ターン42「ロッカとあばれうま」
「あばれウマだーっ!」
誰かが叫ぶ。悲鳴もあがる。
村の中は騒然としていた。
一匹の「あばれウマ」が村の中に入ってきて、暴れているのだ。
ウマはいつもはおとなしい生き物なんだけど。
興奮して暴れると手が付けられなくなる。
柵を蹴っ飛ばして壊して、家にぶつかって壊して、あちこち大変なことになっていた。
みんなは、ウマにはねられないように道から避けている。
ぼくはマイケルと一緒に駆けつけて、すごいなー、すごいなー、と見ていた。
すごいすごい。ウマすごい。ウマつよい。
すごい。もっとこわせー。
「だめだろ」
マイケルが、ぼくの頭をぽかんと叩いた。
そうだね。だめだね。
壊すのよくないね。おうち壊れたら、壊れた人が困るよね。
でもあとでみんなで手伝って直すから、ちょっとくらい壊れてもいいんじゃないかな? すごいし。
ぽかん。
そうだね。だめだったね。
「あのウマ。どうにかしないと。村中の家が壊れちゃうぜ」
マイケルが言う。
ちょっと見てみたいとか言うと、マイケルにまた怒られるので、ぼくはそれを、ぐっとガマンして飲みこんだ。
「あと。ケガする人がでてくるぜ」
それはだめだ。
家が壊れるくらいなら面白くて楽しみだけど。
人がケガするのは、それは絶対にだめだ。
「お? ――おいおい! おまえ! どこ行くんだよ!」
ぼくがなんとかする。
「なんとかって! どうすんだよ! 俺たちコドモになんとかできるわけないだろ! オトナにまかせておけって!」
ぼく。もう12歳だからオトナだし。
誰かがどうにかしなくちゃならないなら、ぼくがやったっていいわけだし。
ぼくは道に出た。
走ってくるウマに、立ち向かおうとすると――。
「どいて。わたしがやるわ」
キサラが僕の前に立った。
長い足をすっくと踏ん張って、爆走してくるウマのまえに、毅然と立つ。
キサラ。かっこいい。
キサラは、すっと両腕を頭上に差し上げると――。
ウマに向けて振り下ろした。
「カエルになっちゃえー!!」
でた! キサラの魔法! カエル魔法!
そっか。あばれウマをカエルにしちゃえば、あぶなくなくなるよね。カワイクなるよね。
――でも。
「なんでなんでなんでーっ!! なんできかないのーっ!!」
キサラが叫ぶ。
魔法はウマに命中したが、ウマはそのまま走ってくる。
カエルに変化しない。
「なんでーっ!」
キサラの魔法より、あばれウマのほうが、強かったってことじゃないかな?
ぼくたちは二人で逃げた。道を走った。
ウマは追いかけてくる。
「も! ヤダーっ! ウマきらーい!」
キサラは、あんまりカッコよくなかった。
「あたしにまかせて!」
道の前方にマリオンがいた。
腕をかぽーんかぽーんとやって、準備運動。
ぼくたちはマリオンの両脇を駆け抜けた。
マリオンにまかせた。
「さあこい! 勝負だっ! あばれウマ!」
マリオンは、突進してくるあばれウマを、正面から――受け止めた。
すごい。力比べだ。
すごい。すごい。すごい。マリオンすごい。
あばれウマを止めて――。
ぽーん。
マリオンは跳ね飛ばされた。道ばたの茂みに落ちてゆく。
「やっぱムリだったー」
茂みの中から、そんな声が聞こえる。
マリオンは、あんまり、カッコよくなかった。
「ウマきらーい!」
ぼくとキサラは、また走った。
「カイン! あんた右に逃げなさいよ! あたしは左に逃げるから――って! そっちは右! フォーク持つほうが左でナイフが右! なに? ナイフもフォークももったことない? もう! ばかーっ! ばかーっ!」
キサラは半ベソで叫んでいる。ハナミズでている。カッコよくない。
二人で逃げつづけて、大きな木の下を駆け抜けたときだった。
「はァーッ!!」
木の枝から誰かが飛び降りてきた。そしてウマの背中に飛び乗った!
アネットだ。
木の上で待ち伏せをしていて、ウマの背中に飛び乗ったのだ。
「はーっ! はいどぅー!」
アネットは、あばれウマを乗りこなそうとしている。
あばれウマのほうは、荒っぽく飛び跳ねて、背中に乗ったアネットを振り落とそうとしている。
狩人のアネットが、馬を調教しようとしている――!?
二人の勝負は、しばらく続いていたが――。
やがてアネットが、ぽーんと、飛ばされた。
「きゃーっ!」
ぼくはアネットを受け止めた。
「ご、ごめん……、だめだったー」
ぼくとアネットとキサラと、三人で、おたがいをかばい合うようにして立った。
あばれウマは、ぼくたちのまわりを回っている。
ブルルルッ――!!
と、うなり声をあげながら、大きなひづめで、かつかつと、地面を蹴っている。
「あれー? みんなどうしたんですかー?」
なんか、のんびりした声が、横のほうから聞こえてきた。
この場の状況に、なんだか、ぜんぜん、ふさわしくないんだけど……?
「え? わたしですかー? わたしは、ほらー、薬草摘みにー」
ロッカは手にした草を見せてくる。
やっぱり危機感ナッシング。
そこでいま、あばれウマが、ブルルッ!! ――ってやってるのに、まるで見えていないみたい。
ロッカ!! あぶない!!
身を挺して、ロッカをかばいますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/729113425859649536
つぎは、本日、夜21~22時に更新です。




