0044 イベントと水のダンジョン5
「助けてほしい……って、何があったの?」
「実はぎょのダンジョンのボスが……言うこと聞かなくなっちゃったのぎょよね」
「あなたの仲間なんだから、言うこと聞かなくなることはないんじゃない?」
ナギのいう通り、なかなかマスターの言うことを聞かなくなるモンスターというのはいない。そもそもモンスターとマスターは信頼関係を築いていくことが多い。
こうなることは非常に稀だった。
「それでどうして助けて欲しいの?自分のモンスターだし、話せばわかるんじゃ……」
「それができないから困ってるのぎょ。もう話もできないような状態で……」
それから金ちゃんはボスについて話し始めた。
「今イベントをやってるから、魔晶ゴーレムというやつをボスとして配置したぎょ。そしたらびっくりぎょ。ぎょのダンジョンのボス、ダイオーとしょっちゅう喧嘩するのぎょ」
金ちゃんはため息をつき、話を続けた。
「ダイオーの方が強いから、最初の方は喧嘩して空気が悪いぐらいで、そんなに問題はなかったぎょ。それがあの日からゴーレムが変になっちゃったんぎょ」
その後、水のダンジョンのボス、ダイオーにずっと立ち向かっていた魔晶ゴーレムが突然強くなったことで、ダイオーを倒してしまったのである。
結果として、ボスが減り、魔晶ゴーレムが金ちゃんの命令や話も聞かずに、暴走を続けている。
おそらく、自分が最強だと思っているのだろう、と金ちゃんは踏んでいた。
「なるほど……それで、僕たちに助けてって言ってたけど……どうすればいいの?」
「それはもちろん、魔晶ゴーレムを倒して欲しいぎょ」
「えーっと……魔晶ゴーレムは倒しても復活するよ?」
「えっ?」
紬が自分のダンジョンにも同じ魔晶ゴーレムがいること、そしてその個体は魔力で復活することなどを話した。
「なんてことぎょ……それじゃ倒してもあんまり意味ないぎょ……」
金ちゃんは背泳ぎで湖をぐるぐると泳ぎ始めた。
泳ぎながらぶつぶつと文句を言っている。
「そうぎょ!」
金ちゃんは何かを思いついたのか、背泳ぎをやめて、すごい速さで紬の方へ泳いでくる。紬の近くに着くと、満面の無邪気な笑みで、
「このダンジョンのコアあげて、ダンジョンを壊しちゃえばいいぎょ!」
と言った。
「えっ?いいの?」
紬は思わずそう聞いた。
紬としては非常に喜ばしいことだったが、どう考えても金ちゃんにメリットがあるとは思えない。それにダンジョンが壊れると言うのは、金ちゃんの消滅も意味していた。
「べつにいいぎょ。そんなに思い入れもないし、あいつがいるぐらいならそうしたほうがいいぎょ」
金ちゃんはよほど魔晶ゴーレムが嫌いのようで、眉間にシワを寄せて鬼のような顔で、再び背泳ぎを始めた。
「背泳ぎは嫌なことがあった時のサインなんだ……わかりやすっ」
「なんか言ったぎょか?」
「なんでもないよっ!」
思わず口に出したナギは慌てて口を押さえた。
金ちゃんは疑うような目でナギをじっと見つめている。
「そ、それなら早くコアを回収した方がいいんじゃない?探索しに行った3人がボスと戦う前にさ」
空気に耐えられなくなったナギがそう言った。
金ちゃんは小さくため息をつき、口から金色で光り輝いている水を吐いた。
吐いた水はたちまち形を変えて、金色の豪華なカギとなった。
持つところは派手な装飾がされていて、シャチホコのようなものがついている。鍵部分は普通の鍵とは違った形をしていて、鍵として機能するのか微妙である。
「これは?」
「管理部屋に行くための鍵ぎょ。管理部屋に入ればすぐコアがあるぎょから、すぐ崩壊までいけるぎょねー」
先に行くぎょ、と言い、金ちゃんは一人で泳いで行った。
紬とナギは金ちゃんからもらったマップを頼りに、管理部屋に向かって歩き出した。
「ここをまっすぐで、ここを右、そしてここを左……って、ここ入口じゃん!」
紬たちが辿り着いたのは、このダンジョンの入り口の前だった。
周りを見渡すと、右側に大きく手を振っている金ちゃんの姿があった。
「こっちぎょー!」
紬とナギが金ちゃんのところへ着くと、金ちゃんは元気よく鍵を上に掲げた。
「開けゴマ!」
声に応じて、壁がゴゴゴゴ……と大きな音を立てて、横に開いていく。
開き終えると、このダンジョンの管理部屋が姿を現した。
「セキュリティガバガバだし、汚っ!」
ナギが思わずそう言ってしまうほどに、管理部屋は汚かった。
床にはお菓子のゴミや金ちゃんのものが大量に散らばっていて、床は見ることができない。さらに言えば、コアには埃を被った毛布がかけられていて、コアも心なしか埃を被っているように見える。
「まあ気にしなければいいだけなのぎょ。それより早くコアを取るぎょ!」
「う、うん……」
紬はどこを踏んで進めばいいのかもわからず、進むところに落ちているものをどけながら少しずつ歩いて……いこうとした。
どけてもどけても、一向に床が見える気配はない。
1分ほど同じところを紬は掘るようにして、物をどけ続けた。しかし、床は見えない。
「これ……どうやっていくの?」
「普通にこう行けばいいぎょ」
紬が困って金ちゃんに聞くと、金ちゃんは当たり前のようにものを踏んで歩いていく。歩くたびにガシャ、グシャ、クチャ、といった背筋がゾッとするような音が鳴る。
紬は歩いていくのが怖くなり、ナギの方を見た。
「えっ……?ナギは嫌だよ?絶対嫌だ」
「そうだよねぇ……」
紬が諦めるようにして、再びコアを見て足を一歩踏み出そうとした。
「いやいやいや……無理だよ……」
「早くするぎょ!」
「いやぁ……無理だよ……」
紬はこのゴミ屋敷を抜けた先にあるコアがすごく遠くにあるように思えてならなかった。
◇ ◇ ◇
次回予告!
ゴミ屋敷を攻略する必要が生まれた紬は、躊躇いながらも、とうとう足を踏み出す。果たして、遥か彼方にあるコアを手に入れることはできるのかっ!?
「できないわけないぎょ。あれゴミ屋敷じゃないぎょ」
えっ……?
じ、次回、「0045 イベントとゴミ屋敷」、お楽しみにー!
(これは作者の茶番、おふざけです。もしかしたら、これからもたまにやるかもしれません。)




