ヨシコです。
日曜の夜になると次の日のことを考えるだけで憂鬱になる。登校拒否の一歩手前くらいの気持ちだ。
風呂あがりの火照った体を冷ましながら、ふやけた足を机の上に乗せ爪に何重にも塗りたくられたマニキュアを綺麗に拭き取る。
休日の楽しみは、足の爪にマニキュアを施して、少し大人の気分を味わうことだった。
(チャラリンチャラリン)
携帯の着信音がなり、手を伸ばしてカバンに入れて置いた携帯を取りだした。メールが届いたようだ。相手は……
《ここをみよ! www://enjoy.shame/yattayo.kaasan./gazoo.》
本当は別に見る価値もないわけであるが、とりあえずアドレスをクリックした。そこには、案の定見慣れた顔があった。最近携帯の使い方を知った母が、調子に乗って自分がカメラで撮影した写真に色々な装飾をつけすることに夢中になっているようで、キラキラのフレームに囲まれた、我が家のトイレが母の背景に映し出されていた。母は画面の中で便器に向かって「ホラホラ!」といわんばかりの笑顔を作っていた。そこには、“BIG”の文字が入っていて、画像をよく見ると見にくいながらも便器の中にはまさにBIGなものが浮かんでいた。
このBIGは今できたての母のものだろうか……。だろうね。下品なものまでも芸術品に仕立て上げようとするその根性はどこから生まれてくるんだ。
この前川家の母親は、昔ミスコンか何かで優勝したほど年齢の割りには綺麗な女性なのだが、その外見あまり内面のギャップに悩まされた男は数知れず。本人いわく、パパはママのストーカーだったそうだ。
わざわざ暇人につきあってる義理もないので、足の爪を綺麗に整えることに集中した。なぜかこうして爪をいじってる間は自分が可愛い女の子に感じて仕方ない。私も少しは女の子らしいところがあるんだなと思うととてもいじらしくなる。
毎朝起きるために、ステレオのタイマーをセットした。今マイブーム到来の日本語なのか英語なのかも分からないような流暢なラップが入りまじった『ヨシコBEST』をかける。これはあたしの脳内分泌を活発にさせる効果がある(と信じている)。そのためにわざわざ『ヨシコBEST』などと編集したのだから。