ターン18「原木のひみつ」
ぱっかん。ぱっかん。
今日も調子よく、薪割りをやっている。
原木っていうのかな?
木から切り出してきたままの、大きな木のブロックを、斧で割って細かくするのが、薪割りであるぼくの仕事だ。
ごろんとした塊のままだと、木には、なかなか火が着かない。
細かくしてやらないと、うまく燃えてくれない。
薪を割るのは、けっこうな重労働で――。慣れないと、特にそう。
村で使われる薪の量は、毎日、大きな一山くらいだ。
それをぼくは、毎日割って、毎日、一軒一軒、届けている。
配達も薪割りの仕事だ。
お代とかは、とくにもらっていない。
たまにお駄賃がもらえるときもある。
ニワトリを持ってけー、とか、卵を持ってけー、とか、食べ物をもらうこともある。絞りたてヤギのミルクとか、チーズなんかは、マイケルのおばさんがよくくれる。
麦とかパンは、畑をやってるおじさんとか、パン屋さんとかが、よくくれる。
仕事道具の斧が壊れたら、鍛冶屋のマリオンのところに持って行って直してもらう。最近は親父さんじゃなくて、マリオンが直してくれるようになった。
マリオンはすごい。まだ12歳なのに、もう一人前だ。すごいすごい。
病気になったら、村の魔法屋のオババのところで、薬を作ってもらうし。その原料となる薬草は、薬草摘みのロッカが、野原を回って採集してくる。
食べ物も、日用品も、薬も、仕事道具も、持ちつ持たれつって感じで、困ったときには現物でもらえる。
だから困ったりするようなことは、じつはそうそう起きたりしない。
お金がなくても、だいたい困ることはなくて、なんとなく生きていけてしまう。
都会の街のほうでは、暮らしはもっと違う感じで、なにもかもお金が必要だっていうんだけど……。
村から出たことがないので、よくわからない。
お金がないと生きていけないって、ほんとかな? なんでなのかな? みんな、食べ物とか道具とか、くれないのかな?
村の生活では、お金は、ほとんど必要ない。
使える場所も、道具屋か、魔法屋ぐらいしかない。
あとは、マリオンの鍛冶屋の、裏口じゃなくて、表のほう。カウンターがある店の入り口のほう。
そこには、モンスターと戦うような、すごい武器とか防具とかが、並べられている。ゼロがいっぱい付くような額で売られていて……。絶対、一生、縁がないような感じ。
マリオンの親父さんは、この地方では有名な鍛冶屋さんらしい。
その武器と防具を求めて、わざわざ遠くからお客さんが来るほどだ。
村の生活では、お金は、ほとんど必要ない。
だから、もらったお駄賃は、カエルの貯金箱にしまってある。たまに道具屋さんで、お菓子に換えてる。
ぱっかん。ぱっかん。
考えごとをしながら、調子よく、薪を割っていた。
そうしたら――。
あっ。やっちゃった。
ついに、原木がなくなってしまった。
今日は割りすぎた。
夢中になって、うっかりしまった。
大きな一山を作れば、今日の分は足りるのに……。
調子にのって、三山くらい作ってしまった。
薪を割ってると、雑念がなくなって、だんだん気持ちよくなってくるんだよね。
原木がなくなってしまうと、次の日の薪割りの仕事がなくなってしまう。
ヒマになってしまう。
マイケルとかフローラとか、キサラとかロッカとかと、遊ぶにしたって、午前中はみんな忙しいし。午後にならないと遊べないし。
アネット――とかは、だいたい狩りに出ていて留守だし。マリオンも暇さえあればハンマーで鉄を叩いて、鍛冶の修行をしているし。
リリーはいつ行っても〝けんきゅう〟とかで忙しくて、〝こーひー〟とかいうのを淹れさせられたり、なんか、手伝いをさせられてしまうし――。
ユリアさんは、いつも優しく笑って迎えてくれるんだけど、歳が三つばかり違うせいで、ザリガニ獲ろうとか、ヘビ捕まえにいこうとか、そういう遊びに誘うのも、違う感じ……。
キサラなんかも、最近は、そういう遊びに誘うと、「ハァ? ばか?」とかいう顔で見てくるけどね。
原木は、徐々にしか増えていかない。
毎日、使って減った分は、次の日の朝になると、戻っているのだ。
いつのまにか、ひとりでに、増えてゆくもので……。
……ん?
……そんなわけ? ないよね?
ぼくはこれまで、作業場の隅に積まれた原木は、勝手にひとりでに増えてゆくものだと思っていた。
でも、そんなわけ、ないよね。
じゃあ……。いったいどうして、増えているんだろう?
不思議。不思議。すっごい。不思議。
ぼくはその〝不思議〟に挑むことにした。
◇
「おーい。カインー。あそぼうぜー!」
午後になって、マイケルがやって来た。
おばさんに言いつけられている、日課の仕事の、ヤギの乳しぼりが終わったのだろう。
あそびますか? [はい/いいえ]
・
・
・
いいえ
あそばない。
ぼくは、ずっと見張りつづけていた。
原木はいつのまにか、増えているのだ。
なぜ増えるのか。どうして増えるのか。
ずっと見張って、突き止めなければならない。
「え? なにおまえ? なにしてんの? ……え? 見張っている? なにを? 原木を? なんで? ……どうやって増えるのか、確かめるため?」
マイケルは、きょとんとしている。
「え? 一緒に見張ろうって? やだよー。そんなのー。退屈そうだよー。それより遊ぼうぜー」
マイケルに遊びに誘われた。どうしますか?
このまま、見張りを続けますか?[はい/いいえ]
今回の選択肢の投票場所は、こちらです。
https://twitter.com/araki_shin/status/704465119854497793




