ターン55-3「マリオンEND」
花嫁の冠を手にした僕は、マリオンのところに行ってみた。
「あ、カイン……」
マリオンは鍛冶屋の作業場で、ぽつんと、一人で座っていた。
「うん……。きょうは、鍛冶屋はお休み。おまつりだしね」
なんだかマリオンは……。元気がないカンジ……?
「えっ……? なんか、元気なさそうだって……? うん……、まあ、そうかも……」
悩みごとなら、相談にのるよ。トモダチだよ。
「えっ……? 相談に乗るから、話してみろって? いいよぉ……、べつに……」
→[いいえ]
・・・
「えっ……? どうしても話せ……って?」
→[はい]
・・・
「…………」
マリオンは、しばらく黙って、考えていたけど……。
「しらないよ……?」
ん? なにが「しらないよ」なんだろう?
→[はい]
・・・
とりあえず「はい」だけど。
僕がうなずくと、マリオンは、話しはじめた。
「うん、じゃぁ……。このあいださ、魔王と戦ったときのことなんだけど……」
うん。僕たちは魔王と戦った。
ダンジョンの攻略の途中では、皆の力をそれぞれ借りた。
魔王と戦う最後の決戦のときには、皆がかけつけてくれた。一緒に戦った。
「カインってさ……、あんなにたくさん、助けてくれる娘が……いたじゃん?」
マリオンとみんなを合わせて6人だから、そんなに〝たくさん〟って感じでもないかなぁ。
「カインってさ……、けっこう……、モテたんだね」
モテるっていうのは、よくわかんないんだけど。
僕はみんなのことが好きだし。みんなも僕のことが好きだし。
そういうことでいいのかな? だとしたら、「はい」だよね。
→[はい]
・・・
「あははは……、自信家だなぁ」
マリオンは笑った。
普段は自信があるように見えるけど、本当のマリオンは、そうじゃないってことを、僕は知っている。
「だけど、あたし……。ぜんぜん、知らなかったんだよね……。はじめて知って、それで……、ちょっとショックだったんだ」
マリオンは笑った。
「だってカインも、あんまり……、モテないんじゃないかって……。そう、思ってたもんだから……。ほんと。ごめん、ごめん……」
マリオンは僕が後ろ手に持っている物に目を向けてきた。
「カインさ……。その、持ってるの……、……冠だろ?」
うん。そう。
「いいから、気にしないでさ……。誰かに、その冠……、あげてきなよ……。カインのこと待ってる女の子、いっぱい、いるんだしさ……。ねっ?」
マリオンはそう言っている。
そっか。
じゃあ。行くかな……。
→[はい]
・・・
僕はマリオンの言葉に、うなずいた。
するとマリオンは――。
「持ってく……の?」
急に泣きはじめた。……あれれっ?
「だめ……。やっぱり、だめ……」
僕の服の裾を、ぎゅっと両手で掴んでくる。
「そ、それっ……。あた、あたしに……。あたしに……、ちょ……ちょうだい」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、マリオンはそう言った。
「だからいったじゃないかぁ……。知らないよ……、ってぇ……」
そういえば、はじめにそんなこと言ってたっけ。
マリオンが泣きやんでくれるなら、僕は、いいよ。
これ。あげるよ。
僕は花嫁の冠をマリオンの頭にかぶせた。
「うん……」
マリオンは泣き止んで――嬉しそうに、微笑んだ。
マリオンEND