エピローグ
モーターボートに荷物を積み込み、僕らは岸辺を離れる。
バタバタと海鳥が飛び立つ薄青い空は、じわじわと金色に染まっていく。
バロットは堂々たる佇まいで、Tシャツからはちきれそうな胸を張って操縦席に座り、マチウは彼にしがみついている。
ぐらぐらと波間に揺れるボートで、ダイアナは風に吹きさらされるブルネットを押さえ、僕らの戻っていくはずの、現実世界を見定めるような眼をしている。
僕とセデュはボート後部で寄り添いあって、後方に遠ざかっていく孤島を眺める。
黒煙は相変わらず上がりつづけている。それであの狂気じみた宴が幕を下ろすとも思えないけど、とにかく僕らは帰還できる。
ばたばたと風が吹いて視界を塞ぐ前髪が鬱陶しくて、ぶるぶると犬のように頭を振るとセデュが笑う。
金色の日差しが美しい彼の頬をなぞって、眩しいくらいに神々しい。
いつものセデュだ。
僕の知る、僕の大好きなセデュだ。
彼の胸元に頬を寄せると、あたたかな腕が抱きしめてくれる。
体の内側から燃えているみたいに、熱くて、苦しくて、いとおしくて、胸が詰まる。
「甘えん坊だな、今日は」
「ひさしぶりなんだもの。ずっとくっついていたいよ」
「…不安にさせて、悪かった」
「…うん、不安だった。ずっと」
「ルー、…」
「ぼく、どうやら、きみのことが、ほんとうに好き、みたいだ」
知ってたけど、と呟いて、セデュを見上げれば、朝焼けを映した瞳が潤んでいるのが見えた。
きらきらして、きれいで、優しくて、ちょっぴり不器用な、僕のセデュ。
僕をいつでも全身全霊で、愛してくれる君に、ふさわしい僕で、いられるだろうか。
「あいしてるって、言ってもいいかな、ぼく、こんなきもち、はじめてで、よくわからないん、だけど」
とぎれとぎれに話す僕を、うん、うん、と頷きながらセデュは聞いて、はたはたと風に流れる髪の毛と、止められない僕の涙を、いつくしむように触れる。
「きみともどれて、ほんとうによかった。あいしてるよ、セデュ」
やっと言えたぼくは笑って、そうしてまた、セデュのキスを強請った。
僕らは明け方の金色の光の中で、世界に二人しかいないみたいなキスをして、そうして、額を合わせて微笑みあった。




