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まだまだ癒せるよ

昼一の授業でほとんどの生徒が睡魔に侵されている時、僕は一人こっそりハイテンションだった。まぁ、僕にとってはこれが1限目の授業のようなものだし。

隣の席の可愛い女の子を左肩に意識しながら、僕は数学の授業ノートをとるカタチを作りたまに黒板を見比べていかにも真面目に記録していますというようなカモフラージュをしながら、ノートにはまるまる1ページ前川と僕の似顔絵を描いていた。

前川の顔は、それといって特徴もなく結構難しいので黒髪の方の描写に力を入れすぎたためか、山姥と貞子を合体させたような生き物が出来上がってしまった。

これじゃ、自己満もくそったれ(?)もないな。などとガックリしながら、またはじめから前川を描いた。

うーん、なんか僕って精神年齢低いかな。今時健全な高校男児が好きな子の似顔絵なんか描いて楽しんでるなんてさ。結構痛い奴かもしれない。

とか考えつつも、先の山姥貞子よりもいくぶんましな前川が出来上がった。とりあえず髪型だけは完璧だ。無性にこの“前川”を前川に披露したいけど、幼稚なやつと思われるのもまずいしなぁ。また、逆にからかわれてるなんて勘違いでもされると僕の立場最悪だし。やっぱおとなしく抹消するしかないか。

お気に入りの消しゴムで綺麗に跡形もなく“前川”は消え、ただ微妙に髪を描いた部分の筆圧が濃かったためか、あきらかに黒い何かを描いていたことがバレバレである。

気分転換にでも、授業ノートでも取ろうかな。

数学は、変に難しい漢字を使うこともなく0〜9の10種類の数字を駆使するだけで、あとはそれの応用で“x”や“y”や“+”や“−”等といった決まった文字や記号を組み合わせるだけであったため、ノートに書き取るのには国語や英語のように頭を使うことはほとんどなかった。

けれど、たまに数学のくせに証明せよなどという問題がある。あれは全く分からないぞ。あのような文章仕立ての答えを求めてくるなど、数学の長所である公式を覚えれば怖いものなしという勉学に勤しむ者たちの根気をくじいてしまうではないか。

僕って基本的に面倒くさいこと嫌いなんだよね。だから、いちいち文章で説明しなくても答えだけ合ってればいいと思うし、だいたいそんな説明にさ、模範解答なんてあってはいけないんじゃん?と思うこのごろ……

あーくそぉ。またくだらない思考を働いてしまった。なんだかんだ文句言いながらもきちんと手際よくノート取る僕ってダイブ真面目君(笑)

でも、暇。前川何してるかな。右側に重心をかけて頬杖をつき、さりげなく隣の席に座っている可愛い少女の顔を覗いた。

僕以上に真面目に先生の話聞いているみたい。僕に気づく様子もないので、声にならない声で「ま・え・か・わ」とささやいてみた。

隣の席の微妙な動きを察知したのか、「やだぁ、見られてたぁ」というような表情でこっちを見返してきた。このときさすがの前川も目を合わさずにはいられなかったのか、不意をつかれたような眼差しで僕を見た後、またいつものように視線を僕の口元に移した。

とくに会話なんて思いつかなかったので、「暇。」と僕が言ったら

「えへっ。難しいね数学。」はにかみながら前川はそう返事した。

 前川から生まれる雰囲気には僕はどうすることもできないみたいだ。息をするかのように自然に発する、言葉の端々に僕は感動しまくった。

“えへ”や“うふ”など前川は自然に口から出るようで、それはぶりっこで男に媚びているようでもなくて、どうも自然さを感じる。んなわけねーだろ! と思われるかもしれないが、何せ僕の天使はそうでなければいけないんだ。ということで御免遊ばし。

あーでも僕は何でもっと積極的にできないんだろう! 女の人の前にでるといつも萎縮して受身になってしまう。せいぜいやれることは、冗談と楽しい談話のみ(自分で言うか?)。楽しく下校してみたいものだし、デートなんてのもできるならやらせていただきたい。


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