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薪割りスローライフをはじめますか?[はい/いいえ]  作者: 新木伸


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ターン49「結びの儀」

 数年が過ぎた……。


 そして、僕たちは16歳になった。

 いつものコープ村。いつもの昼下がり。

 僕はいつものように、マイケルの家に向かうところだった。


 16歳になって、もう昔みたいに、セミやカエルやザリガニを捕まえにいくような遊びはしなくなった。

 女の子たちは12歳くらいの頃にはもう卒業していたみたいだけど。

 男の子の僕たちも、16歳になったいまでは、すっかり卒業だ。


 昔は、午後になれば、すぐに野山にダッシュしていた。

 最近はそういうこともなくなった。


 僕は薪割りの仕事は午前中に終わるので、そのあとは、村をぶらぶら。

 なにか手伝えることを探して回ったりしている。荷運びから、屋根の修理から、店番まで、臨時のお手伝いの仕事があれば、なんでも手伝っていた。


 おじさんやおばさんは、僕が仕事を手伝うと、うちの仕事を継がないか――とか言ってくれる。

 でも僕の仕事は薪割りだから。他の仕事はできないよねー。


 マイケルとはずっとトモダチ同士。

 最近、マイケルは、よくおばさんから、「仕事しなさい」って言われてる。


 昔からよく言われていた、ヤギの乳しぼりの話ではなくて、なんか職を見つけろとか、そういう話。

 職人に弟子入りしたり、店屋さんに入って教わったり、開墾して自分の畑を持ったり、なんかそんな感じ。


「あらカインじゃないの。めずらしいわね」


 おばさんは僕の顔を見るなり、そう言った。

 そうだっけ? めずらしいかな?


「マイケル? ――いまいないよ。まったくあいつ、いったいどこでなにして遊びまわっているんだか。ねえ探してきてくれない? とっつかまえて、ひっつかまえて、そして言っておくれよ。とりあえずヤギの乳しぼりをしろって」


 僕は遊びにきたんだけど。

 おばさんにマイケル探しを頼まれてしまった。

 うーん。困ったなぁ。

 とりあえずマイケルを探すかな。


     ◇


 マイケルのうちをあとにして、僕は村の中を歩きはじめた。


 村の中はいつも通り――でもなくて。

 なんだかいつもと、ちょっと雰囲気が違う。


 なんだかみんな……? うわついている感じ?


「聞いたかい? 聞いたかい?」


 うわさおばさんが話しかけてきた。

 僕はなんかようすが違うことを、おばさんに聞いてみることにした。

 おばさんは、うわさ好きなだけあって、色々なことを知っている。この村のことなら、なんでも知っていると言っても過言ではない。


「え? なんか村のようすが変だけど、おばさん、なんか知らないかって?」


 →[はい]


「わたしは聞かせるのがシゴトなんだけどねえ。聞かれたのは、おばさん、長いこと生きてきて、はじめてかもしれないねえ」


 シゴトなんだ。あと、はじめてなんだ。

 うわさおばさんの、はじめての人になっちゃったな。困ったな。


「村がうわついてるって、あたりまえさね。――今年も結びの儀が、もうすぐじゃないのさ」


 結びの儀?


 ……って、なんだっけ?


 なんか聞いたことある気がするなー。まえに。


 ……なんだったっけ?


「え? あんた、結びの儀も知らないの? この村に何十年も住んでて?」


 いや。何十年は住んでないと思うよ。

 5つの頃からだから……。ええと。

 10年とちょっとだね。11年だね。


 昔は引き算をするには、小石を並べてみなければならなかったけど。

 最近は頭の中だけで出来るようになった。

 えっへん。


 この村には学校はないけど、キサラみたいな頭のいい子から教わった。


「ふぅん……。ま。あんたは、女の子に興味とか、なさそうだしねえ。でもマイケルは大変だよねえ。マイケルはフローラのことが大好きなんだって、村中で、もっぱらのうわさだよ」


 それ本当に村中でうわさなのかなぁ。

 うわさおばさん業界のあいだで、もっぱらのうわさなんじゃないかな。

 あとマイケルがフローラを大好きなのは、僕はずっと昔から知っていた。

 ええと……。10年以上前。


 11年前から、ずっと知ってる。


 そしてフローラもマイケルのことが大好きで――。


 ああ。そうだ。

 僕はマイケルを探していたんだっけ。

 おばさんに言われたヤギの乳しぼり。伝えてこないと。おばさんと約束だし。


 じゃあね。


 僕は、うわさおばさんに手を振って、道を歩きはじめた。

書籍収録(2巻)の加筆分であるため、選択肢はありません。

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