ターン39「ユリアさんの話をきく」
ある日。ぼくは教会にいた。
「……というわけで、神さまは、私たちを一度は滅ぼそうとしたのですが、魔神ラグーンが拳で説得をした結果、思い直し、私たちにもう一度チャンスを与えてくれたのです。私たちは、神さまがいつも見ていることを自覚しなくてはなりません。さもなければ、この世界は再び――」
ぼくはユリアさんの話を聞いていた。
……いや。聞こうとしていた。
でも眠くって。眠くって……。
「そして女神エルマーは、その無限の慈愛と寛大なる心で――」
ユリアさんは、神さまの話をしてくれている。
週に一回、こんなふうに、教会で神父さんとユリアさんは、神さまの話をする。
ユリアさんはシスターで、まだ正式な神官の資格は持っていない。儀式とかはしちゃいけないんだけど。でも「お話」だったらできる。
最近は、神父さまより、ユリアさんのほうが人気だ。
村の男の人たちは「きれいだから」とか言ってるけど。ぼくは話しかたが優しいからじゃないかと思う。あと、声がいいよね。
ユリアさんの声を聞いていると、心が穏やかになってきて――。
落ち着いてきて――。眠くなって――。
ぐう……。
すやすや。
「カインさん。カインさん」
やさしく揺り動かされる。
ぼくは、はっ、と、目覚めた。
また寝ちゃった。
これでもう何回目。
ユリアさんがぼくのために、特別に、お話をしてくれるのだから、がんばって聞いていようと思うのだけど。これがなかなか難しい。
これって「せっぽう」っていうんだって。
みんな、週に一回、教会でお話を聞くんだって。
でもぼくはマイケルと、その日は朝から遊び回っているので、ぜんぜん聞きに来ていなかった。
トンボとカエルとセミとザリガニと虫と。いろいろ捕まえるのに忙しくって。
そしたら、ユリアさんが特別に、ぼくにだけ「せっぽう」をしてくれることになった。
そういえば、マイケルはいいのかな? マイケルも聞いてないよね? ぼくと一緒に遊んでいるわけだし。
いいのかな……? ぼくだけで?
「そして勇者カインは神の加護を受けて――って、これは、カインさんのことじゃないですよ? 同じお名前ですけど。昔々の、すっごい、勇者様のことなんです」
うんしってる。
椅子を二つ並べて、ユリアさんと向かい合わせで座って――。
一対一で、お話をしてもらっていた。
神さまの話は退屈な話なのかなー、と思っていたけど。
勇者カインの冒険の話になってきたら、がぜん、面白くなってきた。
ほー。へー。はー。
もう眠くもなくなって、しっかり聞いていたら――。突然――。
「あら? どなたか参られたようですね。ちょっと待ってくださいね」
ユリアさんは椅子から立ちあがって、教会の入口のほうに向かってゆく。
ぼくは椅子に座ったまま、待っていた。
なにかお客さんがやってきたようだ。
ユリアさんは入口のところで、話しこんでいる。
「あの……、カインさん、ごめんなさいね。ちょっと教団本部の方がいらしたので……、長くなってしまいそうですから。ちょっと私の部屋で待っていてもらって、いいですか?」
ユリアさんが、そう言ってきた。
ぼくはうなずいて、「はい」ってほうを返して、二階へと上がっていった。
そういえば、ユリアさんの部屋。ひさしぶりだなー。
最後にきたの、いつだったっけ?
もう何年も前だったよね。ぼく6歳。ユリアさん10歳とか、そんなくらい。
お人形さん持たされて、なんか遊んだっけなー。
あれはぼくが思うに、きっと、女の子の遊びだ。
男の子には、ちょっと苦労があった。バツゲーム的だった。
◇
ユリアさんの部屋で、ぼくは、ぽつんと待っていた。
でもユリアさんは、あがってこない。
きっと、「ほんぶ」の大人の人と、話があるんだな。
もうすこし待っていたが、やっぱり来ない。
ぼくはユリアさんベッドに座って、足をぷらぷらさせていたが――。
飽きちゃったなー。
ちょっと、たんけん、してみようかなー?
部屋の中には、机とかタンスとかがある。
ここはユリアさんの部屋だ。机もタンスもユリアさんのもの……。
たんけんしてみますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/728581470055342081
明日は9時~10時の更新です。
先日、アンケートへの誘致リンクを張り忘れてしまってすいませんでしたっ!
でもたぶん結果は皆さんもご納得の方向だったと思いますっ!




