ターン44「皆をぱしゃり」
ぼくはキカイを手に、村の中を歩いていた。
最初になにを撮ろうかなー、誰に出会うかなー、と、思いながら、てくてくと歩く。
特になにも決めないで、フィーリングに任せて歩いてゆく。
分かれ道があると、やっぱりフィーリングだけで、「こっち!」と決めて、そっちに歩く。
なんだか。ワクワクする。
教会のほうに来ちゃったけど……。
ユリアさんは、いないみたい。
ホウキを持って教会の前を掃除していたら、ユリアさんのいいところ、一枚、ぱしゃりと撮ろうかと思ったんだけど……。
教会の裏手に回ってみたら――。
いた。ユリアさん。
窓から見えるユリアさんは、お皿に載せたおやつを前に、なにか、考え事をしているようだった。
「神父様のおやつ……、一個、減っても、わからないわよね? ……わよね? ああ。神よ。おゆるしになられますか? ……なられますね?」
一個、ぱくりと食べちゃった。
ぼくはその〝けっていてき瞬間〟を、ぱしゃりと撮った。
「え?」
その音で気がついたのか、ユリアさんが、こっちを見た。
まつげの長いユリアさんの目が、ぱちくり、ぱちくり。
「い、いえあの……、ちがうんです」
ユリアさんは、なんか言ってる。
じーっ、と、紙が出てきた。うん。ちゃんと撮れてる。
「ですから、あの……、これは違うんです」
ユリアさんは、まだ、なんか言ってる。
ぼくは、ちゃんと撮れてたことを、見せてあげた。
ユリアさんのいいところ。おいしそうなところ。
「えっ! なにそれ!? なんで私が――? カインさん!? それ、こちらに――。ちょっとそれ見せてくれるかしら? ――見せなさい。――こら! お待ちなさい!? 待って、待ってーっ!?」
ぼくは、ぴゅー、と、逃げていた。
なんかユリアさん……、怒ってた?
いいところ撮ってあげたんだけどなー。
◇
「ちょ――ちょっと! ちょっとちょっと! なにしたの! なんであたしが写っているの!?」
キサラも撮ってあげた。
暇そうに店番して、大あくびしていたところを、撮ってあげた。
ぼくはまた、ぴゅーっ、って、逃げた。
◇
「だ、だいじょうぶ……、ですよね? へいきですよね? 三秒以内だし」
ロッカは地面に落としちゃったお菓子を、ひろって、食べてた。
ぱしゃり。
◇
「え? あたしぃ? え? やだちょっと、これ見えて――!?」
アネットと出会って、木から、ひょいと飛び降りてくるカッコいいところを、ぱしゃと撮った。
見えてる? なにが? カッコいいよ?
飛び降りてくるところを、下から撮って――自分でも、〝げいじゅつてき〟だと思うんだけどー?
「だ、だってこれ、ぱ、ぱん……」
ぱん?
「だめ! かえして! それかえしてー!」
ぼくはまた、ぴゅーって、逃げた。
◇
「ちぇ。失敗しちゃったー。また作り直しだー」
マリオンは鍛冶の仕事を失敗しちゃったみたい。
そこを、ぱしゃり。
◇
ぼくは追い詰められていた。そろそろ逃げ場がなかった。ピンチだった。
「あ、あのね? カインさん? あれは違うのよ。違うのよ? ね? わかるでしょ? わからなくても、わかりなさい?」
ユリアさんがすごくコワい笑顔を浮かべている。
「カーイーン……!!」
キサラがなんでか怒ってる。
両腕を上に差しあげたあのポーズは、カエル魔法のポーズ。
「カインさぁぁん、ごめんなさい……、だってだって……、もったいなかったからぁ……」
ロッカがベソをかいてる。
泣かしちゃうようなこと、ぼく、なんかしたっけ?
「あっ。あっ。あっ。やだあのその。……イヤじゃないけど。……恥ずかしいし。だから返して」
いつも元気なアネットが、めずらしく、恥ずかしがってる。
さっき撮ったやつだよね? なんで? カッコいいのに?
「どうせだったら、カッコいいところ撮ってほしかったなぁ。失敗じゃなくて」
失敗してもマリオンはカッコいいと思うよ。失敗は成功のもと、って言うよ?
「カイン君~っ。カメラ勝手に持っていったでしょ? あれ、動力の原子力電池がまだ不安定だからー。たくさん撮ると、爆発しちゃうよー。だから返してー」
これ。〝かめら〟っていうのかー。
すごい発明だねー。これー。
「だから爆発しちゃうってばー。この辺一帯、クレーターができちゃうってばー。ほらっ。――返して」
皆が手を出して、迫ってくる。
ぼくの撮った〝めもりある〟を返せと言ってくる。
返しますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/729495003983024128
今夜の更新は、ビミョーです。できるかな? できるといいなっ




