0047 イベントと脱出
「急ぐでござるよー!」
「そんなこと言っても、追いかけられながらでは無理だよーっ!」
マサムネたちは倒壊していくダンジョンの中を、出口目掛けて駆け抜けていた。
そして後ろには未だマサムネたちを倒そうとしている、魔晶ゴーレムの姿があった。
「あと30秒もないでござるよっ!」
「あとどのぐらいっ!?」
「あと……2回右に曲がれば出口よ」
「と……遠いってぱ!」
大きな叫び声を上げながら、ハルは全力で走っている。
マサムネとシズはそこまで大きな声は上げていないものの、やはり表情には焦りが浮かんでいる。
紬からメッセージが送られてきてから、マサムネたちはここまでずっと走り続けていた。ボス部屋から水の中に出て、全力で上まで上がり、そこからは地上でひたすら走る。
すでに三人は倒れそうなほどの疲労が溜まっていた。
「見えたっ……!」
「あと5秒でござる!」
「飛び込むよ!せーの!」
シズの掛け声に合わせて、マサムネとハルは出口に向かって飛び込んだ。
ドォォォォォォォォォン!!!
大きな音と共に、ダンジョンは瓦礫の下敷きになった。
地下にあったダンジョンが地表の入り口ごと倒壊したため、瓦礫が少し地面からはみ出ている。
「あ、危なかった……」
最後に飛び込んだシズの爪先のすぐ後ろには、瓦礫がゴロゴロと転がっている。3人はなんとかギリギリダンジョンの中から抜け出すことができたのだ。
「あっ!そういえばあいつはどうなったの!?」
ハルが勢いよく瓦礫の方へ振り向いた。
シズのすぐ後ろの瓦礫の中には、魔晶ゴーレムが瓦礫の下敷きになってぐったりとしている。
「ど……どうする……?助ける……?」
ハルがシズとマサムネに恐る恐るというように尋ねた。
シズは息遣いを荒くしながら小さく、好きにしなさい、と呟いた。
ハルは魔性ゴーレムを助けようと瓦礫を退け始めた。どこまで退けても魔性ゴーレムの体の全貌は見えてこない。それどころか、瓦礫と共にどんどん下へと沈んでいく。
「うっ……ダンジョンが無に帰そうとしているのでござる……。時間はもうないでござるよ……!」
「でも……!助けなきゃ!」
ハルは勢いよく言い切った。
先ほどまでの迷いは何処に行ったのか、今では助けることしか頭にはなかった。
「わかったでござるよ……主人、出番でござるよ……」
マサムネが後ろに向けてそう喋ったかと思うと、紬とナギが木陰から姿を現した。
「よかった……無事だったのね……」
「うん、ごめんね。ちょっと色々あって」
床で意識が飛びかけているシズにナギはポーションを使った。
シズの意識や体力は少しずつ回復されているものの、動けるような状態ではなかった。
「どうして……?ずっとそこにいたの?」
「いや、ここのダンジョンマスターを仲間にしたり、色々してたんだ。ここには今来たばっかりだよ」
紬はハルとマサムネに、今までどんなことがあったのか話し始めた。
話が終わると、崩壊したダンジョンのマスター、金ちゃんが紬たちの前にちょこちょこと歩いてきた。
「其方はゴーレムを助けたいのぎょ?もし、このダンジョンを壊した悪党だったとしても?」
「うん……!きっと本当は悪い子じゃないから……!」
「そうぎょか……はぁ……仕方ないぎょね」
金ちゃんは沈んでいく瓦礫に向かって飛び込んだ。
「潜水!」
金ちゃんの声に合わせて、瓦礫が水のような液体へと変化していく。
金ちゃんは瓦礫の液体の中をゴーレム目掛けて勢いよく潜っていく。その姿は金魚などではなく、立派なマスターの姿だった。
「ふぅ……疲れたぎょ。もう絶対やんないぎょ」
5分後、金ちゃんはゴーレムのコアを持って瓦礫の中から出てきた。
金ちゃん曰く、ゴーレムというのはコアだけでも復活することができるらしい。そのかわり、魔力などではなく色々な条件を必要とする。簡単にできることではないのである。
「これは託すぎょ。ぎょには扱いきれないやつだったぎょからね」
金ちゃんはハルにゴーレムのコアを渡した。
「うん。絶対この子を大切にする」
「そうぎょか……」
金ちゃんは静かに頷いた。
「じゃあ!ぎょは紬のダンジョンに帰ってゆっくりするぎょね!バイバイぎょー!帰って、お菓子♪」
「ちょっ……!一人で行ったら危ないよー!」
「お菓子に、お茶に、お菓子に〜♪」
「お菓子食べ過ぎでござるな……」
スキップをしながら離れていく金ちゃんと、それを追いかけるナギを見て、マサムネは小さく笑った。
「これからもう一つダンジョン行くんだけどー!?」
紬の声は森の中に大きく響き渡った。




