→「いいえ」
接戦でした。48%対52%で、「いいえ派」が辛くも勝利。
皆さん安定した主夫生活に憧れが……?
→「いいえ」
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ぼくはリリーに、「いいえ」と言った。
〝ダンナさん〟っていうのは、よくわかんなかったけど。
なんか一生ゴハンを作るっていうのは、ちょっと困るなぁ。
薪割りしなくちゃならないし。
「ちぇー、だめかー」
リリーは、からっとした顔で笑った。
それから、ちょっと上目遣いになって、もう一度、ぼくに言ってきた。
「……わたし、お得だよー? ゴハン作ってくれて、コーヒー淹れてくれるだけでいいんだよー? わたしー、発明品で稼ぐからー。一生、食いっぱぐれないよー?」
薪割りの仕事をしていると、みんなが食べものをくれるよ。
一生、くいっぱぐれないけど?
あとリリー。発明家なんだから。
ゴハン作ってコーヒー淹れるキカイを作ればいいんじゃないかな?
「ちがうのー。人が作ってくれたゴハンが食べたいのー。洗濯する機械と、掃除する機械だったら、ほら、作ってあるでしょ?」
あるんだ。
「あるよー。だってわたし。天才発明家だもん。そのくらい作れるよー。ほら。床を歩いて掃除しているロボくんが、いたでしょ?」
ネズミじゃなかったんだ。
なんか小さいのが走ってたね。
「あれすごいんだよー。メモリは一キロバイトしか積んでないのに、適応知性によるランダムウォーキングで、どんな形の部屋でも、床の上のゴミの集塵率が、なんと99.8パーセントなんだよ」
うん。わかんないけど。すごいんだね。
「……ということで、ダンナさん。なってよー」
さっきも言ったよ。答えは「いいえ」だよ。
「ちぇ。諦めるかー……。まあ。もう何年かしたら〝結びの儀〟がくるから。そしたら抽選で、わたしとあたるかもしれないしー。そしたら、ダンナさんになってくれるよね」
なにそれ? なんとかの儀って、なに?
「カイン君、わたしのこと、好き?」
うん。好きだけど。
「あはははは。その好きじゃなくてー。フローラがマイケルを好きなみたいに、好きって意味だよー」
それだと違うかな?
……あと、マイケルがフローラを好きなみたいだと、もっと違うかな。
「でしょー。だから、わたしと当たるかもしれないよー。まあ村長さん次第だけど」
よくわからないよ。
「ね? これからも、たまに遊びにきてくれる? ゴハンつくってくれる?」
うん。たまになら。
でもリリーもたまに外に出たほうがいいと思うよ。
ぼくはリリーにぺこりとお辞儀して、池のなかのおうちをあとにした。
本日はもう一本投稿予定です。20:30までに、なんとか……。




