→[はい]
→[はい]
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ぼくはアネットを追いかけることにした。
ごめんねー。フローラ。
手を合わせて、拝む。
「それでいいのよ。カイン」
フローラは柔らかく微笑んでくれた。
ん? アネットがいたことを気づいてなかったんじゃなかったっけ?
ま。いっか。
ぼくは、ぴゅーって走って、アネットの行っちゃったほうに向かった。
きょろきょろ。いない。
もっと走る。
また。きょろきょろ。
いた。
とぼとぼと肩を落として歩く、緑色のシルエット。
アネットだ。
「しらなかったー……、しらなかったー……、しらなかったー……、ちぇっ」
石を蹴っ飛ばしながら、アネットは歩く。
「カインのやつー、フローラが、好きだったなんてー……、ちぇっ」
また石が蹴られる。蹴られた石は、木になっていた果実にヒット。果実は地面に落ちてくる。
アネットは何気にすごい。落ちこんでいるときでもすごい。百発百中。
「リリーだったら、いいと思ったんだけどなー……、ちぇっ」
アネットはそんなことを言っている。
リリーはアネットのトモダチ。ふつうのトモダチじゃなくて、特に仲のいいトモダチ。〝だいしんゆう〟とかいうやつだ。
ぼくはアネットの肩に、ぽん、と手を置いた。
こんなに近くに来るまで気配に気づかないなんて、ほんと、アネットらしくない。
「わっ! わわっ! ――か、カインっ!?」
アネットはびっくりしている。
「な! な! な! ――なにっ! ――っていうか! ど、ど、ど、どこから聞いてたのっ!?」
うん? 「ちぇっ」が三回くらい?
「三回? 三回だけっ? ……じゃあ、あれは聞いてない?」
あれってなんだか知らないけど。
→[はい]
「あー……、よかったー……」
アネットは、ほっとしている。
あれってなんだろう?
ま。いっか。
「……で、なに? フローラのとこにいなくていいの? え? フローラはただのともだち? 勘違いしてる?」
→[はい]
どんな勘違いなんだか、よくわからなかったんだけど。アネットが勘違いしていることだけは、ぜったいだ。
「うっそだー。だって、さっき、抱き合ってたじゃん。ただのトモダチだったら、そんなことしないよ……」
アネットは寂しげに笑う。
ぼくはこの寂しそうな笑いを、止めたいと思った。
どうやったら止まるんだろう?
あっ。そうか。
こうだ。
「えっ? ちょ、ちょ――カインっ? ちょっ!?」
ぼくは、アネットを抱きしめた。
ぎゅーっ、って、やった。
ほら。アネットにもできるよ。トモダチだけど。
「わかった! わかったから! はなしてー! それアウト! アウトだからっ!」
なにがアウトなのかわからなかったが――ぼくは、離した。
アネットの顔がすごく近いところにある。
その顔は真っ赤だった。
「だ、だ、だめだよ、トモダチにそんなことしちゃ……。で、でも……、まあ、わ、わかったけど。フローラだけ特別なんじゃないって……、え? さっきのは? 肩にイモムシついてただけ? え? 抱きあってたわけじゃない? え? そうなの?」
→[はい]
「なーんだ……、そっかぁ」
アネットはわかってくれたようだった。
誤解はとけたっぽい。
よかった。よかった。
じゃあねー。ばいばい。
ぼくはアネットに手を振って、帰ることにした。
「え? あっちょっ――!? もう、カインは仕方のないやつだなぁ」
背中のうしろのほうで、アネットがそう言って笑っていた。
本日はこのあともう一本投稿予定です。
つぎはロッカあたりのいいところ見せる予定です。




