルでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ