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帰郷
今更ながら僕は思う。
なぜ、船で我が故郷に帰ってきたのかと…ッ!!
胸に込み上げてくるのは、故郷に帰ってきた感動ではなく、酸っぱい…
「おえええええ~…っ」
「おいおい。大丈夫け?」
船員の人が心配して声をかけてきたが、それに応える気力がない僕は降り立った地面に倒れこむ。
「まさか船が弱いとは…お前さんはこの島の生まれなんだろ?」
「…そうだけど、この島にいたのはもう五年も前の話だし、僕がまだこの島にいた頃に船なんて乗ったことないからね」
「そりゃ珍しいな。この島の者だったら大抵は船に乗ったことはあるはずだがなぁ…ほら、ここには世間でいう七五三には子供を船に乗せるならわしがあるだろ?」
「…僕は無かったことにされていたから」
船員の人がよくわからない、といったような顔で首を傾げる。
「それじゃ。僕は行きますね」
船酔いが醒めたので、立ち上がって目的の場所に向かうことにする。
「おう。それじゃあまたな」
船員の人が手を振ってくれたので、僕は手を振り返して、船が少し遠くなるまで見送ると、目的地に向かって歩き出した。