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逆行ナイト~残念な兵士が神の手借りてやり直すってよ~  作者: 怒らないから言いなさいと言う裏切り者
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第3話 召喚獣、命名

今回で悲しき生物騒動は終了します。

「オォ.....オォォ.....。」


信じたくないが、俺が召喚したであろう悲しき生物がこちらに足を運ばせてくる。

ゆっくり、ゆっくりと這いずる様に懸命にこちらに近づいて来る。


「下がってください!!」


教官が声を荒らげて悲しき生物に杖を向ける。


「教官、なんなんですか?この生き物は。」


「あなたは先程、詠唱を一部逆に読んでしまいました。その場合本当は光に準ずる『聖獣』の類いを召喚する筈なのです。

しかし、あなたが詠唱を間違えてしまったせいで『闇の眷属』と思われるもの......。すなわち『魔獣』の類いを召喚してしまったのです。」


なるほど、よく分からない。

簡単に言うと、光の生き物を召喚するつもりが俺のミスで闇の生き物を召喚してしまったという訳か?

そんな.....俺の.....俺のたった一匹だけ召喚することを許された召喚獣が.....闇の生き物とか.....。

神は確かに俺を救ったかもしれない。だが、世界が俺を陥れようとしてくる。

俺は跪いて項垂れてしまった。あぁ、泣きたい。


「お気持ちは察しますが、今はすぐにでも逃げてください!!」


鬼気迫る表情で俺に叫ぶ教官。

そしてなおも俺に向かってゆっくりと健気にその足を進め続ける悲しき生物。


「オォ.....オォ......。」


疲れたのか、悲しき生物はへたりこんでしまった。


「フレア!!」


短く魔法名を言い、火球を作り出して悲しき生物に放つ。

避けることもせず火球が直撃する悲しき生物。


「オォ.....?オォォオ!!!」


しかし効いた様子は見せず、逆に元気になって立ち上がり、のしのしと先程より幾分か軽やかな足取りでこちらに近づいて来る。


「こいつ、魔法を吸収するのか!!」


その様子を見た教官は驚愕する。

それもそうだ。魔法を吸収するということは、教官では手も足も出ないことを意味する。


ジリジリと近づいて来る悲しき生物。


教官を素通りし、俺の足元で立ち止まる。

そして、制服の裾をその手で引っ張る。

何かを伝えたいのだろうか。


「離れなさい!!魔獣!!」


そんな悲しき生物を蹴り上げて壁まで飛ばす教官。

魔法使いとは思えない位綺麗なキックフォームだ。少なくとも俺よりは綺麗に決まっている。

悲しき生物は普通に立っていた。平気そうだ。

目をフッと閉じ、次にカッ!!っと開いたと思ったら。


「オォォオオオ!!!」


本気を出した様にカサカサカサカサ!!!っとまるでゴキブリの様なスピードで動き回る。

先程と比べると凄い進歩だ。進歩なのだが......。


「き、気持ち悪い!!」


あ、本音が出てしまった。

俺にはゴキブリにしか見えなかった。


「オォ!?」


俺の言葉に反応したのか、若干ショックを受けた様だ。

.....なんだか悪い気がしてきた。

トボトボと歩いてくる悲しき生物。

悲しき生物と呼ぶのもあれなのでもう名前を付けることにする。


「よし、お前は今から『ジル』だ。良いな?」


「オォ!!オォォォォ!!!」


名前は俺の名前を削った安直な名前だ。

それでも嬉しいのかジルはピョンピョン跳ねている。

まぁ、跳ねてはベチャッ。跳ねてはベチャッ。っとなっているが。


「名前なんて付けている場合ですか!?」


後ろの教官が叫ぶ。なぜ後ろにいるんだあんた。

しかも涙目で。あれか?さっきのカサカサカサ!!!ってやつで怖くなったのか?


「いや、俺にとっては唯一の召喚獣ですし、もう殺す必要も無いかと思いまして。

それに、こういうのは早めに受け入れなければ後悔するかもですし。」


そう、俺にはそんな経験がある。

あれは確か兵士になって少しした頃だった筈だ.....。



☆☆☆☆☆☆



その時俺は任務として同期10人くらいでまだ幼い王子の護衛をしていた。

当時、俺は周りから残念残念と言われて少し気がおかしかった。

そんな俺が廊下を歩いていると、目の前に綺麗な白猫が現れた。

その猫は俺に擦り寄ってきた。喉を鳴らして気持ちよさそうに俺の足に顔を擦り付けた。

俺はその時こう思った。


「まさか、誰かがこの猫をけしかけて俺が撫でた所を噛ませる気か!?」


いや、そんなこと魔法を使っても難しいしそもそもやる理由も無いのだが。

俺は疑心暗鬼になっていたせいで一方的にそう思い込んだ。

俺はその猫を追い払った。


「どっか行け!!」「ニャァ....。」「うるさい!!さっさと飼い主の所へ戻れ!!」


猫は落ち込みながらトボトボ帰っていった。

俺はスッキリして、鼻歌交じりに部屋に戻っていった。


後日、あの猫は王国の幼い王子のペットだったことが判明。

その猫を見つけて王子に渡した友人は報奨を貰い、出世も約束されたも同然な程に王子に気に入られた。

事実、その友人はそれから少し成長した王子のお付きの護衛になった。

安全な場所で王子とそのペットの白猫と仲良く話し相手になれば一日が終わるという楽な役職に就いた。

この出来事から俺はある教訓を得た。


『動物に悪意は無い。その好意は素直に受け入れ、縁も大切にした方がいい』

.....まぁ役に立つことは無かったが。



☆☆☆☆☆☆



こんなことが過去にあって、俺は動物には優しくなった。

ジルが俺の頭に乗っても許せる位には優しい。

教官は引いているが。


「そ、それが召喚獣でい、良いんですか!?」


「えぇ、何かの縁かも知れませんし、な?ジル。」


「オォォ!!」


こうして俺の魔法探しは、召喚獣を1体手に入れることで終了した。

それからジルは普段は俺の部屋のベッドの上に乗ったり、寝たりしてお留守番をしてもらっている。

あれ頭に乗せたまま食堂に行ったら、「ジルトが何かに寄生されてるぞぉぉぉおおお!!!」と大騒ぎなった。

結果、『魔獣の飼い主』とか二つ名が付いた。

少しカッコイイので良しとする。



☆☆☆☆☆☆


訓練兵士『ジルト・ベスパット』


状態:健康


二つ名:王国一残念な兵士→『魔獣の飼い主』


召喚獣:悲しき生物→『ジル』

ドロドロした何かに手足が4本付いた魔獣(?)

普段足は遅いが、本気を出せば部屋の中をゴキブリの様に縦横無尽に走り回る。その後疲れてへたりこむ。

魔法を吸収する。それをエネルギーにも変換できる様だ。



☆☆☆☆☆☆

結構長くなりましたね。

またジルトの残念エピソードが1つ浮き彫りになりましたね。

この調子でバンバン思い付いて欲しいです。

頑張れ、作者の脳みそ。

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