ターン41「フローラとあそぶ」
「あら。カイン。こんにちは」
いつもの昼すぎ。村の中をまっすぐ通る、いつもの道。
のんびり歩いていたら、フローラに出会った。
フローラは空色の服に、金色の髪が、よく似合ってる、かわいい女の子。
昔はぜんぜんわからなかったけど。最近は、〝びじん〟と〝かわいい〟は、なんとなくわかるようになってきた。
〝びじん〟っていうのは、顔立ちが整っている感じ。ユリアさんとかキサラとか。
〝かわいい〟っていうのは、女の子っぽいって感じ。ほかの村のなかの女の子だと……。あんまりいないよね。フローラくらい。
「きょうはマイケルと一緒じゃないの?」
フローラに聞かれて、ぼくは、首を横に振った。「いいえ」だ。
「ふふっ……、カインって、いっつも、〝はい〟か〝いいえ〟しか言わないのね」
ううん。カエルになったときには、いっぱい、しゃべったよ。
「わたし、いっつもカインにマイケルを取られちゃってるのよ? 妬けちゃうんだから」
フローラはそう言った。
やけちゃうって、なにが?
フローラはマイケルのトモダチ……っていうとは、なにかちょっと雰囲気がちがう。
なんていったらいいのかな?
フローラはマイケルのことが好きで――。
マイケルはフローラのことが好きで――。
そういうカンケイ?
こういうのって、なんていうんだっけ?
なんか、コトバがあった気がするんだけど。
ま。いっか。
「今日はカインのこと、取っちゃおっかなー?」
くちびるに手をあてて、フローラは言う。
とっちゃうって、どうするの?
「なにかして遊ぶ?」
女の子のあそび?
うーん……。
「……あっ。お花摘みとか。おままごととか。お人形さん遊びとかじゃなくてねっ」
うん。
そういうのは困るなぁ。ちょっと男の子にとっては、罰ゲーム的な感じ?
「でも男のコの遊びとかは……。わたしには、もう、ちょっと無理そうだから……。なにかほかにないかしら?」
フローラは昔はよく、ぼくとカインにくっついてきていた。「まいけるー、どこいくのー、あたしもいくー」と、よく、ぼくたらに、ついて歩いてきていた。
……マイケルについてきてたんだよね。
ぼくじゃないっけ。
罰ゲーム的なのじゃないなら、ぼくは、なんでもいいよ。
フローラの好きなあそびでいいよ。
「え? わたしの好きな遊びでいいって? ……ううん。わたしは、カインと一緒にいるだけでいいから。……カインと一緒にいて、マイケルを妬かせちゃうあそび。……って、わかる?」
→[いいえ]
「うふふ。カインは本当に、そういうところ、疎いんだから……」
フローラが笑う。
なにして遊ぶか決まってなかったから、二人で歩いた。道ばたの木の下で、座りこんで休んだ。
きょうは天気がいい。
ぽかぽかを通りこして、ちょっと暑いくらい。
木陰が涼しくて。風が吹いて。すごく気持ちがいい。
二人で木の下で、休んでいると。
あ。イモムシが落ちてきた。
フローラの肩のあたりにイモムシが落ちてきて、うにょこうにょこと、歩いてる。
ぼくはフローラの肩のところを、指差した。
「え? なぁに? カイン? どうしたの? その手には、ひっかからないんだから。あっち向いたあいだに、なにか、イタズラするつもりでしょう?」
いや。そうじゃなくて。イモムシ。
「うふふ……。だめよ。そういうのは、キサラとかロッカちゃんにやってあげないと」
ちがうんだ。だから。イモムシ。
ぼくは「はい」と「いいえ」以外は、苦手なので……。
イモムシのことを伝えるには、どうしたらいいんだろう?
うーん。うーん。うーん。
ぼくが悩んでいるあいだに、イモムシはフローラの肩から、襟のところまで、横断していた。
そして、襟のところで、立ちあがって――次に足のつける場所を探している。
いくつも生えている足の、いちばん先端の一対が――。
ぴと――と、フローラのほっぺに触れた。
「……?」
フローラが自分の肩を向く。
至近距離でもって、イモムシと、にらめっこをやって……。
「き……」
フローラが大きく息を飲む。
そして――。
「――きゃああああ!」
大きく叫んで、ぼくに飛びついてきた。
ぎゅーっと、首が折れるぐらいに、抱きついてきて――。
「とってとって! とってえぇぇぇーっ!!」
ぼくはイモムシを取ってあげた。
そんなに慌てなくていいのに。
毛虫だと刺されて大変だけど。
イモムシなら、刺してこないしね。
指でつまんで、木の幹に逃がしてやった。
ばいばい。
イモムシはわかっているのか、いないのか――。
いっぺん立ちあがって、足を何対か動かしてから――。
木の幹をせっせと登りはじめた。木の上のほうにもどってゆく。
そういえば、あそこから落ちてきたんだっけ。
木の上のほうには、きっと、おいしい葉っぱが、たくさんあるんだろうね。
ロッカだったら、イモムシとも、話……、できたりしたのかな?
動物とは話せても、虫とは、さすがに無理かな?
フローラは、まだ――。
ぼくに、ぎゅー、って、しがみついている。
ぶるぶると震えている。
もうイモムシいなくなったから、だいじょうぶだよ。
……って、どう言って伝えよう?
「はい」と「いいえ」と……。しいていうなら、どっち?
「げ。カイン」
声がした。
顔を向けると――。
獲物を肩にかけたアネットが、驚いた顔で立ちつくしていた。
でも、なんで、「げ」……、なんだろう?
「――と。フローラぁ!?」
アネットは、すっきんきょうな声をあげる。
ああ。そっか。
フローラが抱きついているんだっけ。
それでびっくりしてるのか。
困ったなぁ。フローラはまだ怖がってる。
ぜんぜん離れてくれないなぁ。
「あ、あの……、ご、ごめんねっ!!」
アネットはなにか謝りはじめた。
ちがうんだよ。これは。
……ええと。
→[いいえ]
ぼくは「いいえ」と言ってみた。
そしたら、アネットは――。
「そ、そうだよねっ……、ど、どっか行くねっ……。じ、じゃまだよねっ……。し、しつれいしましたーっ――!」
アネットは、ぴゅーって走って行っちゃった。
村でいちばん足が速いから、あっというまに、見えなくなってしまった。
なんかいま。ものすごい勘違いしてない? だいじょうぶ?
「……ああっ。こわかったっ……」
フローラがようやく落ち着いてくれた。
「え? アネット? アネットがどうかしたの?」
フローラは気がついていないっぽい。
ええと。……どうしたらいいんだろう?
アネットを追うべきなのか。フローラといるべきなのか。
アネットを追いかけますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
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次回の更新は、明日の朝9~10時の予定です。




