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Episode 58:中編

Episode 58:中編


「カペル橋の迷宮(L-U-C-E-R-N-E)――踊るステップと、180秒の逆流」

水上の赤い暗号と、惑わされる観光船

ルツェルン湖の管制塔に突入したハナコ・ハート刑事、バーバラ、そしてホームズを待ち受けていたのは、メインモニターを埋め尽くす真っ赤なエラーログの嵐だった。


「ポチ君、これを見て! 白猫のワームのせいで、カペル橋周辺を巡る観光船の自動ナビゲーションが完全に狂わされているわ! このままじゃ、11分後には船同士が湖上で交差デッドロックしてしまう!」


ハート刑事は、特殊電波測定器の出力をノーリミッツに引き上げた。

窓の外では、ルツェルン湖の美しい青い水面を乱すように、数隻の観光船が不自然な蛇行運転を始めている。さらに、カペル橋に仕掛けられたスピーカーからは、観光客の五感を狂わせるような、不気味な低周波のノイズ(かくらん)が流れ始めていた。


(ふむ。ルツェルン湖の水面の乱反射を利用して、ジャミング(電波妨害)のレーザーを立体的に編み込んでいるな。白猫め、この美しい古都を『電脳の密室操車場』に見立てたか。だが、自然の波の満ち引きと、人間(観光客)の動線のリズムを素直に紐解けば、その歪んだグリッドの『継ぎ目』は必ず露出する)


「ワン! ワンワンッ!」

ホームズは管制塔のガラス窓に前足をかけ、湖面に浮かぶ特定のブイ(浮標)に向かって鋭く吼えた。

バーバラのリズム・トレース

「ハナコ姉様、大先生! あの観光船の不自然な蛇行と、ジャミングの低周波……これ、完全に『偽物のリズム』だべ!」


バーバラが、データノートを小脇に抱え、管制塔の床の上でトントンと軽快なタップダンスのステップを踏み始めた。


「白猫のプログラムは、アルプスの風の音にノイズを混ぜてカモフラージュしてるべ。でも、本物の音楽やダンスの11ミリの対称性シンメトリーから見れば、このジャミングは3拍子のステップに無理やり4拍子のバグを詰め込んだみたいに、ノーリミッツにガタガタだべ! このリズムのズレが一番大きくなる次の**【180秒(3分)】**の間だけ、湖底の光ケーブルから伸びる中継アンテナの防御障壁ファイヤーウォールが完全に停止するべ!」


(素晴らしいぞ、バーバラ君! 君の『完璧なリズム感』が、白猫の計算の傲慢さを完全に見抜いたな。その3分間こそが、この水上パズルのチェックメイトの瞬間だ!)


「ブロックのパズル(LUCERNE)が示していたのは、湖の美しさを守るための『正しい調和シンメトリー』のビートだったのね!」


ハート刑事の瞳に、ヤードのエースとしての鋭い光が宿る。

「バーバラちゃん、180秒の秒読み(カウント)をお願い! ポチ君の復活した頭脳と、リンド・ファームの誇りにかけて、あの歪んだアンテナを物理的にロックしてみせるわ!」


「いくべ、ハナコ姉様! 3、2、1……スタートだべ!」

激突のカウントダウン

「てりゃぁぁぁーーーーっ!!」

ハナコ刑事の電光石火のストレートキックが、管制塔の床下に隠されていた、湖底アンテナと同調する高圧制御レバーへと炸裂した!

その強力な脚力でレバーを完璧な垂直位置シンメトリーへと固定し、白猫のハッキング・データを逆流させること正確に180秒――。


バチバチバチッ!!!

「……178、179、180! リズムの同期、成功だべ!」

バーバラの叫びと同時に、湖上の観光船を狂わせていた赤い警告シグナルが一斉に消滅し、船たちは本来の穏やかな航路へと戻っていった。

しかし、安心したのも束の間。管制塔の最深部にあるスイス連邦鉄道(SBB)の特急列車用サーバーから、限界寸前の高熱を告げる警告音が鳴り響いた。白猫が仕掛けた最終プログラムが、ルツェルン駅へ向かう全列車のブレーキを緊急ロックする「最終デッドロック」まで、残された時間はあとわずか!


(水上の霧は晴れた。よし、最終局だ。アルプスの鉄路を、本来の安全な姿へと還してやるぞ!)

「ワン!」と鋭く吼えた名探偵ホームズを先頭に、2人と一匹は最終解除コードが眠るサーバーの喉元へと突入するのだった!

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