ターン55-4「ロッカEND」
花嫁の冠を手にした僕は、ロッカのところに行ってみた。
木の上のおうちに、はしごを使って、よいしょ、よいしょ、と登ってゆく。
「あっ……、カインさん……」
ロッカはやっぱり、ここにいた。
村中が大騒ぎだというのに、家の中で、ぺたんと一人で座っている。
「こ、こんにちは……」
ロッカは遠慮しがちないつもの顔で、僕に挨拶をしてきた。
でもその目は、僕がずっと手に持ってた花嫁の冠を、じっと見ている。
「あ、あのっ……。カインさんは……、あのっ……」
ロッカはなにか言いたげな顔。懸命に言葉を探している。
「あのっ……、かんむり……。かんむりは……、あのっ……、だれに……」
そこまで言いかけて、口を閉ざしてしまう。
沈黙が、長く続いた。
「……ごめんなさい。なんでも、ないです……。いいんです……」
なんでもなくは、ないと思うよ。
話してよ。相談にのるよ?
「なんでも、ないんです。わたし……、最近、おかしいんです」
おかしいって、どうなふうに?
「カインさん……。ほうっておいて、ください……。でないと……、でないと、わたし……」
だからほうっておけないよ。心配だよ。
「おねがいですから、ほうっておいてくださいよぅ……」
ロッカは同じ言葉を繰り返すばかり。
「…………」
僕の手に持ってる花嫁の冠を、じっと見つめながら、思い詰めたような顔をしている。
「ほうっておいて……、くれますか?」
→[いいえ]
・・・
僕は首を横に振った。ほうっておけないよね。
「ほうっておいてくれない、カインさんが……、カインさんが……、わるいんですよ?」
→[はい]
・・・
うん。わかってる。
「あの……、じゃあ、聞きます……」
ロッカはようやく悩み事を話しはじめた。
「カインさんが、いま持っている……、そのかんむり……。だれに……あげるんですか?」
うーん。決めてないんだ。
「あの……、わたしじゃ、だめですか?」
ロッカは僕の目を正面から覗きこむように見つめてきた。
「カインさん……。好きなんです」
ロッカはそう言った。
うん。僕も好きだけど。……そういうのとは、ちがうのかな?
「わたし最近……、カインさんのことばっかり考えてて……。へんなんです……」
どういうふうに、へんなの?
「……だめですか?」
僕は選択を迫られた。
これは「はい」と「いいえ」で答えられる質問だけど……。
だめですか、ってきいてきてるんだから、「いいよ」のときは、こっちだよね。
→[いいえ]
・・・
「えっ……?」
ロットは驚いている。
「あ……、あのあのっ!? わたしで……いいんですか?」
うん。
「わたしなんかで、いいんですか……?」
うん。僕なんかでいいんなら。
「ほんとにっ?」
うん。ほんと。
→[はい]
・・・
「カインさん……」
ロッカの目の端に、きらっと涙が浮かぶ。
「あのっ……、なんだか、夢みたいで……、信じられないです……」
そんな大袈裟だなぁ。
「信じさせて……、ください……」
どうすればいいの?
「あの……、かんむり……。かんむり……、かぶせて……、……ください」
僕はロッカの頭に、花嫁の冠をかぶせた。
ロッカEND