【短編】異世界に落下した俺は 外伝(後編)
【短編】異世界に落下した俺は の外伝になります。
壮絶なネタバレなので、本編を先に読まれることをオススメします。
人によっては蛇足に感じると思いますのでご注意ください。
私たちは世界を救うピースを手に入れた。
それは私達と同じ人間だった。
理性も知識も持っていた。
持っていないのはステータスだけ。
しかし私たちは彼を研究対象として扱った。
実に非人間的だ。
それでも世界を救うためという免罪符を振りかざして実験を繰り返す。
救えるという確証も無いままに。
最優先で行われた研究は以下の2種類だった。
1.ステータスが存在しない理由の解明
2.彼が住んでいた世界へのゲート接続
1つ目の研究はスムーズに進んだ。
私たちの世界は魔力によって構成されている。
ステータスの変化は物質の魔力含有量の変化で現れる。
世界というシステムのアシストは魔力に対して行われるためステータスが高い=魔力含有量が高いほど大きな力が出せる。
実験の結果、彼の体には一切魔力が含まれていなかった。
未知の物質は大量に含まれていたがそれだけだ。
魔力が無いとステータスは発生しないため、彼にステータスが無いことの原因は判明した。(※1)
2つ目の研究は進んでいない。
彼が現れた瞬間の空間変動データを取得できなかったためだ。
それなりに高価な賢者の石を使って過去を視てみたが記録されていなかった。
世界にとっても想定外の事象だったのだろう。
仕方ないので12次元カッターを山ほど買ってきて世界の果てを切りまくっているが現象は再現できていない。
「あっ!」
今度は何やったの!?
「うわーっ!!」
彼の部屋から声が聞こえたので即座に転移。
すでに部下が何名か来てバイタルチェックをかけている。
どうやらゲートの座標設定に失敗して彼の手首から先を吹き飛ばしたらしい。
部屋に完全修復のスキルを設置しておいてよかった。(※2)
”バサッ”
何かが落ちた音がしてその方向を見ると本が1冊あった。
「銀弾の続き読みたかったんだよねー」
ペラペラと彼が読み始めた。
弾かれるようにその本に鑑定スキルをかける。
部下の一人が鑑定スキルを使ったらしく驚いた顔でこちらを見ている。
コクリと頷く。
”やったーー!!”
”きたああああ!!”
喝采が沸き起こる。
彼女は祝福されていた。
「いやーてれますねー」
ムカつくのであとで叱っておこう。
”パンパン”
手を叩いて注目を集める。
対応を協議するため会議室に全員を転移させる。
そこで彼女から詳しい話を聞いた。
今後の展開に気づき全員が苦い顔になる。
彼女が分かってないようなので教える。
「彼の全身を触媒にしてゲートを開く」
彼女が顔を青くして反論する。
「そんなのだめに決まってるじゃないですか!」
手のひらを吹き飛ばしたお前が何いってんだ。
現場の権限を超えているため上部組織へ報告した。
回答は1時間後にきた。
世界政府の承認とともに。
即座に実施に移す。
彼女は亜空間に隔離しておいたがどこからか出てきた。
毎回どうやっているのだろう。(※3)
「責任を持って見届けます」
と、言っているので信じてみる。
彼を世界の中央付近のラグランジュポイントに転移させる。
「君をこの世界を救うための礎とさせてもらう。」
彼は何のことやらという顔をしていた。
「この罪は私が一生背負っていく。
決して忘れない。」
このあたりでなんとなく気づいたらしく達観した顔になる。
「すまん。」
手をあげる。
準備していた複数のゲート専門家が彼を中心にスキルを使用する。
彼女は、最後までは見てられなかったか。
スキルの発動に巻き込まれないように離れる。
300メートルの光の円が球状に回転する。
音もなく光の円が弾ける。
光が収まると直径100メートルの光の円の中に暗黒の空間が開いていた。
世界100年の悲願が達成された瞬間だった。
<終>
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(※1)
この設定を考えていたときに突き当たった命題があります。
路端の石ころにステータスはあるのでしょうか?
自分の答えは「ある」ですが、皆さんはどう考えますか。
(※2)
治癒、再生、修復、回復のどれがいいのかなあと考え修復にしました。
設定に合ってたかなあ。
(※3)
亜空間をくすぐったり、くしゃみさせたりして、その隙に出てくるんだそうです。
やっと後編を投稿できました。
グッドエンドなのかバッドエンドなのかよくわからない結論となりましたがどうでしょうか?
自分としては、面白くないけど読めなくはないという微妙なところかと。
この設定での話はこれで終わりです。
彼はどうなったのか。
ゲートの先はどうなっているのか。
本当に世界は救われたのか。
そこら辺は投げっぱなしですが。
次回がアレばもう少し明るい話にしたいかなあ。