ターン38「リリーとあそぶ」
「ねー。カインくーん」
いつもの午後。いつものリリーの研究室。
出張お手伝いをやっているぼくが、「こーひー」を淹れてきてあげると、リリーは実験台に向かったまま、話しかけてきた。
「実験がたてこんで、テンパってきたときってさー」
うんうん。きいてるよ。
「急にさー、庭のアリの巣の穴に、棒立てにいきたくなったり、しないー?」
アリの巣? 棒?
「うん。棒さすと。アリさん。出てこれなくなるじゃない? ……しばらくみてると、横っちょに、穴がひらくのー。新ルート貫通! みたいなー?」
ふんふん。新ルートね。
「そしたら、またー、そっちにもー、棒さすのー。また新ルート貫通で。以後。エンドレスー」
アリさんに迷惑だね。
「そうかなー? 落ちつくよー?」
そうなのかな?
ぼくは、やったことないから、わかんないよ。
「ねーねー。カイン君。わたしのかわりに、やってきてくれないかなー? いま手が離せなくて」
やってきてあげるのはいいんだけど。
それだと、意味がないんじゃないかな?
べつにぼくやりたくないしなぁ。
→[いいえ]
「えーっ? だめー? ……ちぇーっ」
リリーは実験台に向かったまま。
しばらく、工作に集中している。
なにかの道具を使って、なにかを機械を作っている。
じじっ、じじっと、たまに火花があがる。
なにをやっているのか、なにを作っているのか、こんどの〝はつめいひん〟はなんなんのか。〝はつめいか〟でない僕にはわからない。
ひとつしってるのは、リリーがすごい女の子だということ。
だから今回のこれも、きっと、すごい〝はつめいひん〟なんじゃないかと思う。
まあ……、しょうもないものを作ることも、けっこう多いんだけど。
「ねー? カインくーん?」
しばらくすると、リリーがまた、そう言った。
「いるー?」
いるよ。
「なんか、おしっこ行きたくなっちゃった。わたしのかわりに、トイレいってきてくれなーい?」
いやそれは無理でしょ。
「じゃあー、ガマンするー」
ガマンするんだ。
「そっか。〝かわりにトイレ行ってきてもらえるメカ〟を作ればいいのかな。これそれにしようかな。ここのところの時空連結回路を流用して、あっちと接続するようにすれば、できるかな? うんできるよね。……問題は、ガマンできるあいだに完成するかどーかで……。うん。考えていてもはじまらない! 発明家はチャレンジだ! がんばろー!」
いやそこは頑張る方向が違うよね。
トイレ行ってこようよね。それからゆっくり、〝はつめい〟すればいいんじゃないかな?
だけど、もともとは、なにを作るつもりだったんだろう?
〝自分のかわりにトイレに行ってきてもらえるメカ〟になっちゃったみたいだけど……。
このあいだ作ったのは、「つまらないダジャレに笑ってくれるメカ」っていうやつだった。
口だけのオブジェで、つまらないダジャレを誰かが言うと、「えっひゃっひゃ!」って笑い声をあげるのだ。
これが、なんだかとっても、バカにしたような、わざとらしい笑いかたで……。
しかも、おもしろいダジャレを言うと動かなくて、本当につまらないダジャレを言わないと、動かない。
リリーが言うには、「つまらないダジャレにつきあわされる苦労」をけいげんするためだとか、なんだとか、そのために作ったんだとか。
村一番の、有名な「ダジャレおじさん」は、このメカのせいで、〝さいきふのう〟になってしまった。
「うわさおばさん」とおなじくらいに有名なひとだったんだけど……。ダジャレを口にしない真人間になってしまった。
リリーの〝はつめい〟は……。
すごいんだか、すごくないんだか……。
リリーは〝はつめい〟に夢中だ。
ぼくは傍らに立っていて、その横顔を見つめている。
三つ編みが、片っぽ、前のほうに垂れていて、なんだか邪魔そうだったので――。
ぼくは手を伸ばした。
三つ編みを背中の後ろに戻してあげる。
でもリリーは気づかない。すごい集中力だ。
ひょっとして、もっとなにかしても、気づかないんじゃなかろうか?
頭の上に果物のせるとか。ペンで顔に落書きしちゃうとか。
ぼくは、ちょっと、うずうずしてきた。
アリの巣に棒を立てるリリーの気持ちが、ちょっと、わかってしまった。
どうしよう? ……どうする?
でもリリーの〝はつめい〟の邪魔になっちゃうしなー。
どうしよう? ……どうする?
このまま立ち去りますか?
それとも、イタズラをしますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/728380695400210432
本日も、21~22時頃に、もう1本、更新予定でーす。




