ターン32「キサラにたのむ」
あいつ、って、だれなのか、わからないまま……。
ぼくは、とことこと、村の中を歩いていた。
だれなのかなー? ちゃんと聞いてくればよかったかなー。
リリーとユリアさんとロッカの三人は、まず、ちがうよね。
リリーには、「ダンナさんになってくれる?」と聞かれて、「いいえ」と答えてしまった。彼女の頼みごとを聞いてあげなかったのだから、こっちの「おっぱいもませて」という、ぼくの頼みごとも聞いてもらえないと思う。
ユリアさんは、「ダンナさんになる」とたぶん同じ話の、ケッコンの話で悩んでいて、そのひとりごとを聞いていたら、いっぱい、ものをぶつけられて追い払われたので、そーゆー関係の話は、きっとだめなんだろうと思う。
ロッカは、ケッコンの先にある(のかな?)、赤ちゃんつくろ、の話題で、ばっしーんと、力いっぱい、ぶたれてしまったので――これも、ないよね。
ほかの子で、頼みごとを聞いてくれそうな子というと――。
ぼくは、とことこと、村はずれの魔法屋に向かって行った。
◇
「なに? 何の用よ?」
魔法屋の店先で、店番をしていたキサラは、顔をあげると、いつもの目付きで、ぼくを見てきた。
半分閉じられた目は、あれは眠そうなんじゃなくて、「クールな感じ」なんだって、このあいだ言ってた。
魔女というのは、頭が良くてクールで、ちょうぜん? ――とかいうカンジに、していないと、だめなんだって、キサラは言ってた。
ふつうにしていても、キサラはキサラなんだけどなー。
「あんたどうせ、用もないのに、また遊びに来たんでしょ」
キサラは言う。
ううん。今日は用事あるよ。
ちゃんとある。
「薪割り小僧は、気楽でいいわよね。いい年して、子供みたいに遊んでて。セミつかまえたー、バッタつかまえたー、カエルつかまえたー、とか、バッカみたい」
キサラは言った。
昔はキサラも、一緒に虫捕り行ってたんだけど。
カエル捕りは、もっと大好きで――。キサラのカエル魔法のルーツだったりする。
「なによその笑い。――べべべ、べつに! うらやましくなんてないんだからね! ただ! これ! この服! この服みなさいよ! 魔女服! これ、たっかいんだから! お小遣い貯めて旅商人さんから、ようやく買ったんだから! そんなくだらない遊びなんかをして、だめにしちゃったら、ばかみたいでしょ? だからやれないの……、じゃなくて! やんないの! わかりなさいよ! わかれ!」
その服、脱げば、いいんじゃないかな?
じゃあ。川いこうよ。川。
川で泳ぐなら、服脱いで、遊べるよ。
「ばばば! うわばか! なに言ってんのよ! このヘンタイ!」
また知らない言葉がでてきた。――〝ヘンタイ〟って、どんなことだろう?
「そ、そ、そ、それでっ! ――なんの用なのよっ!? カエル捕りには行かないし、川になんて! もっと行かないからねっ! どうせハダカみたいだけなんでしょ!」
ハダカ? ハダカは、いま、関係ないよ?
そうそう。
おっぱい、もみに、きたんだっけ。キサラに頼みにきたんだっけ。
「え? なに? おねがいがあるって? ……な、なんなの? とりあえず、言うだけ言ってみなさいよ。――ま。聞いてあげるかどうかは、あたしの気分しだいだけどね」
キサラは髪を払って、そう言った。
すっかり、いつものキサラに戻った感じ。
さっきまで、いろいろと慌てていて、地が〝はみだして〟いたけど。
ぼくはキサラに伝えた。
「は? おっぱいもみたい? マイケルがそう言ってた?」
うん。そう。
「――ったく。あのエロガキ。クソガキ。またバカなこと言ってるのね。手をニギニギさせて、ヤギのおっぱいじゃなくて、本物を、もんでみてー! って、このあいだ叫んでたわよ。ああいうの、嫌われちゃうから、カインは真似しちゃだめよ? ――ったく。カインにうつるっつーの。やっぱマイケル。カエルにしとこうかしら。きまりね。きまり」
あれ? なんか勘違いされてない?
マイケルが言ってたって話じゃないよ? ――それはいつものことだけど。
ぼくが、もんでみたいっていう、話だよ?
「え゛……?」
キサラは、固まった。
しばらく、氷のように固まっていたが……。
やがて溶けて、ちょっとだけ、動いた。
「……まっ。ま……、まさかとは……、おもうけどぉ……? か、カイン?」
→[はい]
「か、カインが……、も、も、も……、もみ、もみっ……、も、も、も……」
がんばって。キサラ。
「も……もみたい……、って、そ、そういう話……、なのかなぁーっ?」
キサラはようやく言えた。
ぼくは、力強く、うなずいた。
→[はい]
「あ、あ、あ……、あた……、あたしの……? あ、あたしの……、お、お、おっぱい……、も、もみたいって……い、い、い、いってる? いっちゃってる?」
うん。言ってる。
マイケルが、キサラなら頼めば、もませてくれるって、そう言ってた。
……言ってないか。
マイケルは、〝あいつ〟って言ってただけだっけ。
〝あいつ〟っていうのが、キサラなのかどうかは、それは、頼んでみればわかることで……。
もませてくれたら、キサラだったっていうことが、わかるよね。
結果的に。
「あたしで……、いいの?」
だれでもいいんだけど。
キサラがいちばん、しょうりつ? ――それが高いって、マイケル言ってたよ。
「ねえおねがい。〝はい〟か、〝いいえ〟で答えて。……あたしのおっぱい、もみたいの? あたしでいいの?」
ぼくの得意な二択だった。
ぼくは……。
キサラでいいですか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/726936898837467136
本日も、20時以降に選択結果のほか、もう一度更新があります。




