0041 イベントと水のダンジョン2
待望のイチャイチャ回です。
「なかなか見つからないでござるよー。主人の方はどうでござるか?」
「うーん……ぼちぼちかな……一応進めそうなところは見つけられたんだけどね……僕たちには行けなくて」
「それじゃあそっちに向かうでござる!しばし待っていてほしいでござる」
「わかった、待ってるね」
紬は通話を切り、他の場所を見にいっているもう一人の班のメンバーにメッセージを送った。
紬達はあれから、探索するために2つのグループに分けて探索を開始した。
一つは、マサムネと3人組のリーダー、剣士の、泳げる三人による水中探索班。
もう一つは、紬と魔法使いのナギによる泳げない地上探索班。
探索を開始して30分が経過し、状況報告を行なっていたのだ。
結果として、紬が見つけた地上から進める場所にあった湖に集まることになった。
このダンジョンは水の中で戦うことや、探索を行うことを求められているため、泳げない紬とナギにとっては地獄のダンジョンだった。
「紬さん、やっぱり私はくるべきじゃなかったんですよ……。私まだ何にもしてないですもん」
「そんなことないってぱ。だってナギは雷魔法を使えるんでしょ?」
「でも戦いが水の中だったら、みんな感電して死んじゃいますよ?やっぱり私くるべきじゃなかったのに……」
メッセージを受け取って帰ってきたナギは早速いじけていた。
彼女は泳げないため来たくなかったのだが、他のメンバー2人の説得によって連れてこられていた。
ナギはゲームの中でも珍しい、雷魔法の使い手で、連発はできないものの一つ一つの火力が高い。そのため、パーティの中では欠かせない存在なのである。
「雷撃も使えるんだよね?同じ名前でも結構違うよね……もうわからなくなるよ」
「マサムネさんも使えるんでしたっけ?」
「うん」
「剣のスキルと魔法は似てますけど、かなり効果とか発動条件が違うんですよね。うちのハルも炎撃使えるので、わかります」
「雷撃」という名前が同じスキルでも、魔法か、剣などの武器スキルなのかによって、大きく変化する。
魔法の雷撃は、大量の雷を対象に向けて放つ。放たれた雷は全自動追尾型で、一定時間が経過するまで対象を追いかけ続ける。超強力スキルなのだ。
「紬さんはどうやって戦うんですか?私たち結局戦ってるところ見てないので、わからないんですよねー」
「そういえば、そっか。僕は短剣で近接で戦ったり、魔法で応戦したり……色々かな」
「ジョブって何とってるんですか?やっぱりシーフとかですか?」
「いや、僕エンチャンターだよ」
紬の言葉を聞いたナギは眉をしかめて、目をぱちくりさせた。
「えっーと?えんちゃんたー、ってなんですか?そんなジョブありましたっけ?」
ナギはあまりこういったMMOゲームをした事がなく、そういった知識が乏しい。
そのため、大して見ることもなくジョブも選択してしまったため、エンチャンターという文字を見ることもなく、今日までやってきたのである。
「エンチャンターはいろんなバフとかでバフをかける職業だよ。このゲームないはずなんだけど、ジョブの選択画面のところに探したらあったんだよね……」
「へ、へぇー……。そうなんですねぇ……」
ナギは自分の髪を触って目を逸らした。
ナギはローブのフードをかぶっているためあまり見えないが、整った顔立ちをしている。身長は小さく、160cmに届かないぐらいだ。
紬は失礼だと分かりながら、小動物みたいだなと思い、ふふっと小さく笑った。
「な、なに?ナギの顔に何かついてる?」
ナギはあっ、といって口を押さえた。
そしてアワアワしながら、
「一人称戻っちゃった……気をつけてたのに……あっ!それに敬語じゃなくなっちゃってるし!」
あーっ……、とナギは一人で頭を抱えた。
紬は近所にいるビビりの犬みたいだな、と思ってまたふふっ、と笑った。
紬とナギは顔を見合わせて、二人揃って吹き出した。
「あははっ…………もう敬語じゃなくていいよっ……!はーっ……面白い……」
「そんなに笑わないでよっ……!はずかしくなるからっ」
二人はまた笑いを堪えきれなくなり、笑い始めた。
「あの二人いつの間にか仲良くなってるよ……」
「ねぇハル。あの二人の周りにハートが見えるのは私だけかな?」
「ううん。私にも見える。それはもうはっっきりとね」
「吾輩にも見えるでござるな」
いつからか探索から帰ってきた3人が、笑っている二人の様子をこっそり覗いでいた。3人は顔を見合わせ、だよねー、と頷いた。
「もう少し待っていようか」
「そうだね」
まさかここから30分間こうして見ていることになるとは、3人の誰も思ってはいなかった。




