ターン47「村長さんとぼく」
「あれはワシが、十七のころじゃった……。当時、武者修行に出ていたワシは――」
きょう、ぼくは、村長さんの家に遊びにきていた。
村長のおじいさんは、ぼくの恩人。
ずっとずっと前、五歳の頃のぼくが、行くあてもなくぼんやりしていたとき。
家と、薪割りの仕事をくれたひと。
そのおかげで、ぼくはこの村に居場所ができた。
とても感謝してる。
感謝してるから、ってわけじゃないんだけど。
ぼくはたまに村長さんの家に遊びにくる。
そして村長さんの話を聞く。
「――そのとき、わしは、襲いかかってくる者どもを、ばったばったとなぎ倒し――、ちぎっては投げ、ちぎっては投げの――」
村長さんの昔話は、とっても長い。
しかも延々、同じところを何度もループする。
皆は嫌がって、げっそりして、「ぜったい行きたくない」とか、「無理」とか、「いっそ殺して」とか、「ヤギの乳しぼりやってたほうがマシ」とか言うんだけど。
ぼくは結構、楽しい。
指を折って数えてる。今日はなんかいループするかなー、と数えていると、けっこう、楽しい。
あと、もうひとつ楽しみなこともあって――。
「はい。おやつの時間よー。んーん? 疲れちゃった? いい子には、おいしいおやつよー」
村長さんのとこでお手伝いをしているお姉さんが、おやつを出してくれた。
わーい。おやつだー。
ぼくはおやつを、ぱくぱくと食べた。
村長さんは気にしない。昔話を語るのに夢中。ぼくはおやつに夢中。
これけっこう、いいコンビだと思う。
「わしは、さらわれた娘さんを助けるために、単身、山賊どものアジトに乗りこんで行く決意を――」
あ。また頭に戻った。
指を折らなきゃ。数えなきゃ。
でも両手の指をぜんぶ折っちゃったら、どうしたらいいんだろう?
そっか。足の指を折って数えればいいんだ。
ぼく。あったまいー!
「村長さぁ~ん、道具屋の方が見えてるんですけどー。なにかクレームみたいですよぉ~」
「おお。そうか。すぐ行くわい」
お姉さんが呼ぶ。村長さんは、よっこらしょ、と言いながら、椅子から立ちあがった。
なんでおじいさんやおばあさんは、よっこらしょ、っていうのかな?
村長さんは、村の色々な人の話を聞いて、仲をとりもったり、仲裁したりするお仕事をやっている。
あっちを立てるとこっちが立たない。
村長さんは、どちらも立てるような、うまいところに着地させる。
「そういえば。まだ話したことはなかったな。そこの部屋のすみにある宝箱じゃが。そこには、ワシが冒険していたときの装備が入っておるのじゃ。……伝説級じゃぞ?」
あれ? 村長さんの話。これは、はじめて聞く話かな……?
「ふっふっふ……。見たいか? 見たいじゃろう。そうじゃろうとも。でもだめじゃ」
見たいって、べつに、言ってないけど……。
「その装備は、ワシの伝説を受け継ぐにふさわしい、見込みある若者にしか譲らないと決めておるのでな」
「村長さあぁ~ん!」
お姉さんの声がかかる。
「おお! いま行く! いま行く! ――せっかちじゃわい!」
村長さんは行ってしまった。
最後に、一度、ぼくを振り返って――。
「よいか? 見てはならぬぞ? ――決してな?」
村長さんは、行ってしまった。
村長さんは、あんなことを言っていたけど……。
宝箱を開けて、見てみますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/730240559843921921
本日夜の更新は、ちょっと微妙です。明日の朝9~10時には更新あるかと思います。




