0036 イベントと風のダンジョン 3
「グォォォォォォ!!」
「おっ……と……びっくりしたぁ……」
2階層に来て早々、ゴブリンが襲いかかってきた。
ギリギリのところで紬が避け、ダメージを喰らうことはなかった。しかし、あと一歩前に出ていたらかなり大きなダメージを負っていたかもしれない。そう思うと、1階層とは違う2階層の恐ろしさに紬は気持ちを引き締めた。
「とりあえず倒すかっ……!」
紬は短剣をゴブリンの腕に刺した。
痛かったのか、ゴブリンは抵抗するように暴れ始めた。
「火球」
ゴブリンの頭目掛けて火球を放つ。
放たれた火球は、ゴブリンの頭を吹き飛ばした。
「ここからはマップ使おうか」
「そうでござるな。これ以上時間を使ってはいられないでござる」
できることなら、ダンジョンに入って1時間以内にコアを回収したかった。
紬は迅から預かったマップを開き、ボスとダンジョンマスターの待つボス部屋へとまっすぐ歩き出した。
紬もずっと勘違いしていたことだったが、このゲームは他のゲームとは違い、ボスとダンジョンマスターは別々に存在している。
ボスはシルトのような役目で、管理部屋、コアのある部屋に行かせないための門番の役目を担う。そしてダンジョンマスターはコアを取られないように、生き延びることが目標なのである。
ダンジョンマスターが死んでしまうと、コアを守っているバリアがなくなり、プレイヤーにクリアされた時点でダンジョンが崩壊してしまうのだ。
そのため、紬という特大の例外を除けば、このゲームの全てのダンジョンマスターはプレイヤーの前に姿を現すことはなく、隠れているのが普通なのである。
一応、プレイヤーの前に姿を現してやられてしまう、おっちょこちょいのマスターもいる。今のところ一体だけだが。
「着いたね……。なんかあっさりだった……」
「道中モンスターにあったわけでもないでござるしな……」
モンスターに会うこともなく、5分もかからずに紬たちはボス部屋の前へと到着した。ボス部屋は他の部屋と比べて豪華な扉が使われている。
「いつでもいけるでござるよ」
「よし、いくよ」
紬は胸を高鳴らせながら、扉を開けた。
「これは、やばいかもね……!」
ボス部屋の中は、部屋の中とは思えないほど広い草原が広がっている。
その草原の真ん中には、銀色の毛が輝いている、風を纏った狼が佇んでいる。この狼こそ、このダンジョンのボス、ウィンドウルフである。
ウィンドウルフの周りでは、手下であろうグレイトウルフが5体ほど、紬たちに威嚇している。
2対6。数的不利は明らかだった。
「主人。グレイトウルフは全て任せても良いでござろうか?吾輩はウィンドウルフと手合わせしたいでござる」
「うん、いいよ。バフはかけとくね」
「ありがとうでござる」
「攻撃力強化、速度強化」
バフがかかったマサムネは、一目散にボスを目掛けて駆けていく。
「じゃあ、僕はグレイトウルフの相手しようか」
紬は自分にもバフをかけ、火球を放つ準備を始める。
「火球 アレンジ クロスフレイム」
通常の火球にばつ印を描くように炎が纏われたそれは、紬が放たれる最高火力であり、最高範囲の攻撃だった。
「発射」
紬の声に合わせて、強化火球はグレイトウルフ目掛けて飛んでいく。
グレイトウルフたちは高いAGIで避けようとした。だが、発射から着弾までが速い強化火球の範囲から逃れるには、時間が足りなかった。
ドゴオオオオオォォォォォン!!!
強化火球は鼓膜を突き破るような豪快な音を立てて、着弾した。
そんな攻撃を喰らって生き残れるはずもなく、グレイトウルフたちは一撃で跡形もなく消えた。
「さてと、ボスはマサムネに任せて……僕はマスター探しに行こうかなっ」
紬は軽い足取りでボス部屋を後にした。
紬が次に目指すのは、ダンジョンのどこかに隠れているマスター討伐だった。
「さあ、隠れ鬼のスタートだ」
紬は無邪気に笑いながらそう言った。




