0037 イベントと風のダンジョン 4
時は紬がボス部屋から出る少し前に遡り……。
「雷撃」
「ガルルルルル……」
マサムネが大量バフの雷撃をウィンドウルフに向けて放つ。
威嚇していたウィンドウルフに剣撃と雷が襲いかかる。いくら素早いウィンドウルフでも避けるのは困難と言える攻撃だった。
「なっ……!?何故!?」
確かにそれまでそこにいたはずのウィンドウルフは雷撃が当たるというタイミングで、霧のようにその場から姿を消した。
マサムネは大きく空振った。その隙をウィンドウルフは見逃さなかった。
どこからか颯爽と現れ、マサムネの胸を大きく爪で切り裂いた。
「うむ……これは中々良い戦いとなりそうでござるな……」
ドゴオオオオオオオォォォォォン!!!
2体の戦いが激化しそうになった時、紬の放った強化火球による爆音が鳴り響いた。
「主人も中々に暴れているでござるな……。吾輩も負けてはいられないでござる」
マサムネは剣を鞘にしまった。
戦いの放棄とも言えるその行動は、マサムネの覚悟を示す行動だった。
「長期戦に無理やり持ち込むでござるよ!」
「堅牢」
マサムネは中ボス戦で新しく取得したスキルを発動した。
堅牢。
このスキルは10分の間、攻撃を喰らうほど自分のVITが一時的に上がる、という効果を持つ。そのあまりにも強い効果にはもちろん裏があり、このスキルを使ってからの10分間は動くことができなくなるのだ。
一見使ったところで戦況が変わることはないようなスキルだ。
しかし、マサムネにはそのスキルを使うことによる勝ち筋はきちんと見えていた。
「ほらどんどん来るでござる。まさかビビっているでござるか?」
「ガルルルルル…………」
マサムネはウィンドウルフを挑発した。
ウィンドウルフは起こったように牙を剥き出しにしている。
「ワオォーン!」
ウィンドウルフが遠吠えしたかと思うと、マサムネの体に大きな衝撃が生まれた。マサムネが後ろを振り向くと、ウィンドウルフが爪でマサムネを攻撃しようとしていた。
「2度同じ攻撃は喰らわないでござるよっ……!」
ウィンドウルフの爪を盾でなんとか受け止めた。
そして反撃の意を込めて、盾でウィンドウルフの体勢を崩した。
「ちょっ……それは反則でござらぬか……!」
ウィンドウルフは間隔をおかずに、風魔法の「風刃」をマサムネに放った。
盾で防ごうにも速度の速い風刃を防ぐことは難しく、体で全ての弾幕を受け止めた。
「反撃しようにも、あと8分はできないでござるよ……?」
堅牢の効果のせいでマサムネは動くことができない。
反撃しようにも動けなければ、AGIの高い敵に攻撃を当てるのは不可能に等しかった。
マサムネはどうにかして攻撃を仕掛ける手段はないか、必死に頭を回転させた。
そうしている間にもウィンドウルフは容赦するはずもなく、怒涛の攻撃を仕掛けてきている。
「やるならこれしかないでござるか……。やってみる価値はあるでござるな!」
マサムネは何かを思いついたのか、盾を両手で持ち、目を瞑った。
「まだでござる……まだ……今!」
ウィンドウルフがマサムネに爪で攻撃を仕掛けようとした瞬間。
マサムネは盾を構えたまま、ウィンドウルフの爪を目掛けて突進した。
「シールドバッシュ!」
シールドバッシュを喰らったウィンドウルフはノックバックとスタンを喰らい、その場で止まった。
シールドバッシュのダメージ自体は小さいものの、ウィンドウルフにダメージを与えた。何より、一時的とはいえ動きを止められたことが大きかった。
「攻撃したいけど……できないでござる……!でも思った通りでござったな」
堅牢のせいでスタンして動きが止まっているウィンドウルフを攻撃しにいくことができない。せっかくのスタンが台無しだった。
しかし、マサムネはウィンドウルフの攻撃を10分間捌きつつ、攻撃を加える方法を見つけ出していた。
それは、目を瞑って《《音》》でウィンドウルフの位置を知ること。
ウィンドウルフはAGIが高く、マサムネの目では動きを追えない。それなら、絶対に発生する動いた時の音で位置を探ろう、と考えた訳である。
そこにシールドバッシュを織り交ぜることで安全にダメージも稼ぎつつ、スタンで時間稼ぎもできる。かなり合理的な戦略だった。
「シールドバッシュ!」
唯一この戦法が取れない風刃も、シールドバッシュの攻撃判定で半分以上は相殺できる。
ウィンドウルフの攻撃を全て捌き切ることができるようになれば、10分待つなど簡単なことだった。
「10分経ったでござるな……。ウィンドウルフよ、申し訳ないでござるが、一撃で葬らせていただくでござるよ」
「バーサーク」
このスキルを発動したマサムネは、満を持して鞘から剣を引き抜いた。
VITを全てSTRに変換するこのスキルは、一撃でも攻撃を喰らえば死んでしまう代わりに、大抵の敵は一撃で葬れるようになるというハイリスクハイリターンのスキルである。
これこそ、マサムネの最終兵器である。
「楽しかったでござるよ、ウィンドウルフ!」
マサムネに向かって攻撃しようとしていたウィンドウルフに、力任せに剣を振り抜く。
振り抜かれた剣はウィンドウルフの体を大きく切り裂いた。
「ガルッ……」
ウィンドウルフは、マサムネに後一歩で触れられるところでHPが尽きた。
「主人、勝ったでござるよー…………って、いないでござる!?」
マサムネは戦闘に集中していたため、紬がボス部屋から出て行ったことに気づいていなかった。
「どこに行ったのでござる!?探さなきゃでござるー!」
マサムネは紬を探すためにバタバタとボス部屋から出て行った。




