0048 イベントとプチパニック
「これどうすればいいんだろ……」
「うーん……ここ何処かもわからないし、マップも使えないし……もうどうにもできないかなぁ……」
紬は上に広がる空を見て大きなため息をついた。
隣を歩いているナギも小さくため息をついて、マップを開き道を確認しようとした。しかし、マップには圏外を示すエラーと表示されるだけだった。
「やっぱダメだよねー……ナギたち、これからどうなるんだろ……」
ナギは小さく呟き、紬と一緒に空を見上げた。
なぜ二人がこうしてため息をつくことになってしまったのか。
それを説明するには30分前に時間を巻き戻す必要がある。
◇ ◇ ◇
「主人、これからどうするのでござるか?」
マサムネは自分の鎧についた砂埃を手で払いながら、紬に尋ねた。
後ろでは床に倒れ込んでしまっているハルとシズを連れ戻された金ちゃんとナギが必死に看病している。
「うーん……そうだね。みんなかなり疲弊しているみたいだし……。僕だけで限定ダンジョンに向かおうかな」
「それなら吾輩もお供するでござるよ!二人いた方が道中も心強いでござろうしな」
紬は自信満々というように言いきったマサムネに疑うような視線を向けた。
無理もない。
マサムネは紬の前だからか、見せないようにしているものの、すでに足は立っているのがやっとというほどまでに弱っており、本体のスライムの体も動かせないほどに衰弱していた。
紬はマサムネが無理をしていることを見抜いていた。
「マサムネは一度ダンジョンに金ちゃんを連れて戻って欲しいんだ。あとダンジョンのみんなに伝言も頼める?」
「……わかったでござる。主人も決して無理はしちゃダメでござるよ」
「わかってるよ。じゃあ、頼むね」
マサムネは小さく頷き、看病をせずにサボり始めた金ちゃんを連れて、ダンジョンへと帰っていった。足をガクガクと震わしながら、一歩一歩ゆっくりと進んでいくマサムネの背中は激しい戦いを物語っていた。
「申し訳ないけど、私たちも抜けさせてもらうわ……ちょっと……ポーションも切れたし……邪魔になるだけだと思うから……」
シズは息を切らしながら、小さく途切れ途切れ話した。
「ありがとう。なんか僕のせいで大変な思いをさせてしまったみたいで、ごめんね。このお礼は必ず」
「気にしなくていいんだよ……私たちもお礼でやったことだし……お礼の無限ループになっちゃうよ……?」
今にも気を失いそうな状態のハルは、目を閉じて仰向けに寝っ転がったまま、そう言った。
紬はこれ以上二人に無理をさせてはいけないという思いも込めて、二人にログアウトするよう促した。
しかし、ログアウトしたとしても息切れや疲れが治るわけではなかった。
このゲームはフルダイブ型のゲームのため、疲れや体の状態はある程度現実とリンクしている。骨折や死亡といった痛みなどは激減して現実に受け継がれないようになっているが、息切れや疲れといった軽い症状のものは現実でも起こりうるのである。
「これで辛い思いから少しでも解放されるといいんだけど……」
紬はハルとシズが少しでもゲームからログアウトされることで、症状が軽くなることを願った。
「ねぇ、ナギはどうすればいいの?」
「あっ……ごめん、忘れてた」
ナギは頬をぷくーっと膨らませて、紬の腕をぽこぽこと叩いた。
紬はそんなナギの頭を撫でながら、ふふっと小さく笑った。
「一緒に限定ダンジョン行ってくれる?」
「うん!もっちろん、任せんしゃい!」
紬とナギは、マップを見ながら限定ダンジョンに向けて歩き出した。
そこまでは良かった。
歩き始めてから5分。
歩いていた方向が真逆だったことに気づき、来た道を戻ることに。
しかも、迷い込んでしまった先がちょっとした迷路になっている森の地域だったのである。
15分間、迷路の中を彷徨い、なんとか迷路から脱出した。
と思った矢先のことである。
「「あっ」」
ピッッッッッッッッッカーーーーン
二人が何に気づいた瞬間、眩い強い光に包まれた。
二人が踏んでしまった、入ってしまったそのエリアは、全プレイヤーが恐れる最恐のトラップ、転移トラップ魔法陣だった。




