ターン28「リリーのお手伝い」
「ねー。カインくーん。コーヒーいれてー」
リリーが言う。
手元の細かなキカイから、顔もあげずに、ぼくに言う。
ぼくは戸棚を開けると、「青酸なんとか」と書いてあるビンを取り出した。
「こーひー」の粉はこのビンに入っている。
これ。ほんとはやっちゃいけないことらしい。でも中身は「こーひー」だから平気だよー、と、リリーはニコニコ笑いながら言うのだけど。
ぼくは、リリーみたいに「がくもん」をやってる「はつめいか」ではないので、なにがどう「いけないコト」なのか、よくわからない。
リリーに教わったやりかたで、「こーひー」を淹れる。粉はスプーンですりきり一杯。
これリリーが「じっけん」に使う器具だよねー、とか思いつつ、「ろうと」と「ろし」を使って、「びーかー」にぽたぽた、黒い飲み物を落としてゆく。
この黒い飲み物には、頭を良くする効果があるらしい。
……あれ? ちがったっけ? 目が覚める飲み物だったっけ?
まあとにかく、リリーのために、真っ黒な「こーひー」という飲み物を作った。
いっぺん、ためしに飲んでみたことがあるんだけど。ものすごく苦くて、ぼくには一口でも無理だった。
頭が良くなるのだとしても、こんな苦い薬を飲めるリリーは、すごいと思った。
……あれ? ちがったっけ? 目が覚める飲み物だったっけ?
こーひー、どうぞ。
ぼくはリリーの「けんきゅう」の邪魔をしないように、机の端に、そっと「びーかー」を置いた。
「はーい。ありがと」
リリーはちょっとだけ――、ほんの一瞬だけ顔をあげて、こっちを見て、「にこっ」と微笑んだ。
すぐまた目の前のキカイに目を落とす。
そばかすの浮いてる顔に、大きめのメガネをかけて、その奥の目をぱっちりと見開いて研究に向かっている。
髪は三つ編みに編んでいて、椅子の背もたれの後ろに垂らしている。服も髪も研究が第一。ほかの子みたいに「おしゃれ」とかしてない。
「ねー。カインくん。そこのドライバー取ってくれるー?」
「そこ」というのも「どらいばー」というのも、よくわからなかったが。
ぼくはがんばった。
たぶん、この道具のことだろうなー、と、検討をつけるが……。
3本あった。
どれだろう? どれが正解?
えい、っと、フィーリングで決めて選んで――。
リリーに渡すと――。
「ありがと」
また一瞬だけ、笑顔がもらえた。
うん。正解だったもよう。
ぼくはじつは、デキる男だったっぽい。倍率3倍を勝ち抜いたっぽい。
いつも研究をしているリリーとは、滅多に遊ばない。
リリーが、たまに「研究ざいりょう」とかを獲りにきたときだけ、一緒にカエルを捕まえにいったり、変なキノコを獲りに行ったり、珍しいコケを取りにいったり、そういうことをして遊ぶときぐらい。
だから今日は、ぼくのほうから、リリーのところに遊びに来た。
そしたらリリーは、やっぱり研究をしていて……。
なんか、ぼくは、お手伝いをさせられている……。
楽しそうなリリーを見ていると、ぼくも楽しくなるから、まあ、いいんだけど……。
「ねー。カインくーん。おなかすいちゃったー。ごはんつくってくれるー?」
いいけど。
なに作ればいいのかな。
「サンドイッチ作って、作ってー。食べてるヒマー、ないのー。手が離せなくて」
さんどいっち? ……なにそれ?
とりあえずキッチンに向かう。
リリーのおうちは、なんか大きい。それに作りが違う。
ドアと廊下を開けっ放しにして、リリーの声が聞こえるようにしておく。
「パンを薄く切ってー」
がさごそ。パンを探した。ナイフも探した。
そしてパンを切った。
「肉とか野菜とか、適当にパンにのせてー」
のせた。
適当……じゃ、よくないと思ったので、美味しくなるように、取り合わせを選んだ。
センスを発揮した。
「味付けもしてー」
味付けもした。軽く塩をふった。
あとコショウなんて貴重品も、無造作に、大量に置いてあったので、ちょっと使った。
さらに「まよねーず」とかいう、リリーのおうちにしかない秘伝の調味料で、しっかりと味付けをした。
うん。レタスとトマトと、野菜の緑と赤のベッドの上に、焼いた鶏肉がのっかって、自分でもセンスよくできたと思う。
これはおいしそう。
「そしたらもう一枚パンをのせてー。はさんで、はさんでー」
はさんだ。
よし! 完成だ!
「さんどいっち」とかいう食べものができた。
パンで肉と野菜をはさんだ料理だ。なるほど。手が汚れなくて、食べやすそう。
これもリリーの発明品? ――になるのかな?
「ああそうだー。カインくんの分も作ってねー」
もう一個。同じものを作った。
最初に言ってほしかった。
リリーのところに持ってゆく。
また一瞬だけの笑顔がもらえた。
研究に没頭したまま、リリーは「さんどいっち」をぺろりと食べおえてしまった。
こんどこそ本当に、帰ろうかなー、と思ったところで――。
「ねー。カインくん」
リリーが呼び止めてきた。
まだなにか手伝えることがあるのかな?
ぼくは振り返った。
「ねー。カインくーん。このまま。ダンナさんになってー。それで一生、ゴハンつくってくれないかなー?」
えー? どうしよう?
……ていうか。「ダンナさん」って、それ、なに?
リリーの「ダンナさん」になって、一生ゴハンを作りますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/726257761298747393
投票締切は、本日20時まででーす。(20時から選択肢結果と、ターン29の執筆なのです~)




